「自分で割れた座面を直したのですが、ズレ(目地)が出たんです・・・!」
「総桐たんすの取手はありますか・・・?」
「結婚時に買ったので、もう40年も前の桐たんすなんですが・・・。」
「実は、ホームセンターで買ったのを付けたんですが、すごくバランスが悪いんです。」
と、新居浜市・K様よりお問い合わせをいただきました。
TOKI家具館メンテナンスでは、多くの家具金物メーカー様と取り引きしていますが、
総桐たんすの取手といいましても多種多用でたくさんの種類があるため、実物を見せていただき、色合いやサイズを確認しないと手配ができません。
しかも、40年も前の総桐たんすとなれば、同じものがある可能性はかなり低いので、似たような取手を探して付け替えるのが一般的です。
修理作業前/ホームセンターで買った取手を付けた総桐たんす
さっそく訪問させていただきK様の総桐たんすを見せていただきました。
この総桐たんすは、広島県府中市で作られたと想像できる、とっても上品な総桐たんすでした。なかなか見ることができないレベルの高級品です。
扉の左側が純正の真鍮製金消し仕上げの取手で、右側がホームセンターで買ったというGB色のダイキャスト(鋳物)の取手です。
K様が言われる通り、バランスが悪く、せっかくの総桐たんすが台無しでした。
扉は、右側を開けてから左側を開けるのが基本ですし、右利きの方が多いため、どうしても左側より右側の方が、取手も蝶番も傷みやすいです。
修理作業中/純正取手が入荷しました。
現在、和家具用の取手や金物を作っているメーカー様は、大変少なくなりました。
しかし、全ての家具金物メーカー様とのやりとりの中、現在は受注生産品になっている同じ取手を見つけることができたのです。これは、奇跡的だと思います。
修理作業後/純正取手が取り付きました。
さっそく訪問の上、純正取手を取り付けさせていただきました。
上品な総桐たんすが蘇りましたし、なにより純正取手が付いたことにより、扉の開け閉めの機能性も便利になったと想われます・・・。
「これは、土岐さんでないと見つけれなかったわね・・・!」
「実は、この総桐たんす!息子から処分したら?と言われてたんです。本当に捨てなくて良かったわ。ありがとうございました。」
とうれしいお言葉もいただき感無量です。
右側に取り付けしているのが新しい取手です。左側の40年前の取手と金消しメッキの色合いは若干異なるものの、デザインやサイズが共通で違和感はありませんでした。
総桐たんすも喜んでいるように見えました。
この夫婦の総桐たんすには、たくさんの金物が取り付けてあり、全てが真鍮製の金消しメッキなのに、一個だけがダイキャスト(鋳物)のGB色だとバランスが悪いですからね・・・。
「21世紀は、メンテナンスの時代」
SDGs(持続可能な開発目標)という言葉を、よくテレビで聞くようになりました。
20世紀は、大量生産 → 大量消費 → 大量廃棄 の時代でした。
21世紀にこれを続けていますと、SDGs(持続可能な開発目標)になりません。
これからは、個々に必要な永く使える家具を必要な数だけ作り、絶えずメンテナンスを繰り返し末永く使っていく。
もしも、永年使ってきた愛着ある家具が不便になった時は、リノベーション加工を施し、より便利に使う。
こんな時代になりつつあると想います。
K様、ご依頼いただきありがとうございました。土岐泰弘