コラム
修復すればいつもピカピカ! とは限りません
2022年5月13日 公開 / 2022年5月19日更新
こんにちは。旭物産の成田です。
わたしどもは、お仏像の修復をしていますが、
お仏像を修復すると当然新品同様にキレイになります。
ピカピカです。
ピカピカになりますが、何も金箔を押した(貼った)表面だけがキレイになるわけではありません。
内部構造もしっかり強化させるので、内部からリセットされたように、キレイになります。
いつもの雰囲気
さて、ピカピカに修復されたお仏像は、見た人に気持ち良く感じていただけますが、
中には修復前の見慣れたお姿のままで修復してほしいというご要望もあります。
きわめて少数派ではありますが、「ピカピカはいらない」というご要望です。
見慣れたお姿とは、お仏像が安置されて何十年、何百年と、ろうそくや線香の油煙、それにホコリなどが堆積したり、金箔が剥がれたり、劣化し、「何だか雰囲気が良くなった」ものということです。
見慣れたお姿は、ご住職や檀家さまにとってごく馴染んだお姿ですから、
この「いつもの雰囲気」のままに修復されたいというご住職や檀家さまのご要望も、至極ごもっともなのです。
そうしたご要望に応える、今のままの雰囲気を変えないで修復する方法もあります。
ただし、詳しい方法は企業秘密なので細かくお話しすることはできません。
ちなみに、外見を「ピカピカ」にしないなら、修復の必要もないのでは?と思われるかもしれませんが、お仏像のどこかが傷んでいるなら、やはり修復したほうが良い場合があります。
例えば、お仏像の表面のどこかが傷んでいるのは、実は内部の傷みがゆっくりと時間をかけて表面に達してきた、
ということもあるのです。
もうひと手間
以前もお話ししましたが、お仏像の修復では、一度お仏像を解体し、金箔や絵の具、下地塗などを剝がします。
そうして素の状態でバラバラになったお仏像のパーツを組み立て直します。このときはまだ接着しない、いわば仮組み立てです。
その後で下地を塗り、金箔を押したり、絵の具で彩色し、最終的な組み立てを行います。
こうしてお仏像は新品同様によみがえるのですが、この新品同様になった状態からもうひと手間加えることにより、見慣れた雰囲気のお仏像に仕上げるのです。
例えば、金箔押しでピカピカになった修復後のお仏像の金箔の上に、さらに絵の具などを重ねて見慣れた雰囲気に戻します。
このとき、修復前と同じ雰囲気にする必要があるので、お仏像を預かったときの画像をたくさん撮っておいて資料にします。「もうひと手間」はこの資料を元にして行うので、ご要望通りの見慣れた雰囲気にお仏像を戻すことができるのです。
「もうひと手間」の具体的な手法は企業秘密ですが、油煙で良い感じになった色味や、堆積したホコリも表現します。
どういう修復をされたいのか
先日納品させていただいたお仏像はこの方法で、修復前の雰囲気そのものに戻しました。
お寺に行ってご住職にお見せしたとき、大きく「OK」と言って喜んでくださいました。
ご住職が求めていらっしゃった雰囲気そのままの修復ができてひと安心したものです。
お仏像を修復するとき、ピカピカになりすぎるのに抵抗がある方もいらっしゃいますが、このような方法もあるのです。そのことを、ぜひ知っていただきたかったのです。
ただし、新品同様に修復した後、もうひと手間かけますので、コストはどうしてもその分かかってしまいます。
そのあたりも含め、どういう修復をされたいのか、お仏像に相応しい修復はどういうものなのか、事前によくお話ししてご納得いただきます。
また、新品同様に修復したとしても、本堂に安置して毎日お参りをすれば、ほどなくろうそくや線香の油煙、ホコリで汚れていき、雰囲気も馴染んできます。
具体的にどういう雰囲気になるのか、このあたりはご住職のご要望にお応えできますので、どのような修復をされたいか、ていねいにお話を伺います。
それでは、今日のお話はこの辺で。またお会いしましょう。
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