「永年使った一枚板テーブルを塗り直したいのですが・・・。」」
永年使った安楽椅子の脚が折れたんです・・・直りますか?」
お得意様の新居浜市・O様からお問い合わせをいただきました。
さっそく訪問させていただくと、座面を支える5本ある脚の内、1本の脚が折れてしまってました。
修理作業前/フィンガージョイントの剥がれ
よく見ると、無垢材をフィンガージョイントしているヶ所の剥がれが主な修理となります。
剥がれている脚を、椅子本体から取り外しました。
この接合部分をギザギザにしている仕口(接合方法)をフィンガージョイントといいます。フィンガージョイントが、こんなにきれいな状態で剥がれるということは、製造段階での接着剤がかなり少なかったと想像できます。
修理作業中①/治具づくり
家具づくりで木部を圧着する時に、一番大切なことは、“治具づくり” です。
治具とは、作業をより正確に、より早く進めるために使う補助的な部材です。
TOKI家具館メンテナンスでは、お客様から配達時に引き取りしたダイニングテーブル天板などの無垢材部分を保管しておいて、そのつどの “治具づくり” や補強材料に再利用しています。
写真左の「コ の字型」の部材が、今回作った治具です。
修理作業中②/圧着作業中
私が、家具づくりを習った愛媛県立宇和島高等技術専門校での圧着方法は・・・
①木と木の圧着時には、十分な接着剤を入れる。
②当て木や治具をクランプなどで圧着セットする。
③圧力がかかりはみ出た接着剤は、濡れたウエスですぐに拭き取る。
はじめに、フィンガージョイントの接合部に、十分に接着剤を入れました。
その後、治具と当て木などをはさみ、クランプ3本を使い圧着し、はみ出た接着剤は濡れたウエスで拭き取りました。
フィンガージョイントの接合部は、きれいに付きました。
今回、使ったクランプは、ソマックス製スナップクランプ(右)とジュニアFクランプ(中・左)です。
力が必要な圧着ヶ所にはスナップクランプ、軽く押さえたいヶ所はジュニアFクランプと、使い分けて圧着しました。
修理作業中③/圧着作業後
圧着時間は、約12時間かけたのちにクランプ類を取り外しました。
フィンガージョイント内側もきれいに圧着できました。
フィンガージョイント外側もきれいに圧着できました。
修理作業後/安楽椅子の脚が直りました。
この安楽椅子は、30年以上前、O様が東京の百貨店で購入されたデンマーク製の椅子だそうです。
「若いときより永く使っているため、この椅子が一番落ち着く・・・。」
と言われていましたので、きっちりと修理できて本当によかったと思います。
外れていた脚が、きれいに圧着できました。こうしてみると、どの脚が折れていたのかわかりません。O様、ご依頼いただきありがとうございました。
21世紀は、メンテナンスの時代
SDGs(持続可能な開発目標)という言葉を、よく見聞きするようになりました。
20世紀は、大量生産 → 大量消費 → 大量廃棄 の時代でした。
お客様からは「家具って使い捨てでしょ・・・。」という言葉もまだまだ聞きます。
でも、これを続けてますと、SDGs(持続可能な開発目標)になりません。
コロナ渦の現在・・・永く使える家具を注文に応じて必要な数だけ作り、絶えずメンテナンスを繰り返して永く長く使っていく・・・。
日本も少しづつ、こんな時代になってきたように想います。
最後までお読みいただきありがとうございました。土岐泰弘