【第11回】「学校」は何のためにあるのか ― AI時代に改めて考える学校の役割

佐々木康仁

佐々木康仁

テーマ:教育・ICT教育


「学校は何のためにあるのでしょうか。」

そう質問されたら、皆さんは何と答えますか。

「勉強するため」
「友達をつくるため」
「社会に出るための準備をするため」


どれも間違いではないと思います。

しかし、生成AIが急速に進化している今、私は改めて考えるようになりました。

「知識を学ぶだけなら、学校へ行かなくてもできる時代になりつつあるのではないか。」

インターネットには膨大な情報があります。
動画を見れば、さまざまなことを学べます。
そして生成AIに質問すれば、一人ひとりの理解度に合わせた説明を受けることもできます。


では、これからの時代、学校は必要なくなるのでしょうか。

私は、そうは思いません。

むしろ、AI時代だからこそ学校の役割を改めて考える必要があると感じています。

今回は「学校は何のためにあるのか」について考えてみたいと思います。

学校は知識を教えるだけの場所ではない

私たちは学校で、国語、算数、理科、社会、英語など、さまざまな教科を学びます。

もちろん、知識を身につけることは大切です。

しかし、学校で学ぶことは教科書の内容だけではありません。

友達と意見が違う。
思い通りにならない。
みんなで協力して何かをつくる。
時にはけんかをする。
失敗する。
そして仲直りする。


こうした経験も、子どもたちにとって大切な学びではないでしょうか。

学校は、知識を学ぶ場所であると同時に、人と関わりながら成長する場所でもある。

私はそう考えています。

学校現場で感じた子どもたちの学ぶ力

私は以前、ICT支援員として学校現場に関わっていました。

子どもたちがタブレットを使って学習する様子を見ていると、さまざまな発見がありました。

操作が分からず困っている子どもがいます。

すると、隣の子どもが、

「ここを押したらできるよ」

と教えてあげる。

教えてもらった子どもが、

「ありがとう!」

と答える。

また、ある子どもが新しい操作方法を見つけると、周囲の子どもたちに教え始める。

そこには、単にICT機器の使い方を覚えるだけではない学びがありました。

教える。
教えてもらう。
助け合う。
自分の考えを伝える。
相手の考えを聞く。


こうした経験は、学校という集団の中だからこそ生まれやすいものだと思います。

学校は「違う人」と出会う場所

家庭では、基本的に家族という限られた人間関係の中で生活します。

しかし学校へ行けば、さまざまな子どもたちと出会います。

考え方が違う。
得意なことが違う。
苦手なことが違う。
育ってきた環境も違う。


自分と同じ人ばかりではありません。

だからこそ、意見がぶつかることもあります。

しかし、社会に出ればもっと多くの違いに出会います。

私は長年、店長として多くのスタッフと働いてきました。

そこで強く感じたのは、仕事ができる人とは、知識や技術だけでなく、他人と協力できる人でもあるということです。

自分の意見を伝える。
相手の話を聞く。
意見が違っても一緒に仕事をする。
困っている人を助ける。


こうした力は、学校生活の中でも少しずつ育まれていくのではないでしょうか。

AIは知識を教えられる。でも……

生成AIは、これから教育の中でますます活用されていくでしょう。

分からない問題を説明する。
英語の会話練習をする。
作文の構成を一緒に考える。
プログラミングを教える。


こうしたことは、すでに可能になっています。

私自身も65歳になった今、生成AIを活用しながら新しいことを学んでいます。

非常に便利です。

しかし、AIには限界もあります。

AIはもっともらしい間違いを答えることがあります。

また、子どもたちが実際に人と関わる経験を、AIだけで完全に置き換えることはできません。

友達と協力して一つのことを成し遂げた喜び。
自分とは違う意見に戸惑う経験。
誰かを助けた時の嬉しさ。
集団の中で自分の役割を見つけること。


こうした経験は、実際の人間関係の中で学ぶ意味が大きいと思います。

AIは学びを支えることができても、人と人が関わる経験そのものにはなれない。

私はそう考えています。

先生の役割も変わっていく

これまで学校の先生は、知識を教えるという重要な役割を担ってきました。

もちろん、これからもその役割がなくなるわけではありません。

しかし、AIが知識の説明を手伝えるようになれば、先生には別のことに時間を使える可能性も生まれます。

子どもの小さな変化に気づく。
悩んでいる子どもの話を聞く。
学習につまずいている理由を一緒に考える。
子ども同士の関係を支える。
一人ひとりの可能性を見つける。


第4回の「育てる」、第5回の「見守る」、第6回の「褒める」で考えてきたことです。

私は、AIが先生の代わりになるというより、先生が人を育てるという本来の役割に、より力を注げるようになることを期待しています。

ただし、そのためにはICT環境の整備だけでなく、先生方の負担を減らす仕組みや、安心してAIを活用できる環境づくりも必要でしょう。

学校がすべてを背負う必要はない

ここで、もう一つ考えたいことがあります。

それは、学校に求められる役割があまりにも多くなっていないか、ということです。

学力を育てる。
生活習慣を身につけさせる。
情報モラルを教える。
人間関係を支える。
安全を守る。
そして今度はAI教育です。


もちろん、どれも大切なことです。

しかし、そのすべてを学校と先生だけに任せてよいのでしょうか。

私は、教育は学校だけで完結するものではないと思っています。

家庭で学ぶこと。
地域で学ぶこと。
社会で学ぶこと。
仕事を通じて学ぶこと。


それぞれに役割があります。

学校は、その中心的な場所の一つです。

しかし、学校だけに責任を負わせるのではなく、家庭や地域、社会全体で子どもたちの成長を支えることも必要ではないでしょうか。

学校へ通うことが難しい子どもたちもいる

一方で、学校という集団の中で学ぶことが難しい子どもたちもいます。

人間関係に悩む。
教室に入ることがつらい。
集団生活が合わない。


さまざまな事情があります。

だからこそ、私は学校の大切さを考えると同時に、学校に通うことだけが学びの正解ではないとも思っています。

家庭での学習。
オンラインでの学習。
地域の学習支援。
さまざまな教育の場。


これからの社会には、一人ひとりの状況に応じた学びの選択肢が必要です。

大切なのは、学校にいるかどうかだけではありません。

その子が安心して学び、成長できる環境があるかどうかです。

AI時代の学校に求められるもの

では、AI時代の学校には何が求められるのでしょうか。

私は、大きく三つあると思います。

一つ目は、学ぶ力を育てること。
知識を覚えるだけでなく、自分で疑問を持ち、調べ、考える力です。

二つ目は、人と関わる力を育てること。
自分と違う考え方を認め、協力し、相手を尊重する力です。

三つ目は、自分の人生を考える力を育てること。
何を学びたいのか。
何を大切にしたいのか。
自分はどう生きていきたいのか。
正解が一つではない問いに向き合う力です。

AIが答えを出してくれる時代だからこそ、人間には「問いを持つ力」が必要になるのではないでしょうか。

学校は未来の社会をつくる場所

私は教育の専門研究者ではありません。

長年、店長として人材育成に関わり、学校現場ではICT支援員として子どもたちの学びに接してきました。

そして今も、生成AIを活用しながら学び続けています。

その経験から、学校について一つ感じていることがあります。

学校は、単に子どもたちへ知識を伝える場所ではない。

子どもたちが、これから社会の中で自分らしく生きていくための力を育む場所でもある。

ということです。

勉強が得意な子もいる。
苦手な子もいる。
人と話すのが好きな子もいる。
一人でじっくり考えるのが好きな子もいる。


それぞれに違った可能性があります。

その可能性を見つけ、伸ばし、社会へ送り出す。

学校には、そんな大切な役割があるのだと思います。

AIがどれほど進化しても、子どもたちが人と出会い、学び合い、成長していくことの価値はなくならないでしょう。

むしろ、これからの時代だからこそ、その価値を大切にしてほしい。

私はそう願っています。

学校は、答えを教えるだけの場所ではない。子どもたちが自分の未来をつくる力を育てる場所である。

それが、今の私なりの答えです。

次回は、

【第12回】「先生」とは何か ― 知識を教える人から成長を支える人へ

について考えてみたいと思います。

Today's English Phrase

School is more than a place to study.
(学校は、勉強するだけの場所ではない。)


知識を学ぶことも大切です。

しかし、人と出会い、助け合い、失敗し、成長する。

そんな経験ができることも、学校の大切な価値ではないでしょうか。

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佐々木康仁
専門家

佐々木康仁(ITコンサルタント)

株式会社CNCコンサルティング

対面と非対面を組み合わせた独自のマーケティング手法、ChatGPTを活用するための基礎的な講習、小学校などでのICT教育支援を事業の柱とする。数々の職業を経験し“現場感覚”でサポートできるのが強み。

佐々木康仁プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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