「毒親と呼ばざるを得ない親」と「毒親とは言い切れない親」の違い

高澤信也

高澤信也

テーマ:子育て


ここのところ元関脇の嘉風(現 中村親方)の
奥さんがわが子にしていた虐待が繰り返し
報道されていますね。


その現場をお子さんが撮影した動画を
ネット上でご覧になった方もいらっしゃる
のではないでしょうか。


生々しい音声と映像に
ひどく胸が痛みました。


お子さんへの影響も心配です。


ところでその映像に対する
コメントの多くは

「ひどい」
「あり得ない」
そして
「毒親!!!」


私は長らくアダルトチルドレンの
支援をしてきていることもあって
虐待を容認する気は一切ありません。


だからこそ、報道を見た第三者が
虐待で傷ついた子どもの身を案じ、
その親を非難したくなる気持ちも
十分に理解できます。


ただその一方で、
子育て支援を続けてきたことで
強く感じる思いもあります。


行為・行動だけを見れば
虐待する親は全て毒親なのでしょう。


しかしその背景に目を向けたとき、
毒親とみなされる人のなかに

●「毒親と呼ばざるを得ない親」

●「毒親とは言い切れない親」

という2つのパターンが存在することに
気づいたのです。


「自分さえ良ければ」な親

たとえばこういった方たちのことを
どう思われるでしょうか。


・自分は満たされて当然
・それを妨げるものは許さない
・他者は自分を満たすための道具
・「私は何も悪くない」に執着
・相手が傷つこうが苦しもうが平気
・・・


このときの相手が「わが子」なら、
間違いなく虐待が起こるでしょう。


こんな状態であればその方の中には
「過剰な自己愛」
があるのではないかと推察できます。


過剰な自己愛とは簡単に言えば
・王様気質
・女王様気質
です。


周りは王様・女王様を満足させるための
下僕みたいなものです。


これでは
*わが子に愛を与える
ことはとても難しいでしょう。


「王様」「女王様」に至る2つの背景

「王様」「女王様」的な方は
家庭に限らず職場などでも
散見されるかもしれません。


そうなると周りは大変です。

「あいつ何様?」
と言いたくもなるでしょう。


では何がどうなると
過剰な自己愛へと至るのでしょう。


ここに至る背景も2つあると考えます。


一つ目は純粋に
「王子様」「お姫様」
のごとく超過保護の甘やかしで
育てられたこと。


生まれてからずっと
「満たされて当然」
の環境で生きていれば、
こうなることはある意味
自然の道理です。


言わば
真の“俺様“気質
みたいなものです。


このタイプのまま親になり、
わが子を「自分を満たす下僕」のように扱えば、
虐待は容易に起こってしまいます。


その状態で虐待をしているなら、
それは「毒親」と呼ばざるを得ないでしょう。


「自分はダメ」が引き寄せる自己愛

しかし、これとは異なるルートで
自己愛型に至ることがあります。


先の環境とは正反対に
生まれてからずっと
「お前はダメ」
「価値がない」
「役立たず」
などと批判され続けてきた人。


こんな環境で育てば
自己肯定感は粉々です。


自分にマルなんて
つけられるはずがありません。


しかしそのままではあまりに苦しく
とうてい生きていけません。


ではどうするか。


ある人は
「自分はダメ」
を鵜呑みにして自信喪失状態で
生きていくことでしょう。


またある人は
「自分はダメ」
を感じずに済むように、、、

・欠点を隠す
・できないことはしない
・自分より「上」と感じる人を避ける

といった生き方を選ぶでしょう。


しかしそのどちらも
「王様」「女王様」
になることはありません。


そうなるのがこの三番目の対処です。

「俺はダメなんかじゃない!」
「私は本当はスゴイんだ!」
のようにして
「自分はダメ」という思いと闘っていく、、、

という戦略です。


この戦略で生きてきた人は
根底に「自分はダメ」があるため、
些細な注意や批判でも傷つきます。


そしてその痛みを怒りにすり替え、
烈火のごとく怒って反撃に転じたり、
あるいは誰からも批判されないように
身を削ってまで
「スゴイ自分!」
になるための努力を続けたり。


こういった生き方でも
「王様」「女王様」
の傾向は身に付いてしまうのです。


この根っこは自己否定タイプなら、
おそらくわが子に
「親の私を絶対に傷つけるな!」
という至上命題を押し付けることでしょう。


こちらも虐待に至る可能性は否めませんが、
そこに至る背景は全く異なります。


前者の純粋タイプは
そもそも支援の場に訪れません。


一方後者の根っこは自己否定タイプは、
「自分はダメ」を隠すことに必死です。


しかし子どもは思い通りになりません。


それを見てしまうとどうしても
「子育てに失敗」=「ダメな親」
という思いに駆られてしまいます。


それを打ち消そうとすればするほど
子どもへのあたりは強くなります。


それが前面に出たとき、
それは紛れもない虐待になるでしょう。


したがって、悲しいですが
これも「毒親」と呼ばざるを
得ないかもしれません。


しかしこの後者タイプは、
自己肯定感の低さに苦しんで
相談に訪れる可能性は十分にあります。


支援を通じて「自分はダメ」が改善されれば、
お子さんへの関わりも大きく改善する
可能性は決して低くありません。


そこに希望があります。


毒親とは言い切れない親

ここでは第三のパターンのお話です。


わが子を
大声で怒鳴ることもあれば、
暴力を振るうこともある。


大切なケアを怠るときもある。


この行為・行動だけを切り取れば、
冒頭でお伝えした親方の奥さんと
全く同じ。


明らかな虐待です。


しかしその背景に
こういったものがあったらどうでしょうか。


*パートナーが子育てに協力しない
*実の親と不仲で頼れない
*経済面で支援の利用が困難
*身近にサポート資源がない
*ワンオペで一息つく余裕すらない


追い詰められ、行き詰まり、
アップアップ状態になることが
容易に想像できないでしょうか。


苦難はこれで終わりません。


*子育ては母親の仕事
*24時間子どもに愛を注げるのが「普通」の母親
*子どもに嫌な気持ちを持つのは「おかしい」

したがって子どもに問題あれば
*全て母親の責任


こんなアホみたいな社会的な思い込みが
明に暗にいまだに存在するのです。


こんな状態で余裕を持てる
人間なんて存在するでしょうか?


私ならとうの昔にパンクしています。


「母親」とはただの役割にすぎず、
実態は複雑な感情を持つ“一人の人間“なのです。


にもかかわらず、
役割(レッテル)を本質と誤認し、
ステレオタイプの戯言、もとい刃が
「部外者」たちからまで向けられるのです。


そしてその「部外者」の刃によって
ますます追い詰められていくのです。


そんなとき、
わが子が大泣きしたら?
しつこくわがまま言ってきたら?
うるさくまとわりついてきたら?


「言ってはいけない!」
「してはいけない!」
と十分頭ではわかっていても、
耐性の領域を超えてしまい、
気持ちをどうにもできず怒鳴ったり、叩いたり、、、

なんてことが起こっても不思議では
ないのです。


無関係の第三者は他人事の立ち位置に
いるわけですから、物事を理性的に
判断することが可能です。


しかし子育ての現場で追い詰められている
親たちは理性で困っているのではなく、
“感情“で苦しんでいるのです。


落ち着くことさえできれば
理性的な判断はできるものです。


しかしそれが困難な状況に置かれている
からこそ苦しんでいるということに
第三者は思いをはせることができません。


そこを見落とし、蚊帳の外から
正論を語ることに何の意味があるのか。

それが私には甚だ疑問なのです。


第三者のあなたへ

虐待する親に向けて

「ひどい」
「親失格」
「毒親」

などとレッテルを貼ることは簡単です。


だけど
・助けもなく
・追い詰められ
・余裕を失っている
親を非難しても誰も救われません。


何より優先されるべきは
*子どもの命と心が守られること
ですよね。


であれば、親を非難するのではなく、
「どうすればそんな親御さんが余裕を持てるか?」

そして
「そのために自分にできることは何か?」

と考えてほしいのです。


その上で
*今の自分にできる小さな一歩
へ踏み出してほしいのです。


たとえばこんなことでも十分です。


「虐待は嫌い」
「それをする親はもっと嫌い」



「だけど、追い詰めれられて、
嫌なのにそうなってしまう親も
いるのかもしれないな」

という目で見ていただくこと。


周りにこんな人が一人いるだけで
助かる親御さんはたくさんいます。


非難よりも理解を。


それが結果的に
*子どもの命と心
を守ることにつながっていきます。


毒親だとか
アダルトチルドレンだとか
そんな言葉がいらなくなる未来を心から望んでいます。

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高澤信也
専門家

高澤信也(心理カウンセラー)

カウンセリングオフィス トリフォリ

「私が子どもをダメにしてしまう?」と心配なママ・パパへ 〜 “自分らしく“生きる子に育つ!子育て感情セラピーで親育ち&子育てをサポートしています。

高澤信也プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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