「カウンセリング心理学を深く学ぶ専門講座」のご案内 (11月~3月・全5回)
10月25日(日)に高岡市駅前のウイング・ウイングで行われた「ウイング・ウイング祭」で、市民大学
たかおか学遊塾の公開講座として、-「年をとること」を心理学から考える- との話をしました。
内容は、①年齢の考え方 ②心の発達の考え方 ③高齢期のうつについて、④「介護」にどう取り
組むか、についてです。
ここでは、当日出席できなかった方に、④「介護」にどう取り組むか、の部分だけご紹介したいと思い
ます。
特に「介護」の問題を取り上げるのは、心理専門家としての関心と共に、個人的に私自身が「介護」
する側の当事者だからです。
ですから、以下のことは私自身の個人的体験を基にした私なりの「介護」に対する考えです。
皆さんのご意見・考えもお聞かせいただけたら、と思います。
④「介護」にどう取り組むか
(1)「介護を、自分自身にとっての優先順位を再確認するいい機会、ととらえる。」
(2)「介護に自分なりの『意味』を見出す。」
(3)「介護は、人としての『尊厳』を守るというのが基本。」
(4)「自分と相手の『生活の質』(quality of life)をいかに高めるか、を考える。」
(1)~(4)についての説明:
(1)介護を機会に、自分自身にとっての優先順位を再確認するということ
不要なものは捨て去る。形式や体裁だけのものは捨て去るいい機会。
(2)介護に『意味』を見出すということ
全ての行動には「意味」がある。
誰でも、認知症の人も含めて、「意味のあること」をしたいと思っている。
例:昨年東京で開催された認知症の「ケアと予防」の国際会議の席上、アルツハイマー型
認知症と診断されているある人(67歳・女性)は、通っている認知症専門のデイサービス
で、「自分にしかできない役割を与えられたことで、生きがいを感じることができるように
なった」。
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認知症の人も生きる「意味」を求めているという視点を再確認する必要。
(3)人としての『尊厳』を守るということ
介護される人に接する際のキーワードは「尊厳」で、「やさしさ」ではない。
「相手にやさしく接する」にとらわれると、本当には相手のためになっていない可能性あり。
それよりも大事なのは、「相手の尊厳を守る」という姿勢。これは、相手を対等ととらえる
という考えに基づいており、真に相手のことを考えていることになる。
具体的には、人生経験を重ねた高齢者に対し、「幼児や子どものよう」に扱わない。
相手をどう呼び取り扱うかは、自分自身が相手をどう見ているかを反映している。
そして、それが今後の自分の態度や行動に影響する。
根拠: 記憶力などと違って、以前身に付けた多くの技能は、認知症になったずっと後まで
も保たれる(例:読むこと、ダンスや歌うこと、音楽を聴いて楽しむこと、ものを作ったりなど
の趣味にひたること、物語を話すこと、昔を振り替えること)(米国メイヨー・クリニックによる)。
つまり、認知症=全ての能力が同時に低下、とはいえない。
例えば、言語表現力が弱り言葉がうまく話せないからといって、その高齢者がこちらの言って
いることを理解していないとはいえない。また言語表現力以外の能力は保たれている可能性
もある。したがって、もしそのような高齢者が、見かけの様子だけから相手から「幼児や子ども
のように」扱われたとしたら、内心いかに腹立しく思うかは想像に値する。
ただ、認知症の人は常に「不確かさ」・「不安感」・「恐さ」を感じ、そのため「保障」・「安心感」を
求めているといわれている。(例:「自分が何をしたらいいのか、どこへ行ったらいいのか」)
このような認知症の人に対応するには、
・新しいことは避ける。慣れていたことに集中する。
・短い言葉で、はっきり話す。
・言葉だけでなく、身振り手振りも使う。
(4)自分と相手の『生活の質』(quality of life[QOL])を高めることについて
長期的に持続可能な関わりを考える時、大事なのは「自分自身のことを第一に考える」こと。
相手のことを第一に考える姿勢では、結局長続きせず「燃え尽きて」しまい、共倒れになる
可能性大。
介護する中で、気分が落ち込んでもおかしくない。(介護している家族の5割近くが、うつの
症状を経験している、との専門家の意見もある。) また、不安な気持ちを持っても当たり前。
したがって、無理に「気分は落ち込んでいない、自分は元気だ、大丈夫だ」と思わない。
もっと正確には、「自分は、元気で大丈夫でなければならない」と自分を鼓舞しようとしない。
↓
元気がないなら、そうと認める。
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助けを求める。「援助を求める」ことが大事。社会資源を最大限活用する。
・社会資源の例:
○公益社団法人認知症の人と家族の会
無料電話相談:0120-294-456
(土・日・祝日を除く毎日、午前10時~午後3時)
○同 富山県支部
【住所】〒930-0093富山市内幸町3-23菅谷ビル4階
【電話】076-441-8998(電話相談可)
○「日本認知症ワーキンググループ」当事者の団体(昨年10月11日設立)(フェイス
ブックあり)
「認知症の人基本法」策定を国に働きかけるほか、診断後の本人に役立つ冊子
作りも目指している。
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村田 晃(心理学博士 PhD University of Denver USA・臨床心理士)
(うつ心理相談センター所長)