不動産鑑定評価の基準と手順、鑑定評価によって求める価格の種類(不動産の基礎知識6)
不動産の特性
不動産は、預貯金や有価証券とならぶ重要な資産です。
不動産には、預貯金などの他の資産とは異なった、以下のような独自の特性があります。
⑴強い個別性
・不動産には、まったく同じものは存在しません。
よく似ていたり、代替が可能な不動産はありますが、完全に同じものはありません。
・また、時間の経過によって、不動産自体が劣化したり、周辺環境も変化していきます。
⑵高い公共性
・日本では土地の私有制度が認められている一方で、道路・公園などに代表されるように土地には国民共通の資産としての側面もあります。
・したがって、土地の取引や利用は無制限には認められず、公共の福祉の観点から様々に規制されています。
・具体的には、国土利用計画法、都市計画法、建築基準法などによって、不動産の適正な利用が図られています。
⑶複雑な権利関係
・不動産には、所有権のほか借地権や借家権、賃借権、抵当権など複数の権利関係が存在することがあります。
・不動産の取引にあったては、これらの権利関係を把握する必要があり、権利関係の公示手段として登記制度が設けられています。
⑷価格がわかりにくい
・不動産は個別性が強いために、その適正な価格を把握することが困難です。
・また、公的な評価額も、公示価格、基準値標準価格、相続税路線価、固定資産評価額などがあります。
このほか実勢の取引価格や不動産鑑定士の鑑定評価額もあり、「一物四価」、「一物五価」と言われたりします。
・このように、一つの不動産に対して複数の価格が存在することも、不動産価格をわかりにくくしている一因です。
不動産の投資対象としての特性
⑴収益性
・不動産の収益は、賃料収入(インカム・ゲイン)と値上がり益(キャピタル・ゲイン)に分けることができます。
⑵安全性
・不動産は実物資産であり、それ自体に利用価値があり、登記によって公示制度が整備されていますので、比較的安全性の高い資産とされています。
⑶流動性
・不動産は、急にお金が必要になったからといって、すぐには換金できません。
売却する前提として、現在の所有者への名義を変更しなければならず、測量や境界確定が必要となる場合もあります。
また、不動産の売却自体にも時間がかかりますので、不動産は流動性に乏しい財産といえます。
運用上の特性
⑴保有コスト
・不動産には、固定資産税や都市計画税などの保有コストがかかります。
⑵長期事業
・恒久的な建物を建てることになる不動産事業は、多額の投資と長期の回収期間を要することになります。
したがって、将来にわたる長期の見通しと計画が必要となります。
⑶転用コスト
・不動産はいったん運用をはじめると、その転用コストは相当な額となるため、運用方針の決定にあたっては、慎重な判断が必要となります。