「訂正印」、「捨印」、「割印」、「契印」
トラブル回避の基礎知識 1
ふだん我々が、何気なく日常で行っている行為が、意外にも重大なトラブルの元になったり、巻き込まれてしまったりなんてことがあります。ご相談者様の中で、こんなありふれた事が実はすごく大事なことなんだね、今まで知らなかった、教えてもらって助かったなんて言われたことを集めて参考に紹介します。
「署名」と「記名」と「押印」
「署名」とは、文書上に自分の氏名を自筆で書くことです。欧米では署名(サイン)が非常に重要で、皆さん独自のサインで日常生活を送っておりますが、我が国は印鑑の押捺行為が重要視されており、印影がない署名(サイン)よりも記名押印が求められる傾向が強いようです。
「記名」とは、自分の名前を自署以外の方法で記載することです。パソコンで自分の氏名を入力し印字した文書や紙にゴム印の氏名を押捺することが記名です。この氏名の上や後ろに印鑑を押捺するのが記名押印です。
自署のサインのみと記名押印とではどちらの効力が強いのかと疑問がわきますが、我が国の法律では同等の効力を持つものとされています。また、民事裁判においては記名押印に強い証拠力を推定しています(民事訴訟法第228条)。よく100円ショップでハンコを売っていますが、パソコンで打ち出した書類にこのハンコを押したものも強い証拠力を持つというのは不思議ですね。悪い使われ方をしないという前提での理解です。
我が国では、署名だけの文書よりその後ろにある印影を押した点を重要視しますが、例えば、自宅に訪問販売の業者が訪ねて来て、話を聞いているうちに申込書にサイン(署名)だけしたんだけどハンコは押さなかったから大丈夫、と思っていたら後々トラブルになったなんてことがあります。サイン(署名)のみをすることも印鑑を押すのと同じ心構えが重要です。
もっとも、最近はクレジットカードの使用時にサインさえ必要のない時代になってしまいましたが、まだまだ遺言書作成など自筆の署名が要件になっているものもありますので、頭の片隅に覚えていたら良いと思います。
次回は「印章」「印影」「印鑑」「実印」「認印」について