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第1回 ヒートショック対策 全3回

深澤一喜

深澤一喜

テーマ:大工の決意

第1回 ヒートショック対策


ヒートショックで危ないのは「寒い家」ではありません|0円でできる対策から


深健工舎の一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜です。群馬県前橋市を中心に、伊勢崎市、玉村町、高崎市、北群馬郡で、自然素材を使った高気密・高断熱・高耐震の家を、新築・リノベーション・リフォーム工事で手掛けています。設計事務所を併設した、大工工務店です。

今回から3回に分けて、ヒートショック対策の話を書きます。第1回は「危険の正体」と、お金をかけずに今夜からできることです。

9月に浴室のご相談が来るのは、お客さまが賢いから


9月の終わりごろ、「お風呂、そろそろ何とかしたいんです」というご相談が増えます。まだ半袖で過ごせる時期です。正直に言えば、この時期に動かれる方は賢いと思っています。

理由は単純です。11月に寒くなってからご相談をいただくと、現場調査、製品の手配、工事日の確保で、どうしても真冬に間に合わないことがあります。内窓のような人気の建材は、寒くなるほど納期が延びます。「寒いから何とかしたい」と思った時期は、すでに一番混んでいる時期なのです。

寒さを感じる前に決める。それだけで、選べる選択肢の幅がまったく違います。

危ないのは「低い温度」ではなく「急変」



ヒートショックというと「寒い家が危ない」と思われがちですが、正確にはすこし違います。危ないのは、暖かい居間から寒い脱衣所へ、そして熱い湯船へ、という温度の急変です。血圧が短時間で大きく上下することが、体に負担をかけます。

滋賀県も、対策の要点として「温度の急激な変化を避けるため、入浴前に脱衣所や浴室を暖房器具で暖めることが効果的」と案内しています。同じページに、暖房をしていない脱衣室や浴室では室温が10度以下になることもめずらしくなく、寒い脱衣室で服を脱ぐと身体表面全体の温度が急激に10度程度下がる、とあります。

入浴そのものについても目安が示されています。お湯の温度は41度以下、浸かる時間は10分を目安に。10分の入浴で体温は38度に達し、熱い湯ほど上がり方が早い。浴槽から立ち上がるときにめまいや立ちくらみの経験がある方は、とくに注意してください――これらはすべて、滋賀県の同ページに書かれている数値と注意です。私が独自に計算したものではありません。

同ページでは、冬の入浴中の事故が「交通事故死の約3倍」と紹介されています。つまりこれは、設備の話である前に、生活の順番の話なのです。

制度の話として、押さえておきたいこと


住宅の断熱には、既存住宅への義務がありません
2025年4月から新築には省エネ基準(断熱等性能等級4・一次エネルギー消費量等級4以上)への適合が義務づけられましたが、今お住まいの家にかかっているのは、建てられた当時の基準です。

つまり、冬に脱衣所が10度を下回るのは、法令違反ではなく、ごくふつうに存在する状態です。直すかどうかは、住まい手ご自身が判断するしかありません。

そしてこのコラムは医療の助言ではありません。持病のある方、血圧の薬を飲んでいる方は、必ずかかりつけの先生にご相談ください。私が書けるのは、建物側からできることだけです。

お金のかからない順番から


リフォームを手掛ける立場で矛盾するようですが、いちばん最初にやっていただきたいのは、0円でできることです。

入浴の20〜30分前に、脱衣所の暖房を入れる。小さなセラミックヒーターで足ります。

滋賀県も消費者庁も、対策の最初にこれを挙げています。工事は要りません。

湯を張るとき、高い位置からシャワーで給湯する。蒸気で浴室全体が暖まります。

自動給湯なら、最後の5分だけシャワー給湯に切り替えるだけでも違います。

滋賀県の案内にある方法です。

湯温は41度以下、10分まで。熱い湯に長くつかるほど、体温の上がり方は早くなります。

浴槽から出るときは、手すりや浴槽のへりを使ってゆっくり立ち上がる。

立ちくらみの経験がある方は、とくにここです。

食事直後・飲酒後・睡眠薬の服用後の入浴を避け、家族に一声かけてから入る。

設備ではなく、習慣の話です。ご高齢の方の一人での入浴は、声かけと見守りが効きます。



ここまで全部、費用はほとんどかかりません。そして工事をしても、この習慣は要ります。内窓を入れても、入浴前の暖房は必要です。


大工としての決意のようなもの


「去年の冬、お風呂で気を失いそうになった」と、11月の終わりに来られたお宅がありました。話をうかがって、その冬は工事ではなく、入浴前の暖房と、お湯はりの仕方だけをお伝えしました。工事は翌年の秋にやりました。

設備を売るより先に、その冬をどう安全に越すかです。現地を見て、「まだ工事は要りませんね」とお伝えすることもあります。設備を売る前に、お金のかからない順番からご提案する。これは大工としての決意のようなものです。


次回は、それでも寒さが残る場合の話をします。対策は浴室だけでは足りません。
窓・浴室・脱衣所の3点セットで考える理由と、対策の段階の整理です。

浴室や脱衣所の寒さが気になる方は、暖かいうちに一度ご相談ください。図面がなくても構いません。どこが寒いか、いつ寒いか、誰が使うか。それだけで話が始まります。

一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜

深健工舎/大工工務店2代目・一級建築士
群馬県前橋市を中心に、伊勢崎市・玉村町・高崎市・北群馬郡で対応しています。
根拠のある提案と、誠実な対応をお約束します。

 参考資料

・滋賀県|ヒートショック対策について
 https://www.pref.shiga.lg.jp/eg00/4000.html
・消費者庁|冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!
 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_013
・政府広報オンライン|交通事故死の約3倍?! 冬の入浴中の事故に要注意!
 https://www.gov-online.go.jp/article/202111/entry-9952.html
・国土交通省|省エネ基準引き上げへ。脱炭素化も。
 https://www.mlit.go.jp/shoene-jutaku/

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深澤一喜(建設業)

深健工舎

「断熱性能」「気密性能」「耐震等級」に独自の基準を設け、省エネや耐震を考えた家を設計。できるだけ自然素材を用い、化学物質過敏症などに悩む方に寄り添った家づくりを提案しています。

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