「カウンターの高さが75cmで、合う椅子が無いんです・・・。」
「使ってない座卓を、高めのテーブルに作り変えてほしいです。」
と、四国中央市・K様からお問い合わせをいただきました。
K様は、当店のホームページのリノベーション家具の事例紹介を見ていただいたという
大変ありがたいお客様です。
この写真は、第一回目の訪問時に撮らせていただいた一枚です。私の訪問に合わせて、和室から出してきてくださりありがとうございました。
「この座卓が、どう変わっていくのか・・・。」最後まで見ていただくとうれしく想います。
K様とご相談のうえ、リノベーション加工する座卓は・・・
①ゆったりと余裕ある食事の時間を過ごしたい!
②ご夫婦のだんらんや趣味の作業もしたい!
③パソコンやタブレットを使うデスク的な使い方もしたい!
これらのご希望をふまえ、普通のダイニングテーブルよりも低い、リビング的な使い方やダイニング的な使い方もできる、高さ670mmのLD(リビングダイニング)テーブルにリノベーション加工することになりました。
リノベーション作業前/座卓をお預かりしました。
K様の座卓は・・・
①約20年前の新築祝いでいただいたとのことで、ほとんど使ってない!
②花梨総無垢の座卓のため重たいため、いつも和室の片隅の壁面に立てかけていた!
③新築祝いでいただいた座卓なので、どうにかして使いたかった!
そのため、天板を含め全体的にとってもきれいな状態でした。
今回のリノベーション作業は、天板だけを生かし、写真の脚フレームを取り外して新たな脚フレームを作り取り付ける作業となります。
LD(リビングダイニング)テーブルにリノベーション後は、日進木工様のナチュラルブラウンLDアームチェアを色合わせして組み合わせます。
LDアームチェアの特徴は、普通のダイニングチェアよりも座面の高さが低く(390mm)、座面が大きく余裕をもって座れることです。
この写真のLDチェアは当店ショールームに置いてあるサンプルで、
フレームの色合い、張り生地をリノベーション作業後のLD(リビングダイニング)テーブルに合わせて、日進木工様に作ってもらいます。
リノベーション作業中①/天板から脚フレームを取り外しました。
初めに、座卓を作業台の上にひっくり返して、天板から脚フレームを取り外しました。
この座卓の脚フレームの接合は、ダボと接着剤のみ取り付けているため比較的容易な作業でした。
リノベーション作業中②/新たな脚フレームの材料は、ウォールナット
脚フレームに使う材料は、木肌が上品な小豆色をしたウォールナット材を選びました。
ウォールナットは、大変硬い広葉樹で耐久性も高い材料です。
ほとんど着色をしなくても、花梨総無垢の天板に色合わせすることができるんです。
リノベーション作業中③/脚フレームの木取り~仕口加工
ウォールナット材を使い、木取り加工~脚の加工~仕口加工までできました。
仕口とは、木と木を接合するための加工です。
今回の仕口(接合方法)は、脚にほぞ穴加工を、幕板にほぞ先加工をしました。
リノベーション作業中④/脚フレームの圧着作業
愛用のソマックス製T型クランプを多用して、脚フレーム全体を圧着していきました。
圧着のコツは、それぞれの形状に合わせた当て木(治具)を用意することです。
正確なものづくりの基本は、治具づくりだと想っています。
リノベーション作業中⑤/脚フレームのウレタン樹脂塗装
脚フレームの圧着が完全乾燥後、塗装室に移動させました。
天板ウラ面と接する面は、マスキングテープを貼り養生しておきます。
これは、塗装面には接着剤が効かないためなんです。
続いて、脚部フレームをひっくり返して、サンディングシーラーの吹き付け作業をしました。
ウレタン樹脂塗装は、このあと、補色作業 → ウレタンフラットの工程へと続きます。
細かなヶ所まで、拭きつけ漏れがないように慎重に作業を進めます。
リノベーション作業中⑥/天板と脚フレームの接合
ウレタン樹脂塗装ができあがった脚フレームを木工作業場へ戻しました。
天板ウラ面と脚フレームの接合面に、接着剤を塗っていきました。
接着剤は、ローラーを使い薄く塗っていきました。
続いて、ソマックス製ジュニアFクランプを使い、天板ウラ面と脚フレームの間に隙間が空かないように仮固定して、木ネジ止めしていきました。
ソマックス様の各種クランプ類は、現在生産中止だそうです。
その理由は、木工の機械化が進みすぎて、木工関係者や大工さんが、木と木の圧着作業が不要になったためだそうです。
当店のような家具修理やリノベーション加工をしている者からすると、とっても残念なことですが・・・。
リノベーション作業後①/当店のステージにて仮セット
LD(リビングダイニング)テーブルと、お選びいただいたLDアームチェアの相性確認のため、
当店ショールーム内の「リノベーション家具のある暮らし」ステージにて仮にセットしてみました。
この写真を見る限り、元々が座卓だったとは想像できにくいと思います。
日進木工様で作ってもらったナチュラルブラウンLDアームチェアとのバランスを考慮した幕板にしたため、椅子の肘部も余裕をもってテーブル下に収納することができます。
この椅子の特徴は、脚の下部に擦り板がデザインされているため、写真のような畳の床も傷つけにくいです。
リノベーション作業後②/K様へお届けしました。
このような工程を経て、2021年3月吉日、ようやくK様へお届けすることができました。
当店の仕事は、「一期一会」的な仕事が多いため、常に緊張の連続ですが、K様ご夫婦から・・・
「新築祝いでもらった座卓が、20年の期間を経て、やっと毎日使えるようになったわ・・・。」
「テーブルと椅子の高さのバランスもいいです・・・。」
「ありがとうございました・・・。」
と、うれしいお言葉もいただきました。
K様、ご依頼いただき写真撮影にもご協力いただきありがとうございました。
LD(リビングダイニング)テーブルの脇には、お子様が帰郷された時などに使われる補助的なスツール(写真手前)もご依頼いただきました。
このスツールも日進木工様に作ってもらったフォルムススツールで、フレームの色合い、張り生地をLDアームチェアに合わせました。
「リノベーション家具がある暮らし」と題しステージを作りました。
K様からご依頼いただいた、リノベーション家具はお届け前に一度、当店のステージにて仮セットして、お届けしました。
このステージは、これまで製作したリノベーション家具をお客様に実際に見ていただいたり、仮合わせして仕上がり状況の確認などに使用する目的です。
SDGs(持続可能な開発目標)という言葉をよく聞くようになった現代・・・
TOKI家具館メンテナンスでは、「リノベーション家具のある暮らし」について、情報発信に力を入れたいと想っています。
超微力ながら、コロナ渦における家具の仕事には、このような仕事が大切だと想えてなりません・・・。
最後まで、お読みいただきありがとうございました。土岐泰弘