『年商対比で、今より10%多くの運転資金を持ち続けることをご提案します。』
…前回号のつづきです。
前回ご紹介したBCGマトリックスよりはその分析が複雑(分類
が4つから9つに増えます)になりますが、その分GEマッキン
ゼーマトリックスは精度が向上するといわれています。
以下、解説いたします。
GEマッキンゼーマトリックスは、企業の事業ポートフォリオを
評価し、経営資源を最適に配分するためのフレームワークです。
中小企業でもこのマトリックスは有効であり、事業の現状や将
来性を整理するための手助けとなります。以下は、このマトリ
ックスを中心にした中小企業の経営診断のための指針を示しま
す。
◆1. 事業ポートフォリオの確認
まずは、企業が保有するすべての事業や製品ラインを明確にリ
ストアップします。各事業の競争力や所属する市場の魅力を正
確に評価するための前準備となります。
◆2. 事業の競争力の評価
・シェア…各事業が保有する市場シェアは、その競争力の指標
として有効です。
・ブランド認知…中小企業特有のブランドやサービスの特徴、
顧客からの評価なども競争力の指標として取り入れます。
・収益性…各事業の収益率や利益率をもとに、競争力を数値化
します。
◆3. 市場の魅力の評価
・市場成長率…事業が所属する市場の成長率は、その市場の魅
力を示す基本的な指標となります。
・顧客のバーゲニングパワー…顧客が持つ交渉力や価格感受性
は、市場の魅力を評価する要因となります。
・競合の激しさ…競争相手の数や競合企業の戦略によって、市
場の魅力は変動します。
◆4. GEマッキンゼーマトリックス上へのマッピング
事業の競争力と市場の魅力を基に、各事業をマトリックス上に
配置します。マトリックスは以下の3×3のグリッドから成り立
っています。
・強い競争力×高い市場魅力…これらの事業は、成長の機会が
あり、積極的に投資を行うべきエリアです。
・中程度の競争力×中程度の市場魅力…これらの事業は、選択
的な投資や事業の再構築を検討するエリアとなります。
・低い競争力×低い市場魅力…これらの事業は、撤退や資源の
再配分を考えるべきエリアです。
◆5. 戦略の策定
マトリックスの位置に基づき、各事業に対する中長期的な戦略
を策定します。これには、投資の増加・減少、新市場の開拓、
新製品の開発など、具体的な行動プランを含むことが必要です。
◆6. 実行とモニタリング
策定した戦略を実行に移す際、具体的なKPIs(Key Performance
Indicators)を設定し、その達成度を定期的にモニタリングし
ます。このフィードバックループを通じて、戦略の効果を評価
し、必要に応じて微調整を行います。
◆7. 定期的な見直し
市場環境や技術の進化、消費者のニーズなどは常に変化してい
ます。そのため、定期的にGEマッキンゼーマトリックスを更新
し、事業の位置付けや戦略を見直すことが必要です。
◆結論
中小企業においても、GEマッキンゼーマトリックスは戦略的な
意思決定のための有効なフレームワークとして活用できます。
市場の変化や競争の激化が進む中で、経営資源を最適に配分す
るための明確なガイダンスを提供してくれます。マトリックス
を効果的に使用することで、中小企業も競争優位性の維持や成
長機会の最大化を目指すことができます。
BCGマトリックスやGEマッキンゼーマトリックスの、詳細で正
確な分析を行うためには相応の労力が必要になりますが、考え
方は、決して難解なものではありません。この考え方は、起業
や新規事業、事業再構築を行う時などには特に重要です。考え
方だけでも理解いただくことをお勧めします。
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