既存住宅インスペクション・ガイドライン(国土交通省)について
昨日、3月3日は、女の子がいる家では、雛人形を飾ったり、雛菓子を食べたりと、楽しく華やかな日だったのではないかと思います。我が家も娘の雛人形を1週間ほど前から出して、3月3日を迎えました。お雛様を食卓テーブルの上に持ってきて、桜餅を食べるという趣向は今年が初めてでしたが、新鮮味がありました。
日本には、人日(1月7日)、桃の節供、端午の節供、七夕、重陽(9月9日)の5節供、正月、お盆、月見、大晦日、など伝統的な年中行事があります。私は、設計をするときにお客様とお話しをする中で「豊かな生活」の情景を浮かべるようにしていますが、家族の食事、友人、お客様を迎えての食事、それぞれの日常の情景と合わせて年中行事などの特別な日の情景も伺ったりして「豊かな生活」のイメージを膨らませます。
私が普段から意識している言葉に室礼と書いて「しつらい」と読む言葉があります。お茶、和食、インテリア、などの世界で使われる言葉です。日本の年中行事と切っても切れないつながりがあります。
室礼三千主宰山本三千子さんは著書「室礼おりおり」で以下のように説明されています。
『「しつらい」という言葉は、日本で生まれた言葉で中国から伝わった外来語ではありません。平安時代の貴族は、寝殿造りの邸宅に住んでいましたので、「しつらい」も寝殿造りの舞台として行われ、源氏物語の中でもたびたび「しつらい」の言葉は用いられています。梅壺女御が里帰りされた時、源氏は梅壺女御が住む寝殿の「しつらい」、すなわち几帳(きちょう)やその他の調度(ちょうど)、畳(たたみ)や御簾(みす)などを美しく装って迎えたと記されています。この場合の「しつらい」は寝殿内の装備のことを表しています。
やがて、室町時代になり、家も寝殿造りから書院造りと移行し、室礼の中心は「床の間」になりました。寝殿造りの貴族社会で使われた「しつらい」の言葉も、武士社会においては書院造りの建物内での儀礼的な性格が強まり、「しつらい」は「室禮」という漢字が当てられ、現在の「室礼」に至っています。』
インテリアコーディネーターの勉強をされたことのある方はそのように勉強されたと思います。
年中行事の舞台づくりに欠かせない言葉が「しつらい」ということになります。
御簾、几帳、調度って何か形を見ないとわかりませんが、「調度いい」絵が日本襖振興会のホームページで紹介されていました。ご興味のある方はご覧ください。
日本襖振興会
現代の家では、一戸建ての家では客用和室として床の間が作られることが多く、マンションでは床の間付の和室は収納スペースを優先して少ないのではないかと思います。
現代の「しつらい」は床の間に限らず、玄関、居間、食堂などで家族やお客様の視点の集まるところに「しつらい」を表現してしても良いのではないかと考えて、そのような取り入れ方をされている方が多くなってきているように思います。
山本三千子さんは「室礼は心を季節に託して盛ること」と言われ、その心について「お正月のお節料理の一品一品も、秋の月見の行事に盛られる団子、野菜、くだものに共通の思いがあることがわかりました。いずれも天地の力によって、作物が結果したことに感謝し、その感謝の心を形にして神に供える、ということでした。」と言われています。
国登録有形文化財仁木屋主人小林玖仁男さんは著書「日本の室礼 仁木屋の作法」の中で、「繊細な季節感を暮らしに取り入れるのが室礼です。」「日本のほとんどの祭事は、五穀豊穣の願いと感謝が起源です。正月は注連縄(しめなわ)を張り巡らせて神様の居場所を作り、今年も豊作であれと願います。春祭りは五穀豊穣を神様にお願いするお祭りであり、秋祭りは実りの感謝の祭り、年末には1年の豊作を豊作を感謝してお供えを神棚に供えます。やがて、欲張りな人間たちは重陽の節供は不老長寿、上巳や端午の節供は、子孫繁栄の願いも加えました。」と言われています。
お部屋のインテリアを考えながらその心に触れていくことが、日本らしい豊かな文化を実感できるインテリアになっていくのではないかと思います。