真の高級時計
さて、第14回のコラムですが、機械式腕時計の「手巻き」と「自動巻き」後編についてお話したいと思います。
前回のコラムで、時計の歴史やら仕組みやらをご説明しましたが、ではズバリ「手巻き」と「自動巻」はどちらが良いのでしょうか?
機械式の時計を選ばれる方は、やはり時計に対して「味わい」を求めているのだと思います。機械式時計は半ば「嗜好品」とも言えるのではないでしょうか。ですので、「手巻き」と「自動巻き」どちらにもそれぞれ味わい方があるのですが、その味わい方が違います。この「味わい方の違い」でお選びになるとよろしいのではないでしょうか。
では、「手巻き」と「自動巻き」のそれぞれの「味わい」ですが、まず、手巻き時計は、出来るだけ「同じ時間に」「同じ様に」「ゼンマイを巻く」事が求められます。これは少しでも時間が遅れたり進んだりしないように、という配慮です。ゼンマイを巻き忘れても機械的にダメージがある訳ではありません。ですので、巻き忘れによる心配は要らないのですが、機械式時計の場合、「テンプ」という部品が左右に振幅運動をする事によって時計が動いています。この「テンプ」という部品が元気よく動いている間は、正確に針が進むのですが、ゼンマイの駆動力が落ちてきて「テンプ」の元気が無くなってくると、時間が狂い始めます。ですので、12時間おきに巻く、あるいは24時間おきに巻く、等、ゼンマイを巻く間隔が一定であれば、時計の狂いのばらつきを一定にする事が出来ます。
ですので、この「決まった時間にゼンマイを巻く」という行為を、「味わって楽しめる方」は、「手巻き」をお選びになるとよろしいかと思います。例えば、ビジネスマンの方であれば、出勤前や出勤途中の電車の中で、毎日決まった時間に決まった行為(ゼンマイを巻く)をする事で、生活のリズムを一定にする事が出来るかもしれません。あるいは、純粋に「ゼンマイを巻く」という行為を通じて、機械式時計へ愛着を深めるのも良いかもしれません。
と、このように「手巻き」時計をお選びになるのは、このような楽しみ方が出来る方ではないかと思います。
次に、「自動巻き」の味わい方ですが、まず、自動巻きは手巻きに比べると、技術的には進化しています。この「進化」を機械的な意味で楽しめる方は「自動巻」をお選びになるとよろしいのではないかと思います。
車に例えると、「手巻き」=「マニュアル車」、「自動巻」=「AT車」、といった例えが当てはまります。ですので、自動巻の方が機械的な意味では進化していますし、技術的な意味では優れています。特に、自動巻には「ローター」という部品が組み込まれており、このローターという部品が常に動いています。また、手巻きと同じ様に「テンプ」という部品も自動巻にも付いていますので、このテンプという部品も常に動いています。ですので、自動巻の時計は、機械的な意味で「メカニカルな」構造を持っており、「ローター」や「テンプ」の動きを、「視覚で味わう」のが、自動巻の楽しみ方のひとつとなっています。
皆様は時計の裏側がスケルトンになっている時計を見た事があるでしょうか?あれば、「シースルーバック」と言って、「ローター」や「テンプ」の動きを、「視覚で味わう」ための仕組みなのです。時計業界では「バックスケルトン」とか「裏スケ」と言います。(手巻きの時計にもシースルーバックはありますので、ご注意下さい。シースルーバック=自動巻ではありません)
ですので、このような機械の動きを「味わえる方」自動巻を選ぶとよろしいかと思います。
さて、皆様はどちらの時計がお好みでしょうか。
それぞれに、それぞれの良さがあります。
機械式時計に、時の刻みを感じてみるのも良いかもしれませんね。
少しでも、皆様の暮らしのお役に立てれば幸いです。
それでは、また、次回コラムでお会いしましょう。
有限会社池田質舗
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