【知財】地域活性化と知財
「優先権」という知財用語について解説します。
「優先権」は知的財産権制度特有の制度であまり他の法域ではない特殊な制度です。
優先権の種類と使い分け
まず一口に「優先権」と言っても、「優先権」は大きく2種類あります。
1:パリ条約(*1)に基づく優先権 通称、「パリ優」と言います。
2:国内優先権(*2) 「国優(こくゆう)」等といった略称で呼ばれる場合もあります。
どちらも「優先権」と言いますが、用いる場面・目的が大きく異なります。
大雑把には、上記1のパリ優は、「外国で同様の権利を取得するため」に用います。
一方で、上記2の国優は、「(前に出願した出願の)出し直しをするため」に用いる場合が多いです。
典型例としては下図のようなイメージで使い分けます。
ちなみに、パリ優は、特・実・意・商のいずれの法域にもある制度ですが、国優は、特・実のみで意・商にはありません。
前提
上記の2つの優先権でも、優先権主張をする場合には「出願済み」の出願が既にあるのが前提です。
この出願済みの先の出願を「基礎出願」、「先の出願」、「第1国出願(パリ優の場合)」等と言います。
いずれの優先権も優先権を主張できる条件(例えば、特許出願の場合には「1年以内」等です。他にも条件はあります。)が法令で定まっていますので注意しましょう。
なぜ優先権を主張するか?
上記の通り、優先権は2種類あって、場面・目的が違うので厳密には用いる理由は異なります。
ただし、優先権を主張したことによる「優先日」の効果は、大まかには下図の通りで共通します。
優先権を主張した場合には「先の出願」に記載済みの内容は、新規性・進歩性が「優先日」を基準に判断されます(*3)。
上図の例では、第2国出願(米国特許)は、現実の出願日は「2024.7.1」です。そのため、優先権主張がない場合、公知行為①により新規性なし(=特許性なし)となります。一方で、優先権主張した場合、新規性・進歩性が「優先日」を基準に判断、つまり「2024.1.1」で判断されますので、これより後の①は、新規性違反の証拠とはなりません。
ちなみに、優先権主張してもしなくても、公知行為②は、第1国出願・第2国出願のどちらも新規性に影響なし、特許性あり(=どちらも権利化できる。)になります。一方で、優先権主張してもしなくても、公知行為③は、第1国出願・第2国出願のどちらも新規性なしの証拠となり、特許性なし(=どちらも拒絶、権利化できない。)になります。
用語解説
*1 パリ条約
正式名称は「Paris Convention for the Protection of Industrial Property」(工業所有権の保護に関するパリ条約)という国際条約のことです。
本条約第4条で規定する優先権が「パリ条約に基づく優先権」となります。
https://www.wipo.int/wipolex/en/treaties/textdetails/12633
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/paris/patent/chap1.html
*2 国内優先権
特許法第41条に規定される「特許出願等に基づく優先権主張」をするための権利です。
*3 出願日の遡及ではない
専門的な話になりますが、優先権主張による効果は「出願日の遡及」ではない、と弁理士試験等では厳格に区別されます。
分割出願等は、「出願日の遡及する」と言います(後の出願は、基礎出願と「出願日」が同じと扱われる。)が、これに対して優先権主張出願では、「出願日の遡及ではなく」、新規性・進歩性等の基準日が優先日で判断される等と表現を使い分けます。
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上記の解説は専門外の方にも理解しやすいように、簡略化・表現の一般化をしております。
少々強引に簡略化等をしているため、専門の方からすると違和感のある表現・言葉が足りない場合があります。
また、上記は一例・概略です。詳細等はメール等でお問い合わせ下さい。
以上、ご参考まで。