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【知財】ビジネス関連発明/ビジネスモデル特許の動向

坪井央樹

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テーマ:知的財産

先月、特許庁がビジネス関連発明の出願等について動向を発表・更新しています。簡単に動向について解説します。

特許庁 ビジネス関連発明の最近の動向について
https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/sesaku/biz_pat.html

2000年をピークに減少傾向にあったビジネス関連発明の出願が近年増加傾向にあります。
背景にIoT(Internet of Things)及びAI(Artificial Intelligence)といった技術の活用が活発化していることにあると分析されています。

注目点1:特許査定率の向上傾向

従来(主に2000年ぐらい)、ビジネス関連発明の出願は特許査定率がとても低く、なかなか特許権を取得できませんでした。
この特許査定率の低さが出願数を2000年をピークに減少させた一因にも考えられます。
一方で、現在は特許査定率が70%を超えます。つまり、従来と比較してとても特許権が認められやすくなっています。
出願人にとってはメリットになりますが、障害になり得る他社の権利も成立しやすくなったビジネス環境になっている点に注意が必要です。
従来と基準や傾向が変わっている点には注意して下さい。

注目点2:マーケティング、金融、管理・経営等の分野での出願が増加

昔の特許法に関する書籍を読むと、マーケティング、金融、管理・経営等の分野は特許で保護する対象外でも大丈夫という考えがありました(詳しくは下記(少し専門的な解説)へ記載します)。
ところが、ソフトウェア技術やAI等が様々な分野へ適用されるのを背景に特許の保護対象も広がってきているといえます。
背景にはビックデータや人口減少等が考えられます。

膨大なデータを手動で扱うのは限度があります。言い換えればAIや統計処理を用いれば人が扱えるものになるとも言えます。
AIやIoTを用いると、今までは人が判断・認識していたものが自動化/IT化できます。
典型例は下記のようなイメージです(もちろんこれ以外の導入形式は色々とあります)。
AI導入
ここで問題となるのが、AI/ITの特許(「部品の特許」)と、ビジネスモデル(実施される「全体」)の関係です。
詳しい説明は少し知財の専門性が高い話になるので、下記(少し専門的な解説)へ記載します。
結論だけで解説しますと、AI(部品)の特許で、ビジネスモデル全体(システム)に権利行使が可能です。
権利一体の原則
そのため、どのような分野でも特許調査をすることをお薦めします。
また、他者に権利化されたくない内容、つまり、実施する内容は、出願することで審査で関連する出願がピックアップされますので、出願で権利化と同時に関連しそうな出願を把握できます。
そして、導入するAI(部品)については、例えば、契約等で知財リスクを軽減できます。このような点に注意して下さい。

(少し専門的な解説)

産業上の利用可能性

ビジネス関連発明は、従来、産業上の利用可能性が争点になりやすく(特許法第29条第1項柱書)、
新規性・進歩性等の要件以前にここで躓くことが多かったです。ちなみに外国も同じような状況でした。
一方で、現在は特許査定率が高くなり、先願が少ないこともあって、権利化されやすくなっています。
「産業」は、従来、特許権等を「工業所有権」と呼んだため、狭義の「工業」を指すと解釈する説も一応ありますが、そうではなく、学術的、実験的なものを排除するという意味です(工業所有権法(産業財産権法)逐条解説)。
FinTech等の普及を考えれば、金融分野等のサービス分野も対象にするは当然の流れになります。ただし、治療方法等は特許の対象外です。

特許法第29条 特許の要件
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000121#Mp-At_29

権利一体の原則

侵害行為に該当する場合は、請求項に記載されている構成要素をすべて業として実施している場合です(特許法第2条第2項)。
原則、一部だけの業としての実施は問題ありませんが、間接侵害(特許法第101条)といった例外があります。
そのため、請求項はできるだけ少ない構成要素/文字数の方が一般的には優れていると言われます。
一方で、請求項には明確性(特許法第36条第6項)が求められます。一般的には修飾語が多いほど明確にはなりやすいです。
ここが権利を「広く」するか「明確」にするかのバランスとなります。

特許法第2条 定義
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000121#Mp-At_2
特許法第36条 特許出願
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000121#Mp-At_36
特許法第101条 侵害とみなす行為
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000121#Mp-At_101

上記の内容で不明な点がございましたら、お手数ですがメール等でお問い合わせ下さい。
以上、ご参考まで。

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坪井央樹(弁理士)

武和国際特許事務所

特許・意匠・商標の弁理士・知財サービスと創業・IT・新規事業等の経営戦略のサービスを提供できます。

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