なぜ高齢になると転びやすくなるのか?足腰だけではない意外な原因とは

荒川大輔

荒川大輔

テーマ:オーラルフレイル

こんにちわ。名古屋市港区のオリーブ歯科こども歯科クリニックです。

前回のコラムでは、認知症予防とお口の関係についてお話ししました。

今回は、高齢者の健康寿命を大きく左右する「転倒」について考えてみたいと思います。

「最近つまずきやすくなった」

「何もないところでよろけることが増えた」

「歩くのが不安になってきた」

そんな経験はありませんか。

高齢になると転倒しやすくなることはよく知られています。

しかし、多くの方はその原因を「足腰の衰え」だけだと考えています。

もちろん筋力の低下は大きな要因です。

ところが実際には、転倒はもっと複雑な問題です。

姿勢、バランス能力、視力、聴力、栄養状態、筋肉量、そしてお口の機能まで、多くの要素が関係しています。

そして私たちが本当に恐れているのは、転倒そのものではありません。

転倒の先にある「骨折」と「寝たきり」です。

高齢者の転倒で特に問題となるのが、大腿骨近位部骨折です。

太ももの付け根を骨折すると、多くの場合で手術や長期間の入院、リハビリが必要になります。

しかし問題は骨折そのものではありません。

骨折によって活動量が減り、筋力が落ち、歩けなくなり、介護が必要になることがあるのです。

実際に高齢者医療の現場では、

転倒



大腿骨骨折



入院



筋力低下



要介護



寝たきり

という流れは決して珍しいものではありません。

さらに多くの方が驚かれるのは、その後の生存率です。

大腿骨近位部骨折は「足の骨を折っただけ」と思われがちですが、決して軽い病気ではありません。

報告によって差はありますが、骨折後1年以内に10〜30%程度の方が亡くなるとされています。

さらに5年後まで追跡すると、半数近くの方が亡くなるという報告もあります。

これは一部の癌と比較しても決して軽視できない数字です。

だからこそ高齢者医療では、

「転ばないこと」

そのものが非常に重要な目標になっています。

では、転倒を防ぐためには何が必要なのでしょうか。

運動でしょうか。

筋トレでしょうか。

もちろんどちらも大切です。

しかし近年は、それだけでは説明できないことがわかってきています。

実は「しっかり噛めること」も転倒予防に関係しているのです。

噛むことと転倒。

一見すると無関係に思えるかもしれません。

しかし、その間には重要なつながりがあります。

まず、噛めなくなると食事内容が変わります。

肉や野菜などの硬い食品を避けるようになり、柔らかいもの中心の食生活になります。

するとタンパク質やビタミン、ミネラルが不足しやすくなります。

その結果として筋肉量が減少し、全身の筋力低下につながります。

この状態は「サルコペニア」と呼ばれ、高齢者の転倒リスクを高めることが知られています。

さらに、お口の機能が低下すると食事そのものが楽しめなくなることがあります。

食欲が落ち、体重が減り、低栄養へ進行することもあります。

低栄養は筋力低下だけでなく、免疫力の低下や回復力の低下にもつながります。

つまり、

噛めない



食べられない



栄養不足



筋肉が減る



転びやすくなる

という流れが生まれてしまうのです。

また、お口の機能と姿勢の関係も見逃せません。

噛み合わせやお口の機能は、頭の位置や首周囲の筋肉の働きにも影響すると考えられています。

頭は体重の約10%を占める重たい器官です。

その頭を支える姿勢が崩れると、全身のバランスにも影響が及びます。

私たちは普段、立っているだけでも無意識にバランスを取っています。

そのバランス機能は、筋肉だけではなく、視覚や平衡感覚、そして体から脳へ送られるさまざまな感覚情報によって支えられています。

健康なお口でしっかり噛むことも、その一部に関わっていると考えられているのです。

つまり転倒予防とは、単に足腰を鍛えることではありません。

歩くこと。

食べること。

噛むこと。

栄養を摂ること。

人と交流すること。

外出すること。

こうした日常生活全体が転倒予防につながっています。

私たちがオーラルフレイルを重要視している理由もここにあります。

オーラルフレイルとは、お口の機能が少しずつ衰えていく状態です。

むせる。

食べこぼす。

噛みにくい。

滑舌が悪くなる。

こうした変化を「年齢のせいだから仕方ない」と見過ごしてしまうと、やがて食べる力の低下につながり、全身の健康へ影響を及ぼす可能性があります。

もし、

最近むせることが増えた

硬いものを避けるようになった

体重が減ってきた

食事の量が減った

そんな変化があれば、それはお口からの重要なサインかもしれません。

転倒を防ぐために、まずはご自身のお口に目を向けてみてください。

しっかり噛めていますか。

食事を楽しめていますか。

栄養は十分に摂れていますか。

こうした小さな確認が、将来の健康寿命を大きく左右する可能性があります。

オリーブ歯科こども歯科クリニックでは、歯の治療だけではなく、お口の機能を守ることで健康寿命の延伸を目指しています。

歯を守るために人生があるのではありません。

人生を豊かにするために歯科医療があります。

次回は、「インプラントにするべき人、しない方が良い人」をテーマに、治療法の選択ではなく、その先の人生を見据えたお話をしたいと思います。

全ては患者様のよりよい人生のために。

私たちはこれからも、お口の健康を通じて皆さまの健やかな人生を支えていきたいと考えています。

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荒川大輔
専門家

荒川大輔(歯科医師)

オリーブ歯科こども歯科クリニック

保険診療から先進的な自由診療まで幅広く対応、家族全員で通える地域のかかりつけ歯科医院です。全身の健康に悪影響を及ぼすお子さんの口腔機能発達不全症の治療に県内外から多くの患者様が通院しております。

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