窃盗中毒病 クレプトマニア
私は弁護士ですが、マイベストプロでは一応、「被害者問題のプロ」ということになっています。
実際のところは、広島クラスの地方都市では、専門化というのはごく一部の弁護士を除きあまり進んでおらず、比較的得意な分野と、まったく不得手でやらない分野があるが、後はだいたいの分野をやる、というのが一般的な弁護士像と思います。
私の場合も、紹介ページをご覧になるとお分かりのように、広島における他の多くの弁護士と同様、民事、商事、会社紛争、不法行為、債務整理、破産、離婚、家事、遺言、遺産相続、刑事等、幅広い分野を取り扱っています。
それがなぜ「被害者問題のプロ」ということになったかと言いますと、私が、公益社団法人広島被害者支援センター
http://www13.plala.or.jp/vach2-13/
の監事という職を、約6年間務めていること、医療過誤や交通事故の被害者側の事件を多く手がけていることによると思います。
特に医療過誤をやる弁護士は多くないので、私の特徴と言われることはよくあります。
しかし、自ら、「私は被害者問題のプロです」と銘打っているわけではありません。
被害者問題は、生やさしいものではありません。
そもそも、「被害者」の意義や範囲については、難しいものがあります。
どんな事件でも、相談者、依頼者の方のほとんどは、自ら「被害者」と認識しておられます。
犯罪被害、交通事故、DVやストーカーの被害者は、最もコアな被害者で、被害者であることに問題は生じにくいです。
しかし、そのほかにも、契約不履行の被害者、契約で騙された被害者、会社を乗っ取られた被害者、過払いの被害者、取引先に破産された被害者、不貞行為の被害者、不当な遺言を作られていた被害者、
等々、みなさん、何らかの被害者意識をお持ちです。
医療過誤・医療現場事件の被害者・遺族については、そもそも医療機関に過失があったか、被害・損害との因果関係があるかどうかが深刻な争点になることが多いので、まさに被害者であるかどうか、そもそも被害があったかどうかが争われることが多いです。
極論すれば、刑事弁護を除く弁護士の仕事のほとんどは、被害回復の手助けとも言えます。
刑事弁護の活動においてでも、加害者の更生環境を整える上で、あるいはそもそも事件の回復的司法活動として、被害者に被害弁償をする手助けをしたり、精神的にも慰謝する努力をしたりすることも多くあります。
しかし、私は、すでに事案が刑事事件となって、被害者であることが捜査や公判によって公的・客観的にある程度確定している場合は別としても、あまりに被害者意識を強く持ちすぎることは、控えた方がいいと皆さんにアドバイスしています。
そうすると、「えっ? だって私(弊社)は、どうみても被害者じゃないですか。」と、不審な顔をされることもよくあります。
「この弁護士は、私(弊社)の気持ち(立場)を分かってくれない」と思われるかもしれません。
もちろん、ご本人が認識し、ご主張される事実経過や感情を前提にすれば、明らかに被害者と言えるかもしれません。
また、弁護士は、相談者や依頼者の言い分を前提に物事を考えるべき立場にあります。
しかし、そもそも前提となる事実関係や当事者の主観が争われるから、紛争となり、弁護士に依頼する事態となっていることが多いわけです。
紛争に接し、自らの主張をなし、立証していこうという時点で、それが認められたことを前提とする被害意識を前面に出すことは、時と場合によっては有効でも、多くの場合、マイナスともなり得ます。
特に、交渉段階では、確定できる事実は契約書等で少なく、多くの部分は、当事者の言い分に依拠せざるを得ません。
つまり、双方の言い分が食い違い、よって立つ立場が大きく異なります。
そのような場合に、過剰な被害者意識を振り回すことは、紛争の解決にとって、マイナスとなるリスクが大きいと言えます。
これは、「被害者でも、我慢しなさい」という意味ではありません。
状況によっては、何が「被害」で、誰が「被害者」で、そのような被害や被害者が生じているかどうかが問題となっている訳ですから、冷静に、クレバーに立ち振る舞うことも必要ということです。
「紛争をどう有利に解決するか」という戦略・戦術的な観点と、「被害事件・被害体験からいかに回復していくか」という精神的・経済的観点を、ある程度切り離して考えることが必要な場合もあります。
もし仮に、弁護士に依頼するような事態になった場合に、「弁護士に自分の気持ちを分かってほしい」という願望をもって共感を求めて相談することはいいと思いますが、それをそのまま弁護士が紛争解決の手段として前面に出すことまでを強く求めることには、冷静であってほしいです。
先日、中国新聞7階会議場で、マイベストプロ・交流会が開催されましたが、私は5年ほど前、同じ場所で、中国新聞主催のカウンセリング・スクールに通っていました。
忙しくなり、後半の半年間はあまり出席できませんでしたが。
先日、同じ場所に立ってみて、弁護士経験が今の半分の当時の自分の考え方や悩みなどを思い起こし、ふたたび心理学、臨床心理学を勉強して、というより総合的に人間というものをより学んでいき、弁護士活動に活かしたいと思いました。