高いお酒に彫るの、正直ちょっと怖い話

松岡順子

松岡順子

テーマ:記念品 メッセージ入りボトル・グラスなど

高級ウイスキーや日本酒のボトルに、サンドブラストで文字彫刻を行う仕事について書いた記事です。
中身が入ったままの高級酒に彫刻する際に生じるリスクや、制作側が感じている緊張感を紹介しています。
記念ボトル彫刻で大切にしている判断基準と、「彫らない選択」についても触れています。


高いお酒に彫るの、正直ちょっと怖い話


高級ウイスキーや日本酒に、
創業記念や周年祝いのメッセージを彫刻する仕事をしています。

完成品を見ると
「すごいですね」「豪華ですね」と言っていただくことが多いのですが、
実はその裏側には、あまり表では語らない本音
があります。

それは――
高いお酒に彫るのは、正直ちょっと怖い
という話です。

怖い理由① 同じものが二度と手に入らない


高級酒は、価格が高いだけではありません。

* 年数表記がある
* 廃番になっている
* 限定品である

こうした理由から、割れたら代替がききません。

試作も、やり直しもできない
「一度きりの本番」。

この時点で、すでに緊張感はかなり高まっています。

怖い理由② 中身が入っているという現実


ボトル彫刻で特に神経を使うのが、
中身が入ったまま
という点です。

* 重量がある
* 振動がガラス全体に伝わる
* 温度差や内部圧にも気を配る必要がある

空瓶のガラスとは、挙動がまったく違います。

「いつも通りの力加減」が通用しない

これが、職人にとって一番怖いポイントかもしれません。

怖い理由③ 失敗すると、信頼まで壊してしまう


これは金額の問題ではありません。

創業記念や周年祝いは、
会社やご家族の歴史そのもの

もし失敗すれば、
壊してしまうのは作品だけではなく、
大切な想いと信頼
です。

だからこそ、この仕事は怖いのです。

それでも彫る理由


それでも
「この一本に刻みたい」と言われることがあります。

* このお酒を選んだ理由
* この年数に込めた意味
* この節目を形に残したい想い

そこまで真剣な想いを聞いてしまうと、
簡単に断ることはできません。

実際の作業は、驚くほど静か


作業中は、ほとんど音がしません。

圧を最低限まで下げ、
一文字ずつ、時間をかけて彫っていきます。


・早く仕上げることより
・綺麗に見せることより
・最後まで無事に終えること


完成した瞬間、
毎回、深く息をつきます。

だから、彫刻をおすすめしないこともあります


私たちは、すべての高級酒に
ボトル彫刻をおすすめしているわけではありません。

* 桐箱への彫刻
* 外箱への加工
* 別のガラス製品への記名

その方が、
安全で、長く、美しく残る
場合もあります。

大切なのは
「彫ること」ではなく
想いを残すこと
だからです。

高いお酒に彫るのが怖いのは、真剣だから


経験を重ねても、
この仕事に慣れることはありません。

むしろ、
一本一本の重みが分かるようになって、
怖さは増していきます。

それでも向き合うのは、
この一本が
替えのきかない特別な存在
だから。

そう思いながら、今日も作業台に立っています。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

松岡順子
専門家

松岡順子(ガラス工芸)

株式会社 クライミング

贈る相手や用途に合わせて、完全オリジナルで制作。世界にひとつだけのガラス作品で、特別な空間を演出します。

松岡順子プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

ガラス彫刻デザインのプロ

松岡順子プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼