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成田光俊

仏像の修復や販売の専門家

成田光俊(なりたみつとし) / 仏像修復

旭物産株式会社

コラム

まんてん薬師さんのお話

2021年12月28日 公開 / 2022年1月19日更新

テーマ:仏像

コラムカテゴリ:くらし

コラムキーワード: 仏壇仏具

こんにちは。旭物産の成田です。

今日は、あるお寺に「まんてん」の薬師如来様を彫ってお納めしたときのお話です。



ご霊木でお仏像


まんてんとは、以前紹介した、弊社で販売しているお仏像のことです。
普通のお仏像に比べてぽっちゃりしていてお顔はニッコリと微笑んでいます。

こちらから記事を読んでいただけます。

さて、そのあるお寺に「まんてん」の薬師如来様をお納めすることになったのには、こんな経緯がありました。それは2年ほど前のことです。

お寺にはたくさんの木(ご霊木と言います)が生えています。
そして何らかの理由でご霊木を切ってしまうこともあるようなのですね。
それで、ご住職からわたしたちに、この切ったご霊木をどのように活かそうかというご相談をいただきました。
お寺をずっと見守ってきたご霊木ですから無駄にはできません。
檀家さんにお配りできるモノを作って配ろうか、などというお話にもなったかと思います。

ご承知の通り、うちは仏像屋です。
それでせっかくなので、ご霊木でお仏像を作ったらどうか、というご提案をいたしました。
ちょうどそのご霊木は楠で、楠はお仏像を彫る木としては最適な材木でもあるからです。
それに、ご霊木で作ったお仏像は檀家さんや参列者が集まる場所に置いて、みんなに親しんでもらえるとも思ったのです。
「親しんでもらいたい」ということで、せっかくお仏像を作るなら「まんてん」と同じ、親しみやすくて可愛らしいお姿にとご提案いたしました。

身代わり仏像


ここで一つ問題がありました。
本来なら材木は切った後、十分に乾燥させないと彫刻しにくいのです。
ですが、今回はじっくり乾燥させる時間がなく、たとえ彫ったとしても、でき上がった後も木は乾燥し続けるわけですから、お仏像がバリバリとひび割れを起こしかねません。

とは言え、ここは仏像屋の知恵が働きます。
このデメリットをひっくり返し、バリバリ割れるとしたらそれを活かし、このお仏像を「身代わり仏像」としておまつりしたらどうか、と考えたのです。

お仏像にも、釈迦如来様や大日如来様などの如来様、観音菩薩様や地蔵菩薩様などの菩薩様など、いろいろな種類があります。
中でも今回は、身代わり仏像にふさわしい、薬師如来様にしたらどうか、ということになりました。
薬師如来様には、病の治癒や無病息災、健康を祈願します。
つまり、薬師如来様に祈願し、その薬師如来様がバリバリとひび割れを起こしても、それは「祈願を受け取ってくださった」ということであり、とてもありがたい、ということになるのですね。

ポストのような投函口


こうして「まんてん」の薬師如来様をお納めすることが決まりました。

さて、お仏像は普通「台座」と呼ばれる台にお座りになります。通常は箱状の台です。
また「後光」とか「光背」という、お仏像の背後に差す光明をかたどったパーツが台座後部に付けられます。

今回のまんてん薬師さんはどのようにおまつりしたら良いか、という話になったとき、
せっかくお参りにくる人たちが無病息災を祈願する対象になるのだから、
祈願しやすい工夫をすることにしました。
まんてん薬師さんの台座をただの箱状の台にするのではなく、台座に投函口を作ってみたのです。お願いごとをしたためた便箋をポストに投函するようなイメージです。
台座に投函されたお願いごとは、時期を見てご住職がまとめて祈祷する、という運びになるわけですね。

これが2019年のことです。




精悍で頼もしい表情


さて、このような経緯でお寺に納品されたまんてん薬師さんですが、先日約2年振りにお寺に行って驚いたことがあります。

それは、まんてん薬師さんのお顔が「しっかりして」見えたことです。

もともとこのお仏像は可愛らしく親しみやすいお顔で作ったはずです。
ですが、心なしか精悍で頼もしい表情に見えたのですね。

本当のところはわかりませんが、たとえば、2年経って生乾きの材木が乾燥してしっくりしてきたのかもしれません。
でも、わたしには、このまんてん薬師さんがたくさんの人のお願いごとを引き受けてきたうちに、自分の果たす役割というものを自覚されたように見えたのです。

つまり、可愛さでホッコリさせるキャラだったのが、責任感を持って顔が引き締まったのではないか、と。
責任感でお顔に変化が現れたのではないか、なんて、
仏像屋の勝手な想像ですが、そのように思えてなりません。

お寺の使命


さて、ほかにも興味深いエピソードがあります。
このまんてん薬師さんをお納めしたのはコロナ禍前で、その後の世の中を想像もできなかったころでした。
ただ、ご住職の奥様が、このお寺は何百年もの間、疫病の流行があるたびに薬師如来様を作っておまつりされていたらしいと、教えてくださいました。
「きっと、それがこのお寺の使命なのですね」とおっしゃっていたのが印象的でした。

わたしたちはご霊木でお仏像を作るお手伝いをさせていただいたにすぎませんが、大きな力が働いていたのかもしれません。
このまんてん薬師さんは、これからもこのお寺で人々の健康を見守る頼もしいお仏像として存在し続けるのです。

ところで、2021年の年末に、このまんてん薬師さんの開眼供養があります。
開眼供養とは、お仏壇、お墓、位牌などを新しく購入したり、建てたときに読経して「魂を入れる」ことです。通常、お仏像も完成したときに魂を入れるために開眼供養を行いますが、今回はイレギュラーで完成から2年後になりました。

そして、この開眼供養のとき、特別に希望者のお願いごとを募って、それを胎内文書(たいないもんじょ)にしたためて奉納することになりました。わたしも一口寄付させていただきました。

胎内文書とは、以前も記事にしましたが、お仏像の内部に入れる、お寺のいわれや歴代のご住職のお名前、そのお仏像が彫られたり、奉納されたときの時代背景などを記した文書のことです。
この開眼供養の様子はまた改めてレポートしますね。

ちなみに、通常のお願いごとはいつでも受け付けているそうです。

それでは、最後までお読みいただきましてありがとうございました。
また次回お会いしましょう。

この記事を書いたプロ

成田光俊

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