「遊び」について
保育カウンセリングを10年続けているのですが、子どもたちとの関わりでこころが震える瞬間があります。どういうときに心が震えるのだろう・・・と、これまでの経験を振り返って見ると、どうやらその子の「初めての瞬間」に立ち会ったときなのだと、気づきました。そしてその記憶は、いつまでも鮮やかに残っているのです。
最近の「こころが震えた瞬間」について、書いてみます。
保育所支援では、ときどき発達検査の依頼を受けて、お子さんと2人で一緒に取り組むことがあります。子どもたちは、初めて出会うさまざまなクイズ(課題)に、その子らしい取り組みと間違いとを繰り返しながら、最後まで本当に良く付き合ってくれます。
あるお子さんは、ある記憶に関する課題で最初は自信満々で答えていたのですが、少し難しい段階にさしかかり、私の質問にふと立ち止まり、「あれ?忘れてる」とつぶやきました。わかっていたつもりが、忘れている自分に初めて気づいてハッとしているようでした。その後、同様のクイズで自信がなくなると「あ、間違えた」と、慌てて言い直してさらに迷路に入り、苦戦をしていました。検査項目が進んでいき「さっき見た〇〇(お魚)、どこにいるか教えて」という質問に、自信なさそうに答えていたのですが、ある瞬間にふと「あれ?慣れてきた」と、ハッキリと正答を出しました。そのとき、スッと頭がクリアになったような様子でした。彼のこの一生懸命の取り組みに対して、こちらも「おっ!」と驚いたり、「ほ~っ」と内心感心したりしながら、一緒に最後まで辿り着きます。クラスのお友達との活動から離れて、1時間以上も付き合ってくれたことに「ありがとうね」と伝え、彼をみんなのいる教室に送っていきます。先生の「おかえり~」という声に、何かホッとしたような笑顔と同時に、「ボク、やってきたよ」という何かやり遂げたような感覚もあるのでしょう。検査で関わったお子さんが、「前一緒にクイズやったよね!」とずっと覚えていてくれるのも、嬉しいことです。