『金融機関対応・資金調達Q&A』(その7)
銀行などの金融機関から返済を前提に資金を調達する借入れ
(デッドファイナンスと呼びます。)に対して、投資として資
金を受け入れるエクイティファイナンスについて言及いたしま
す。
※ここでは、縁故増資ではなく、ベンチャーキャピタルなど、
オフィシャルな投資先からのエクイティファイナンスについて
解説します。
■実績が必要です。
「こんな面白いアイデアがあって、このような事業計画で進め
ていきたい。資金があれば、短期間でIPO(新規株式公開)
も狙える。資金調達を希望します。」
この様なケースで資金を調達できる(エクイティファイナンス
を成功させる)ことは極めて稀です。実績がないからです。リ
スクマネーと呼ばれるこの資金とて、実績のないベンチャー企
業(?)は対象外です。
◎例えば、ザッカーバーグ氏が率いるフェイスブックは、自ら
が開発したソーシャルネットワークサービスを、在籍するハー
バード大学内で拡散し、利用者数の増加を実現していました。
利用者数の増加…この実績を持って、投資家からの資金調達を
行っています。
フェイスブックとて、「今からこの様なソーシャルネットワー
クを構築します。近い将来…になります。」とプレゼンしても、
投資の対象にはなりにくかったはずです。
◎例えば、ジョブス氏が率いるアップル社は、自宅の倉庫で小
型コンピューターのプロト版の開発を進めていました。量産し
拡販する資金の目途は立っていないけど、とにかく開発して手
作りで制作して、一台でも販売する…この実績を持って、投資
家から資金調達を行っています。
事業計画書の内容やプレゼン能力を磨き込んでいくら投資家回
りを行っても、実績のないベンチャー企業(?)に資金は入り
ません。まずは、事業としての実績を作ることが必要です。
■攻めの資金でなければなりません。
この資金は、その資金使途が重要です。調達した資金が、高収
益企業になるための成長に使われなければなりません。
1.エクイティファイナンスの対象は、近未来の高収益企業で
す。営業利益率は30%以上か、又は、数億円以上、かつ、
成長を続けることが必要です。
2.エクイティファイナンスの対象は、近未来の高成長企業で
す。売上高の伸び率は30%以上、この程度の成長を長期
間継続できることが必要です。
■出口(イグジット)が必要です。
エクイティファイナンスは、その資金を回収しなければなりま
せん。5年から最長で10年以内に、投資して保有した株式を
売却して資金化することが要件です。この期間内に、保有する
株式の価値が向上し、かつ、売却先が存在するためには、株式
の公開を行うか、誰かが買い取るか、それに値する会社になっ
ていなければなりません。
■エクイティファイナンスの投資家は、株主として経営に参画
します。
投資家は、持ち株比率に応じた株主としての権利を有します。
これは、必ずしもネガティブなことではありません。株主とし
て支援してくれるかも…との意味も含みます。
一方、株主への定期的な進捗の報告や、株主総会のオフィシャ
ルな開催、個人経営的な発想では済まされない公式な対応も必
要になります。これも、必ずしもネガティブなことではありま
せん。経営体制が構築されていきます。
■現実的には企業価値2億円程度までは自力で構築するしかあ
りません。
※企業価値とは、資本金ではありません。純資産+将来利益で
計算される現時点における企業の価値を示します。ここでは、
株数×株価=時価総額と同じ意味です。将来利益は投資家の見
立てで変わります。
企業価値2億円とは、2,000万円の投資を受けても、投資
家の持ち株比率が9.1%(2,000万円/2億2,000
万円)に収まるラインです。ただ、現実的には、この企業価値
に対して投資するベンチャーキャピタルはレアです。
企業価値5億円以上、このあたりからベンチャーキャピタルの
投資対象になります。
企業価値(会社の値段)の見立ては、投資家によって当然異な
ります。また、企業価値は将来価値から逆算して決めることが
多いので、成長し利益を出せる蓋然性が高いほど、企業価値も
高くなります。
成長意欲の高い社長様は、エクイティファイナンスについても
ご検討ください。