『創業事業計画によくある10の間違え!』
■カニバリゼーション(以下カニバリと呼びます)は、新しい
製品やサービスが自社の既存の製品やサービスの売上を減少さ
せる現象を指します。これは、新製品が既存製品の市場シェア
や顧客ベースを「食いつぶす」形で起こることが多いです。
「共食い」との理解が分かり易いでしょう。
■カニバリは悪なのか?
一社独占でビジネスを行ってはいないので、他社が必ず競合す
る製品やサービスをぶつけてきます。他社に取られるなら自社
同士で競争させようとする、意図的なカニバリ戦略が通常行わ
れています。
以下、◆1.ビジネスモデルとしてのカニバリ戦略と◆2.製品
やサービスに関するカニバリ戦略を紹介します。
◆1.ビジネスモデルのカニバリは、新しいビジネスモデルが企
業の既存のビジネスモデルの売上や利益を圧迫する現象を指し
ます。以下は、このカニバリに関する著名な事例をいくつか挙
げます。
●Apple(iPodとiPhone)
AppleはiPodで音楽プレーヤー市場をリードしていましたが、
2007年にiPhoneを導入したことで、iPodの売上は自然と減少
しました。しかし、この動きはAppleにとって賢明であり、ス
マートフォン市場でのリーダーシップを獲得し、結果的には総
収益の向上に寄与しました。
●Netflix(DVD郵送サービスからストリーミングへ)
NetflixはもともとDVDの郵送レンタルサービスとしてスタート
しましたが、時代の流れとともにストリーミングサービスへシ
フトしました。この変更により、DVD郵送サービスの売上は減
少しましたが、ストリーミングサービスの成功により、企業全
体の成長と価値の向上が実現されました。
●Kodak(フィルムからデジタルカメラへ)
Kodakはかつてフィルムカメラの時代において巨大な市場シェ
アを持っていました。Kodak自体がデジタルカメラの技術を初
めて開発したものの、フィルムビジネスへの影響を恐れてデジ
タル技術の導入を躊躇した結果、他の競合企業に先を越される
形となりました。この事例は、カニバリを過度に恐れることの
リスクを示しています。
●Amazon(書籍販売からKindleへ)
Amazonは、もともとはオンラインの書籍販売からスタートし
ましたが、Kindleの電子書籍リーダーを導入することで、紙の
書籍の売上が影響を受ける可能性がありました。しかし、電子
書籍市場の成長とKindleの成功により、Amazon全体の収益は
向上しました。
これらの事例は、カニバリが必ずしもネガティブな結果をもた
らすわけではないこと、そして新しいビジネスモデルや技術の
導入は、長期的な成長や競争力の維持に不可欠であることを示
しています。
◆2.製品やサービスのカニバリは、新製品や新サービスの導入
により、企業の既存の製品やサービスの売上や利益が圧迫され
る現象を指します。以下に、このカニバリに関する事例をいく
つか挙げます。
● CanonとNikon(デジタル一眼レフとミラーレスカメラ)
デジタル一眼レフカメラの市場をリードしていたCanonやNikon
は、ミラーレスカメラの市場の拡大に対して遅れをとりました。
ミラーレスカメラの導入が一眼レフの売上を圧迫するとの懸念
があったためです。しかし、他のメーカーに市場を奪われるリ
スクも生じました。
●Microsoft(WindowsとSurface)
MicrosoftがSurfaceタブレットをリリースした際、PCメーカー
からの抗議がありました。Surfaceの成功が、Windowsを搭載
する他のPCメーカーの製品の売上を圧迫する可能性があったた
めです。
●Coca-Cola(Coke ZeroとDiet Coke)
Coca-ColaがCoke Zeroを市場に導入した際、Diet Cokeの消
費者がCoke Zeroに移行するのではないかとの懸念がありまし
た。しかし、Coke Zeroは異なるターゲット層に訴求する製品
として位置づけられ、両製品が共存する形となりました。
これらの事例を通じて、新製品やサービスの導入によるカニバ
リのリスクは避けられないものの、市場のニーズや競争状況を
正確に理解し、適切な戦略を採用することで、カニバリをポジ
ティブな成果に変えることが可能であることが示されています。
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