ご遺族に代わり散骨します 「代行散骨」
ゴールデンウィーク直前に執り行った海洋散骨です。
事前の粉骨作業も終えて、数ヶ月間ご自宅で供養をされていた妻(母)のご遺骨。海洋散骨の遺言を残して40歳半ばの早い旅立ちをされた方でした。
散骨日が近づくにつれ春の荒れた日本海もなぜか穏やかに・・・、当日はジャンバーを重ねると額に汗が出るような暖かさ、波も穏やかとなり最高の海洋状況でした。
ご依頼主の父と娘さん、酒田マリーナでしばらくぶりの再会でしたが、初めてお電話を頂いた時の娘さんの泣き声混じりの声を思い出しました。本当に辛そうなお声でしたが、あれから数ヶ月・・・、乗船前のお願いと航海時の説明中にお顔を覗きながら「今日まで辛い日々だったのかな・・・」と思いを巡らせておりましたが、散骨当日は時折笑顔も見えホッと致しました。
外海では少しばかり波風ありましたが、お二人とも終始笑顔で船上からの風景を親子で楽しんでおりました。お父さんの手には亡き奥様の小さな遺影が握られております。海洋散骨ポイントに到着し、潮や風の流れを読みながらエンジンを止め船上に般若心経が流れます。
アフトデッキに拵えた祭壇と花ビラに囲まれた紙袋に納まるパウダー状のご遺骨、小さな遺影に向い親子で合掌、船上に鳴り響く三点鐘・・・。
大海原に清め捧げる献水、献酒、親子それぞれにお母さん、奥さんのご遺骨を手に静かに散骨が始まります。
海面を時折走る風に悪戯され、舞上げる骨粉もありましたが乳白色に衣替えしたお母様が船縁を花ビラと共に静かに離れていきます。娘さんの手で花ビラを勢いよく空へ・・・。
海面に散り降りた花びら、一筋となり流れていく様を親子で静かにお見送りです。
何度と経験している私達クルーもこの時ばかりは終始無言となります。
春先の鳥海山も今日は少し霞んで見えますが、最後に鳥海山を背景に船上での記念撮影となりました。
厳かな海洋散骨も終えた頃、お二人とも安堵したのでしょう、笑顔が戻り会話も弾んでおりました。私どもも胸をなで下ろす瞬間です。
船の横揺れにも慣れたご様子で帰りは少しスピード上げて港に向かいますと、偶然にも酒田港に今朝寄港した豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号の姿が見えます。せっかくなので船上から客船を見学する事を提案し、すぐさま笑顔で快諾して頂きました。
「これは凄い!」
豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号で東北周回旅行の途中で酒田港に停泊中を船上からの見上げるように見学です。
全長290メートル、総乗船者数3,800名ほど乗船客2,700名程だそうです。
後で伺いましたが乗船されているのは殆どが外国人でゆったりとした時間を過ごされ、寄港したら下船し観光されてるとの事。なんとも羨ましい話です。
大きな船のすぐ横まで近づき遺影を手に記念撮影、本当に喜んで頂きました。お二人のご協力、ご理解のもと今回の海洋散骨葬も天候、海況に恵まれ無事に終えることが出来ました。
帰港時には「豪華客船を海から見る事が出来ました」と大喜びで、大変ご満足されてたご様子。
若い親子にはこれから先のご活躍を祈るばかりでした。