お寺が廃寺になりそうというお話 前編 ~進むお寺離れ~
こんにちは。旭物産の成田です。
今日は、一般家庭に代々伝わるお仏像を、新しいお仏像の中に入れたお話です。
そのお宅は、以前お仏壇を洗濯したようで、立派な大きなお仏壇はピカピカでした。
「お仏壇を洗濯」とは聞きなれない言葉かもしれませんが、「洗濯」といっても衣類の洗濯とは違います。
「お仏壇の洗濯」は、古くなったお仏壇の塗り直しや金箔の押し直しなどを行い、新品同様に蘇らせる修復作業のことを言います。
ちなみに、箪笥をきれいにすることも「箪笥を洗濯する」と言います。
昔からある金仏壇(白木に漆を塗り、金箔を押したり、金粉を塗った仏壇のこと)を、何十年か経つと洗濯するご家庭もあるのですね。
タイミングとしては、法事などに合わせて洗濯したりします。
ちなみにお仏壇の洗濯は、仏壇店などで引き受けてくれます。
プラスチックのお仏像
というわけで、そのお宅ではお仏壇を洗濯してピカピカにしましたが、中に入っているお仏像は昔買われたときのものをそのまま残していました。
やがて、そのお宅のご主人が亡くなり、新しくご当主になられた方が遺品整理をすることになりました。
それで自分の家のルーツなどにも興味を持たれ、お仏壇の中のお仏像を新しいものにしようとお考えになったそうです。
さて、「ひと昔前のお仏像」について少し説明します。
わたしが木彫品のお仏像を取り扱い始めたのは、今から40年ほど前です。
実はそのころまでは今のように、木で彫った家庭用のお仏像はあまり多く市場に出ていませんでした。
モノがない時代は、プラスチックやおがくずを固めるようにして作られたお仏像も市場に出ていました。
ただ、ご本尊様をお迎えする一般の人には、くわしいことは説明されていなかったと思います。
また、プラスチックが主流だったころの木彫品のお仏像は少ないだけではなく、出来も不安定でした。
このお宅のご本尊様も、プラスチックが主流のときに木で彫られたお仏像のようで、その立派なお仏像を大切にお参りされていました。
ただ、これだけははっきり申し上げておきますが、プラスチックを固めたから、木で彫ったからと言って、そのお仏像の大切さに差はありません。
どんなお仏像をご本尊様にお迎えしても価値は変わらないと、わたしは思います。
胎内文書のように
さて、話は戻ります。
ご当主の方がお仏像を新しくしたいと言われたときに提案したのが、
もともとのお仏像の仏身を新しいお仏像の中に入れて、新しいご本尊様としてお迎えするという方法です。
ちなみに仏身とは、いわゆるお仏像の本体です。
お仏像は大まかに言うと、仏身、台座(仏身を乗せる、装飾された台)、後光(光背)というパーツに分かれているのです。
以前のコラムでご紹介したように、お仏像の中に胎内文書(たいないもんじょ)を入れることがあります。
※コラム「過去からのメッセージ ~胎内文書」をご参照ください。
一方、お仏像の胎内に別のお仏像が納められていることは珍しいですが、たまにあるそうです。
その場合、お寺のお仏像のように大きなお仏像でないと、胎内に別のお仏像は収まりません。
そして、このお宅にあったもともとのお仏像の仏身は、かなり小さいものでした。
新しいお仏像は、立派なピカピカのお仏壇に映える大きさです。
台座も大きかったので、もともとのお仏像の仏身を、その台座の中に納めることにしました。
お仏像を台座の中に
新しいお仏像の台座の内部には、ちょうど空洞がありました。
それで、新しいご本尊様の胎内ではなく、台座を改造し、そこに小さいお仏像が収まるようにしました。
この写真から、台座の、ちょうど透かし模様の中に、小さいお仏像の仏身が入っている様子がうかがえることが分かります。
今までお参りしていたお仏像がちゃんと入っていることが分かると、当主の方も安心してくださいました。
もしかしたら、お寺や専門家の方は、このようにお仏像を2体お参りするのは良くないとおっしゃるかもしれません。
ですが、今回の場合、ご当主の方のご要望でした。わたしとしても、お仏像をお迎えする方のご意向に沿うのが優先でしたし、
それは一番大切にしたかった部分なのです。
というわけで、
今お参りしているお仏像を活かして新しいご本尊様をお迎えする方法のお話でした。
新しいお仏像を買って終わり、ではなく、このような個別なご相談にもお応えできます。
それでは、今日はこの辺で。
またお会いしましょう。