お寺が廃寺になりそうというお話 前編 ~進むお寺離れ~
明けましておめでとうございます。
旭物産の成田です。
本年もよろしくお願いいたします。
さて、今日は前回お話しした「まんてん」の薬師如来様が、開眼供養されたときのお話です。
前回のコラムはこちらからお読みいただけます。
太い太い巻物
前回もお話ししましたが、開眼供養とは、お仏壇、お墓、位牌などを新しく購入したり、建てたときに読経して「魂を入れる」ことです。
通常、開眼供養は、お仏像をお納めしてからあまり間を置かずに行われます。
ですから、新品のお仏像や修復したお仏像をお納めするときは、予定されているお寺の式典に間に合うように、お納めする日程を調整したりします。
今回の開眼供養は「まんてん薬師さん」をお納めして2年経ってからの式典でした。
そして、この式典に合わせて胎内文書(たいないもんじょ)を奉納することになりました。
胎内文書とは、お仏像の胎内(木製のお仏像の身体の中はくりぬかれて空洞になっていることが多いです)に奉納する巻物などのことを言いますが、内容はお仏像によってさまざまです。
一般的にはそのお仏像が置かれたお寺のいわれや歴代のご住職のお名前、そのときの時代背景などが書かれていることが多いです。
このまんてん薬師さんは「身代わり薬師様」のお役目を担っていただいているので、寄進者から身体や健康にまつわるお願いごとを募り、寄進者のお名前とそのお願いごとを巻物にしたためたそうです。
実際にどのように書かれたか、巻物の中までは見ることはできなかったのですが、お願いごとを書く前の白紙の巻物を手配したのはわたしでした。
胎内文書ですから、お仏像の胎内の空洞に収まる大きさでなければいけません。
しかし、今回、祈願者が予想以上に多く集まったそうです。
ということで、胎内文書はタテ15センチほどに対して、長さが16メートル以上にもなりました。
これを巻いていくと、たとえが相応しくないかもしれませんが、ちょうどトイレットペーパーのように太い太い巻物になってしまいました。
ちょっとここまでの太さの巻物はめずらしいかもしれません。
来賓席の緊張
開眼供養は2021年の年末に行われまして、わたしはなんと来賓席にお呼ばれして参列者のみなさんに紹介していただきました。
気軽に寄進者として参加するつもりでしたが、改めて来賓席に座ると、ものすごく緊張します。
ちなみに、お仏像を納品したお寺がこのように式典をされるときには、わたしのような仏像屋だったり、仏具屋さんなどの関係業者さんが来賓席にお呼ばれすることもあるのですね。
わたしが来賓席で緊張しているのに、まんてん薬師さんときたら、まるで何ごともないかのように堂々と、ご本尊の前に鎮座していました。
このようなお姿を見ると、わが子のように誇らしいものですね。
そのときの模様がこちらです。
粋なはからい
さて、来賓の紹介の後、寄進者から募ったお願いごととお名前がひと通り唱えられてから開眼供養のお経が唱えられ、式典は厳かに終わりました。
参加者への引き出物として、有名な日本画家の先生が描いた、まんてん薬師さんのスケッチをもとにした版画が配られました。
わたしも寄進者として一枚いただきましたが、何だかまんてん薬師さんが家にも来てくれるようでうれしいです。
こうした引き出物のはからいは粋ですね。
手前みそになりますが、このようにわたしが携わったお仏像が、檀家のみなさんに慕われていることが目に見えてわかると、日々の生活や仕事でときおり感じる憂うつも吹き飛ぶくらいの感動を覚えますね。
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回お会いしましょう。