「土岐さんの店にあるような “木枠付きの飛沫防止アクリル板” を作ってください。」
「練り物大好き」の私が1ヶ月に1回は買い物に行っているのが、西条市三津屋・国道196号線沿いの “かまぼこの山田屋” 様です。
https://www.sumaki-no1.net/
前回のコラムでご紹介したサンプル1号(接着剤入り)を数ヶ月使っていただきました。
https://mbp-japan.com/ehime/tokikaguten/column/5080803/
そして感想を元にさらにサンプル2号(接着剤無し)をも製作し、さらに数ヶ月使っていただき、いよいよ本番の製作です・・・。
本番の製作は、木と木の接合部に、一切接着剤を使わないもの!
やはり、食べ物を作るための木製棚ですので、いくらF☆☆☆☆の環境性能に優れた接着剤でも微妙な匂いは残るもの・・・。
そこで、本番のかまぼこ専用木製棚は、一切接着剤は使わずに、木と木の接合の特性を生かして強度を出す「木殺し」しながら組み立てることとしました。
かまぼこ専用木製棚・本番製作①/檜材の用意
「軽い棚が良いです・・・。」と教えていただいていたため、材料には檜を用意しました。今回の檜材は、お世話になっている大工さんに相談の上、分けていただき用意した乾燥済みで少し脂分が多めの檜です。
ふだんの家具づくりの仕事は、硬くて重い広葉樹を中心に加工していますので、檜や杉などの針葉樹の在庫がほとんど無いんです・・・。
かまぼこ専用木製棚・本番製作②/木取り加工
木取りの加工は、作るべき家具の各部材サイズに応じた材料の切断から厚み決めの作業のことです。
まず初めに、動力機械の横切り盤にて、長さ決めをしていきました。
続いて、動力機械の手押しかんな盤にて、第一基準面・第二基準面を出しました。
さらに、動力機械の昇降丸のこ盤にて、各部材に合わせて細かく切っていきました。その後、動力機械の自動かんな盤にて、厚みを決めて木取りができました。
本番では、たくさんのかまぼこ専用木製棚を作るため、サンプル分の製作時と比べて、部材の数もたくさんになりました。
かまぼこ専用木製棚・本番製作③/仕口(接合部)の加工
本番のかまぼこ専用木製棚は、接着剤を一切使わないため、ほぞ組みにて仕口(接合部)の加工をしました。
この写真は、全ての部材の仕口(接合部)の加工ができたものです。
かまぼこ専用木製棚の脚は、動力機械の角のみ盤にてほぞ穴を掘りました。
1本の脚に、9個のほぞ穴を空けています。ほぞ穴の深さは、脚の材料厚の2/3が基本です。
かまぼこ専用木製棚の横桟木(長手方向)は、動力機械のほぞ取り盤にて、ほぞ先の加工をしました。1個の棚に、12本の横桟木が必要なため、かなりの数となりました。
かまぼこ専用木製棚の横桟木(短手方向)も、動力機械のほぞ取り盤にて、ほぞ先の加工をしました。
かまぼこ専用木製棚・本番製作④/各部材の面取りや調整作業
仕口(接合部)の加工ができた部材を、できるだけきれいにほぞ組みが決まるように調整作業をしました。
この写真は、調整作業ができあがった状態です。
調整作業の一部です。横桟木のほぞ先の面取りや全体の面取りがわかると思います。
なお、接着剤を一切使わずに接合するため、ほぞ穴に対して、タテ方向のほぞ先は、木殺しするため約1.5mmくらい厚めにしています。
かまぼこ専用木製棚・本番製作⑤/組み立て作業
これが、かまぼこ専用木製棚1本分の材料となります。
まず初めに、短手方向から組み立てていきました。
ほぞ組みが、かなりきついので、愛用のソマックス製T型クランプを使い少しづつ締め上げていきました。
続いて、長手方向の横桟木を差し込んでいきました。
こういった力を確実に材料へ伝える時は、定番の上で作業するのが最適です。
そして、長手方向も、愛用のソマックス製T型クランプを使い少しづつ締め上げていきました。
一本づつ、確実に組み立てていきました。
かまぼこ専用木製棚の全てが組み上がると、水引きをして、しばらく養生しておきます。これは、組み立てている最中にできた凹みなどを復活させるためです。
どんなに几帳面に作業していても、完璧なものづくりはむつかしいものです。
そのため手間や時間はかかっても、できるだけ基本通りに作業したいと想っています。
かまぼこ専用木製棚・本番製作⑥/全体の調整と仕上げ
全体の調整作業は、まず初めに決められた高さに、脚先のカットを、動力機械の横切り盤にて行いました。
続いて、棚にかまぼこを乗せる時に「ギッコン、バッタン」しないように、水平盤(ガラスの厚盤)に棚を乗せて、水平バランス調整をしました。
この時に使うのが、“あさりの無い横引きのこ” です。これを使うと、脚先をできるだけ傷めずに切ることができるんです。
その後、脚先の面取りや細部の微調整をして完成しました。
かまぼこ専用木製棚・本番製作⑦/完成後の納品
このような工程を経て3月中旬、かまぼこの山田屋様へお届けすることができました。当初の予定よりも、かなり製作期間がかかってしまい申し訳ございませんでした。
手前に置いてある棚は、現山田社長様が子どものころからずっと使っていたものだそうで、製作期間中にお借りしていたものです。
私が作らせていただいたこの棚も、永くお役に立てるとうれしく想います。
かまぼこの山田屋様、ご依頼いただきありがとうございました。土岐泰弘
「かまぼこ専用木製棚を作っていて思い出したこと」
「ほぞ組みが、きつすぎたら材料が割れてしまう。」
「ほぞ組みが、ちょうどでも接着剤を使えないと、すぐに抜けてしまう。」
かまぼこ専用木製棚は、食べ物を乗せて調理するため、接着剤を使わずに強度を出すことが大前提でした。
普通に家具を作る時には、考えられないシンプルな作り方なんです・・・。
でも、このシンプルな作業が、やってみるとなかなかむつかしい・・・。
この作業をしていて、私が思い出したのが、宇和島高等技術専門校時代の実技テストや技能検定での作業です。
特に、技能検定での作業は、決められた課題を作るのに、接着剤は使えませんし、隙間ができても詰め物をしてはいけませんでした。もちろん、制限時間も決まっての作業です。
今回の ”かまぼこ専用木製棚” の作業をしていて、若い時のことを思い出し、初心に戻れたと共に、とってもよい勉強になりました。
山田社長様、ご依頼いただきありがとうございました。土岐泰弘
追伸、かまぼこの山田屋様のホームページは、こちらです。
https://www.sumaki-no1.net/
「練り物大好き」な私が、もう10年以上よくいただいている、丸天やゴボ天・ちくわなども、ホームページから取り寄せができるんですよ・・・。