~ 士衛塾空手を通して、伝えたいこと 48 ~
士衛塾山梨の門下生に向けた、私からのメッセージを過去のニュースより転載します。
2020年 3月号 士衛塾山梨ニュースより
●道場での心得●
先般、道場に貼り紙をしました。トイレの入り口にも貼り紙をしました。それを基に本部道場に通う子たちには教えています。以下、張り紙の内容を掲載します。
道場での心得
みんなで使っている道場ですが、道場は伊藤先生の家と同じです。自分の家と違い、よその家に行ったとき、守らなければならないことがたくさんあります。
その1 玄関を入るとき、出るときにあいさつをすること
ドアを開けて入るとき「おはようございます、こんにちは、こんばんは」。出るときは「ありがとうございました。さようなら」のあいさつをしましょう。
その2 靴をそろえること
下駄箱に靴を揃えて入れよう。
その3 道場に入るとき、出るときにもあいさつをすること
道場は神聖な場所です。玄関であいさつをして、道場に入るとき、出るとき「押忍」とあいさつをします。
その4 道場では遊ばないこと
道場は練習(稽古)する場所です。特に練習前は静かに座っているか、練習をしてください
その5 トイレはきれいにつかうこと
汚したトイレは先生達や奥様が掃除をします。迷惑をかけないために、きれいに使いましょう。
その6 道場の道具を使うときは、先生に許可を得ること
間違った使い方をすると、ケガをする道具もたくさんあります。使うときは必ず先生に声をかけること。
※各支部の練習でも、適用できるところは上記に準じてください。よろしくお願いいたします。
●入れ替わり●
年末年始や、年度末年度初めのこの頃は、生徒の入れ替わりも多い時期です。辞めていく生徒もいますが、ありがたいことに新しく出会う生徒がそれ以上に多いことに、とても励まされます。組織はそうして活性化していくものです。
長く続けてきて黒帯まであと一息の所で辞めていく人を見るにつけ、「もったいない」というか「あと一歩が越えられない、残念な人」としか思えません。きっと、それまで本気で一生懸命やってこなかったのでしょう。だから簡単に捨てられるのです。そこには自分自身へ意地も誇りもなにもありません。
先月のニュースでも書きましたが、黒帯が初心ならば、色帯はまだそこにすらたどり着いていません。ですから、まずは初心(黒帯)を目指すべきです。誰でも黒帯になれます。それは、なぜか。
答えは、私も含め、いま士衛塾山梨にいる黒帯全員が、みんなと同じように白帯から始め、同じ道を通ってきているからです。最初に帯の締め方や拳の握り方を習い、できないことだらけの中で悩み、それでも一生懸命に取り組んできた人たちです。
いつも金丸優奈の話を出して本当に申し訳ないのですが、最初に優奈が入ってきたときに、私たち教える者でさえ「どうやってこの子を上手にすることができるだろう」と思わせた子です。声は出せない、立ち方もできない。基本はどうやっても下手くそ。雰囲気暗いし(笑)。
しかし、そんな彼女の転機は「型」の試合に出ると決めたことでした。そこからスイッチが入ったように基本が上手くなり、型も上手くなり、もちろん組手も強くなってきました。いまでは士衛塾山梨を代表する頼りがいのある素晴らしい女性になりました。それは本人の一生懸命さとともに、ご家族の協力もあってのことです。本当に素晴らしいことです。
そうなのです!誰でも黒帯になれます。いまの黒帯に聞けば多分みんな同じ答えをします。「私は黒帯になれますか?」「なれるよ!だって、私が黒帯になれたんだから」。しつこいですが、誰でもなれます。「ただし、一生懸命にやったらね」。そのことに関しては、みんな同じようにプライドと自信を持っています。
空手道は、黒帯になる前、そしてこの後も、人生を負けないように生き抜くために必要なことを学んでいきます。それを子どものうちから学べることはとても素晴らしいことです。されど、空手ですが、「たかが空手ごときに負けない」でください。壁を超える前は大変、超えている最中は必死、超えてしまったら、そんなに難しくなかったとサラッと思えるはずです。
●一つのことに集中●
よくあるパターンの一つに、〇〇だから空手を辞めます。お休みします。ということがあります。〇〇は、勉強であったり、部活動であったり・・・。それは、一つのことに集中させたいからでしょうか?私はそのことに関しては生徒には口を酸っぱくして否定しています。
仕事をしていらっしゃる方は理解できると思いますが、私たちが仕事をしていくうえで、一点集中はなかなかできません、複数の仕事を同時並行しながら、優先順位をつけ、決められた時間までにきっちり仕上げることの繰り返しです。そして、その出来栄えは100%で当たり前、150%で評価され、90%では、いつもミスをするできない人と評価されます。「いま、この仕事に集中したいから、他の仕事は受けられません。私は一つの仕事しかできません。同時並行はできません」。こういう人は評価に値しないのが、いまの世の中です。
先日も会社の役員の方と、こんな話になりました。「最近の新入社員は、一つのことだけなら何とかできるが、3つのことを言われると整理ができないでパニックになる」。まさに一点集中型に育ててしまった弊害です。だから私は生徒たちには耳にタコができるほど言っています。「勉強や部活を一生懸命しながらも、空手にも一生懸命取り組むことができる人になってください」と。
できる人は何でもできます。できない人は何でも中途半端。どうせ同じ時間同じことをするならできる人になりましょう。私は空手道を通して「社会で通用する人」を育てて行きたいのです。冒頭の考え方や行動は、今の社会ではほぼ通用しません。
●人生の先輩として導く●
最近は聞かなくなりましたが、私たちが子育ての最中には、「子どもは親友」みたいな関係が良いという風潮がありました。
しかし、親子は親子であり、決して友達ではありません。他人の子ならいざ知らず、自分たちが産んだ子どもです。親は子どもの成長とともに親として成長させてもらうと同時に、人生の先輩として子どもが自立できるように、導いていかなければなりません。
勘違いしては困るのが自立=子どもの好きにさせるとか、子どもの意思を尊重するという考えです。それは綺麗ごとであって、親として子どもに何も教えてないのと同様です。「子どもが決めたことだから・・・」子どもの意思を尊重するのは大いに結構ですが、人生経験も、社会経験もまだまだ浅い子どもに善し悪しが分かりますか?子どもには判断が伴う事象については、未熟だけれども考えさせることはとても大切です。しかし、その判断が違っていたら親が正しい方向に導いてあげるべきです。
空手で例えると、子どもが空手を楽しいと言っているから続けています(最初はそれて良いですが)。子どもが空手を○○だから辞めます。「空手」を「仕事」や「学校」に置き換えてみてください。子どもには、なぜ、そのこと必要なのか、なぜ続けることに意味があるのか。なぜ嫌になった時に、壁を乗り越えなければならないのか、乗り越える意味は何なのか。それを親として、人生の先輩として教えてください。そのためには親も逃げてはダメです。
友達という無責任で楽しい関係ではなく、親として時には子どもに嫌われても、子どもの行く末に責任と自信をもって導いてください。良いところも悪いところも親の資質を子どもは受け継ぎます。親を超えさせたかったら、親の考えの斜め上のことや想像しないことをさせてください。
伊藤家では子どもを叱るとき二つのことを子どもに問いただしました。「なぜ、叱られているのか」「今後どうするのか」です。子ども自身が正しい答えを出すまで、時間をかけて考えさせました。そして、親を超えさせるために、親の考えというフィルターを取って自由な発想をさせました。
士衛塾は、空手の技術はもちろん、武道を教え、社会を教え、ルールーを教えるところです。私たちは、皆さまの子どもたちをお預かりしている身です。しっかりと育てます。どうか親御さんも一緒になって士衛塾山梨を作っていってください。ご協力よろしくお願いいたします。
●後藤杯●
2/9の後藤杯では、参加した全員が素晴らしかったです。組手スタイルが進化した、山田征弥、宮下琉汰。上段蹴りをもらわなければ圧倒的に試合内容で勝っていた、宮下聖矢、山下豊湧。強い相手に果敢に立ち向かっていった八巻斗誠。中段突きで一本勝ちをした梶原旅人。今後の課題が明確に見つかった有井結飛、佐藤佑星。
みんなの今後がとても楽しみです。