反対意見が言えるだけでは、 心理的安全性はつくられない

近藤ひろえ

近藤ひろえ

テーマ:職場環境



ある会議で、
こんなことがあったと聞きました。

その日は、ある案件について
決定しなければならない場面でした。

参加していたメンバーは、
一人を除いて全員が賛成。

ほぼ決まりかけた最後に、
Aさんが反対意見を述べました。

全員が賛成している中で、
「私は違うと思う」と伝える。

これは、簡単なことではありません。

周囲に合わせて
「なあなあ」にするのではなく、

自分なりに考えたうえで、
違う意見を出すことは
会議ではとても大切です。

違う意見があるからこそ、
見落としていたことに気づくことも
あります。

Aさんの意見も論理的で、
筋が通っていたそうです。

問題は、
反対したことではありませんでした。

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Aさんが話し始めてから、
場の空気が変わったそうです。

Aさんは
表情はあまり変わらず、
言葉もかなりストレート。

相手の意見をいったん受け止めるというより、
最初から否定して
自分の考えを伝えるような話し方でした。

本人に怒っているつもりは
なかったのかもしれません。

けれども、周囲から見ると、
少し怒っているようにも感じられる。

そんな伝わり方だったそうです。

--------

その瞬間から、
場が少しひりっとしました。

気がつくと、
話しているのはAさんと
その案件の担当者だけ。
ほかのメンバーは、
口を挟まなくなっていました。

意見がなかったわけではありません。

「こういう場合もあるのでは」

「別の見方もできるのでは」

そう思っていても、

「言ったら、バッサリ
否定されるかもしれない」

そんな不安があり、
言い出せなかったそうです。

Aさんの意見には説得力があり、
その伝え方も相まって、
ほかの視点を出しにくく
なっていたのかもしれません。

--------

この話を聞いて、
心理的安全性について
改めて考えさせられました。

心理的安全性とは、
単に「仲がよい」とか、
「やさしく話してもらえる」
ということではありません。

意見を言う、質問する、
懸念を伝える、間違いを認めるなど、

人との関係の中で
少し勇気が必要な行動をしても、

ここなら大丈夫だと
感じられる状態のことです。

そう考えると、
今回の会議は興味深い事例です。

Aさんは、

「みんなと違う意見を言う」

という対人関係上のリスクを取って
発言できていました。

その一方で、
ほかのメンバーは、

「違う意見を出したら
否定されるかもしれない」

と感じ、発言を控えていました。

一人が率直に話せることと、

その場にいる人たちが
率直に話し合えることは、

同じではないのだと思います。

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ここで私が考えさせられたのは、
心理的安全性は、
管理職が意識して場をつくるだけでは
十分ではない
、
ということです。

その場にいる一人ひとりの
関わり方によって、
話しやすさは大きく変わります。

もちろん、
上司や会議の進行役の関わりは
大きな影響を与えます。

けれども、

誰かが意見を言ったときの表情。

違う考えに対する返し方。

声のトーン。

「それは違う」と返すのか、

「なるほど。そういう見方も
ありますね」と一度受け取るのか。

そうしたメンバー同士の
小さなやり取り
も、

「ここで話して大丈夫か」を
左右しているのではないでしょうか。

--------

反対意見を言わないほうがよい、
という話ではありません。

むしろ、
違う意見はどんどん出たほうがよい。

ただ、

「自分の意見を伝えること」と、

「ほかの人も意見を出せるように
伝えること
」は、

少し違うのかもしれません。

「私は少し違う見方をしています。
皆さんはどう思いますか」

「その考えも分かります。
そのうえで、ここが気になっています」

そんなふうに、
次の人が入ってこられる余白を
残すこともできます。

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「意見が違っても、
会話が止まらない。」

心理的安全性のある場とは、
そんな場なのかもしれません。

次の会議で意見を伝えるとき、

『自分は何を伝えるか』だけでなく、

『この言い方をしたあと、
ほかの人も話せるだろうか』

そんな視点を少し持つことも、
心理的安全性のある職場を
つくる一歩になるのかもしれません。

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近藤ひろえ
専門家

近藤ひろえ(人材教育・メンタルヘルス講師)

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