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成田光俊

仏像の修復や販売の専門家

成田光俊(なりたみつとし) / 仏像修復

旭物産株式会社

コラム

お寺が廃寺になりそうというお話 前編 ~進むお寺離れ~

2022年7月29日

テーマ:仏像

コラムカテゴリ:くらし

コラムキーワード: 仏壇仏具お墓参り

こんにちは。旭物産の成田です。


今日は、わたしが住んでいる地域のお寺が廃寺になりそう、というお話です。
廃寺というのは、お寺としての活動を廃止したお寺のことです。


将来への不安


そのお寺はご住職が亡くなった後、ご住職の奥様で、尼僧の方がご住職になられました。
しかし、20年前、その方も亡くなり、以来、近くのお寺のご住職が月に1回程度来られてお勤めをされています。お勤めとは、ご仏前でお経を読んだり礼拝を行うことです。
その20年前に、もともとの檀家さんは、この近くのお寺のご住職の檀家さんになりました。
そして、わたしたち地域住民はお互いに協力してお供えや掃除などを行い、お寺を管理してきました。
「それなら檀家と同じでは?」と思われるかもしれませんが、檀家とは「お寺の信徒であり、そのお寺に対してお布施などの経済的援助を持続して行い、そのお寺で葬式・法事などを行なってもらう家のこと」です。
ちなみに、この場合、経済的支援を受けているお寺のほうを旦那寺と言います。

さて、そのお寺は建物自体も古く、耐震補強もされていない状態で、そろそろ改修しないといけないぐらい朽ちてきていました。
住民たちの間でも、将来への不安が募る一方でした。
そんな中、住民たちの意見を集めてみたら「廃寺にする」という意見が多くなった、というわけです。

空き寺の増加


さて、2017年の宗教年鑑(文化庁統計)によりますと、日本にあるお寺の数は7.4万軒ほどだそうです。
その中で住職不在の空き寺は1~2万軒にもなります。
これは2017年当時のデータなので、2022年の現在では空き寺はもっと増えていると考えられます。

空き寺が増加している理由は、お寺の後継者問題がその1つのようです。
お寺の檀家になる家が減ってきていて、お布施などお寺の収入が増えません。
それだけに、お寺の運営も大変になってきていると聞きます。
そんな苦しい状況では、お寺のご住職も自分のお子さんに「住職になってお寺を継いでほしい」とは、親心としてなかなか言いにくいでしょう。
そのように、お寺の後継者がいなくなっていることも、空き寺が増えている理由の1つなのです。

また、葬儀の簡略化や法事が減少していることによるとも言われています。
つまり、「お寺離れ」です。

お寺離れ



わたしがお仏像を扱い始めてから40年余りになります。
わたしの肌感覚になるのですが、約20年前までは当時の時代背景もあってか、わたしたち宗教用具業界も盛況でした。
それが年々お仏壇・仏具の需要は少なくなり、10年ほど前からは加速度的に需要の減少が著しくなったと感じています。
うちは主にお仏壇の中に安置するお仏像を扱っています。
お葬式を挙げた後にお仏壇を買うという流れでは、わたしたちの役割はいわばお寺の下流に位置しています。
お仏壇・仏具の需要の減少には、上流のお寺の存在が大きく関係しているはずです。すなわち、一般消費者のいわゆる「お寺離れ」の影響があると言えそうです。

「お寺離れ」のそもそもを少し説明すると、江戸時代にしかれた「寺請制度」に由来する「檀家制度」にさかのぼります。ちなみに、「寺請制度」は仏教信徒であることの証明をお寺から請ける制度です。
そして「檀家制度」では、どの家も特定のお寺に所属することになっていました。
前述した通り、檀家さんはお寺に葬儀や供養をしてもらい、お寺にお布施をして経済的支援をします。
寺請制度では、お寺は檀家の戸籍を管理する役割も担っていたそうですから、お寺と檀家の関係は密接でした。しかし、明治4年に戸籍法が制定され、行政が戸籍を管理するようになると、家が必ずしもどこかのお寺の檀家にならなければならない、法的な必然性はなくなりました。
ここでお寺と家との関係にも変化が生じてきたのです。

身近な現実


昨今、その「お寺離れ」が深刻になっています。
昔はお寺で挙げていたお葬式が、最近では「葬儀ホール」で行われるのが普通になってきました。代々旦那寺と付き合いがあった檀家さんでも、お葬式でお寺に行くことが減りました。
また、旦那寺を持たない家のお葬式では、葬儀社さんに紹介してもらった、初対面のお寺のご住職にお経をあげてもらうのも普通になりました。
こうしてどんどん「お寺離れ」が進み、檀家さんが減って「後継者不在」のお寺が増え、そのまま空き寺、廃寺になっていったのではないでしょうか。

「お寺離れ」による空き寺や廃寺について、わたしも知識としては知っていたつもりでした。
ですが、いよいよ自分の住んでいる地域で、身近なこととして直面することになったのです。その現実を受け入れざるを得ない時代になったということです。

そして、わたしは仏像屋です。
このことが地域でも知られているので「成田さん、お寺のお仏像はどうしたらいい?」と言われてしまいました。

ということで、次回は廃寺になった後のお仏像をどうするかについて、仏像屋目線でお話ししようと思います。

それでは次回「お寺が廃寺になりそうというお話 後編 ~仏像の行方~」でまたお会いしましょう。

この記事を書いたプロ

成田光俊

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