検眼するため、5m先の視標を使う理由
先日、福井県鯖江市にて開催された電脳メガネサミット2025に参加しましたが、
VRゴーグルやARグラスなどのスマートグラスに対し、
眼鏡作製技能士には否定的な方がおられると思います。
その理由について考えてみます。
個人的な見解、かつ実際には個々人で考えが違うと思うので、
見解の一例として。
眼鏡作製技能士にとってのスマートグラスに対する懸念
スマートグラスに対して、眼とディスプレイが近すぎる、
長時間使用による不具合など、
様々な懸念を持っている人が多いと思います。
そういう観点では、自分も同じく否定的な部分もあります。
現在でも、高額医療機器であるコンタクトレンズでさえ、
用法を守らずに使用されているどころか、眼科にも行っていない。
イヤホンも大音量で常時使用される方は増えてきています。
ただ、商品そのものが悪いわけではなく、注意点を把握しておらず、
用法に合っていない使い方をしていることが問題ですけど。
道具はあくまでも、その人の裁量で使う物ではあるし、
現在の時代の流れから、デメリットばかり問題視しても仕方ない。
それに、個人的にはスマートグラスのメリットは、
見逃せない部分が大きいと思います。
スマートグラスに対する眼鏡作製技能士の役割
現在、スマートグラスは、ゲームなどだけでなく、職場利用も増えてます。
そうなってくると、
・デバイスへの理解と、お客様へのわかりやすい説明
・度付きレンズの取付け
・それぞれのデバイスと眼に合わせた負担軽減策の立案
・各デバイスの利用効率化
が今後の眼鏡作製技能士の役割の一つと考えてます。
現状での要望対応について
要望があれば、デバイスやアダプタなどを見せてもらった上、
対応することはあります。
実際にやった事例としては、『ARグラスへの視力矯正レンズの取付け』
『VRゴーグルへの視力矯正および負担軽減』の相談。
『ARグラスへの視力矯正レンズの取付け』については、
添付の取付けアダプタに対し、度付き矯正レンズを入れるということでしたが、
このレンズが小すぎて、加工機のキャップが取付けられるかどうかギリギリでした。
また、PD(瞳孔間距離)の関係から、通常の加工では無理だったので、
偏心を使って加工してます。
偏心でも駄目なら、手刷りしようと思ってましたけど。
『VRゴーグルへの視力矯正および負担軽減』については、
至近距離でのディスプレイにより30分以上は使えない、
オーバーグラスのようにメガネが使用できるけど鼻が痛いということでした。
これはアダプタを使ってメガネを使わなくすることと、
ブルーライトを最大限カットすることで対応。
ブルーライトについては、最新の研究で短期的な疲れなどには影響しない
可能性があるとなっているものの、光が距離に対して減退することを考えると、
至近距離では、短期的・長期的な防御を兼ねて、
さすがに入れた方が良いと思います。
視力測定の結果をもとに、推測を交えて計算を少し行い、
その上で、最大限までブルーライトカットをいれてます。
設定についても、多少アドバイスしたと思います。
結果として、使用時間が30分から、1時間以上は可能になったと喜んでもらいました。
ただ、ある程度の設計以上のレンズでないと、色々と機能を付与できなかったので、
レンズ本体の価格としては高かったなと。
それでも、眼の負担軽減になって、使用可能時間が延びるということは、
コスパとしては良いと思います。
まとめ
スマートグラスには様々な種類があり、そのデメリットについては
多少の予想はできるものの、未知の部分もあります。
そのため、眼鏡作製技能士としては、自分にも否定的な部分はあります。
ただ、時代の流れとしては、これらのデバイスを使っていく方向ではあるし、
今後、お客様に対して説明や対策を講じることは、
眼鏡作製技能士しかできないと考えます。
旧・認定眼鏡士は診断ができなくても、光学・解剖学・医学などを一部学ぶことで、
眼科医へ誘導してきました。
それと同様に、今後は、スマートグラスがどういったものか、
どういう使い方をして、どういうデメリットがあるかなど、
継続して学ぶ必要があると考えます。
さらに個人に合わせた対策を講じていくことで、
ネットや量販店ではできないサービスを提供し、
IT企業や製造企業をお客様につなげることが、自分たちができることと思います。
次は、『アセテートフレームの工場の見学』について



