逆転の発想と忽忽(コツコツ)経営で顧客を創る!  <浦安市川の中小企業支援コラム>

和泉俊郎

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ライバルと争うことなく、顧客を創造することで業績を伸ばしている企業を特集を組んで取り上げた日経トップリーダー11月号ですが、その中から、広島の酒屋(酒商山田)が逆転の発想と忽忽経営で、全国を相手に顧客創造に成功した事例が大変面白いので、以下要約抜粋して紹介させて頂きます。

効率を追求しないと言う逆転の発想で顧客を創る!

父が病魔に倒れ4代目の酒屋を継いだ1989年は、奇しくも酒類小売免許の規制緩和が始まった年で、「誰にでも酒類の販売が出来る時代が来る」と酒屋の将来が危ぶまれていました。私も「10年から20年の後には酒商山田は存在していない」と直感しました。当時、酒屋はいずれ、コンビニかディスカウントショップになると言われていましたが、私は他の酒屋と同じ方向で効率を追求するのではなく、逆転の発想で、むしろ非効率とは何かを考え、目指すべき方向を変えて対峙することにしました。

売れ筋を追わず、売り込み営業をせず、価格で勝負せず

例えば、売れ筋を扱わない 売れ筋商品はメーカーが強く、購買力がないと相手にしてくれません。一方、売れ筋を製造元と一緒に創るとの発想に立てば、製造元・お客様・飲食店との絆が強くなり、需要を創る喜びが生まれます。焼酎の森伊蔵や日本酒の十四代も、そうやって全国ブランドに育ちました。具体的には、当時95%を占めていたコンビニ・ディスカウントストアで買える商品(ビール、タバコ、普通の日本酒)を捨て、吟醸酒等の日本酒と焼酎に特化しました。日本酒の市場は縮小傾向にあり、手強い競争相手も来ないと考えたからです。
売り込み営業をしない 売りこみは他の顧客を取ることであり、取った・取られた・取られたら取り返すと連鎖し、多大なエネルギーを費消します。一方、売り込みをしないと、時間が出来る、勉強が出来る、個別の提案が出来る、既存のお客様に集中できる、口コミが広がると云うような好循環が生まれます。当社は一物一価で、一切値引きはしません。
価格で勝負しない 価格で勝負すると、勝ってもまた取り返され、また取り返すと連鎖します。然し、価格以外の購入決定要素は山ほどあります。安心・安全・信頼・提案力・情報・企画力・情熱・知識・人柄・尊敬・共鳴・憧れ・ブランド・信仰等です。

お一人お一人に合った最善の一本を!

当社が目指すのは「酒の伝道師」です。造り手の思いや情熱を伝えるだけでなく、日本の酒の素晴らしさを世の中に広めて行くことです。その使命を共有するのは26人の従業員。お酒をより深く理解するため、利酒師などの資格の取得は元より、週に1度のリーダーミーティングやテイスティングを行う等、お客様のお一人お一人に合った最善の一本をお勧め出来るよう、OJTにも力を注いでいます。各店舗のイベントや蔵元への研修旅行などは従業員が自ら企画しています。

小さな努力、学び、成長、喜びを、毎日でも積み重ねて行く!

4代目就任時の売上高1億5千万円から9億5千万円へ、全国の飲食店の取引先数1,800、一般消費者の固定客はその数倍と伸ばして来ましたが、経営のコツは「忽忽経営」(忽とは100万分の1)、小さな努力、学び、成長、喜びを、毎日でも積み重ねていけば、やがては大きな成長になります。「何が出来るか」決めたことを誰もが真似できないところまで忽忽、とことんやり続ける、それが差別化とか異質化につながると確信しています。


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