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セミナー 当事者と共に「統合失調症」 を考える(9月12日)のご報告

村田晃

村田晃

テーマ:メンタルヘルス(心の健康)


このセミナーの一部は、上の動画でご覧いだだけます (9分31秒)。
(なお、この動画の撮影については事前に参加者の了解を得ています。また、この動画は最初に
NPO法人ここらいふのホームページに掲載されたものを了解を得て転載しています。)

◎セミナー「当事者と共に学ぶこころの病気」の第5回 −「統合失調症」を考える− を、9月12日(土)
に富山市の県民共生センターサンフォルテで開催しました。 
これは、NPO法人ここらいふの今年度のセミナーシリーズの一環です。

参加者は17人で、「統合失調症」の当事者や当事者の家族、就労支援団体の人、関心を持つ
一般市民など多岐にわたりました。また、遠く愛媛県や福井市からの参加もありました。
北日本新聞記者による取材もありました。

最初に講師の私から、「統合失調症」についての概略を次のように紹介しました。

1.「統合失調症」とは何か
  現実を異常に解釈する脳の病気(米国メイヨー・クリニックによる定義)

  Schizophrenia(英語)の言葉自体は「分裂した心」の語源があるが、しかしそれは
「気分・感情と思考の通常のバランスが損なわれたこと」を意味している。

  2002年、「全家連」(当時)の要望等により、従来の「精神分裂病」から「統合失調症」
に名称変更(厚労省通知)

〇代表的な症状
・陽性(ポジティプ)症状: 普通の人には見られない行動
  幻覚(幻聴が最も一般的)
  妄想(その文化の一部ではない、変わらない間違った信念): 被害妄想・関係妄想など
  思考・言語障害
  運動障害(例:カタトニア[緊張病])
・陰性(ネガティプ)症状: 普通の気分・感情や行動が障害されたもの
  感情表現の平板化、楽しい感情の喪失・意欲の低下
・認知機能の低下
  判断力・遂行能力・注意力・直近の記憶力の低下

注:米国国立精神衛生研究所及びメイヨー・クリニックによる
なお、個々の診断名については、国際的な二つの精神疾患診断基準:ICD-10(WHO)とDSM-5(米国
精神医学会)でやや違いがある。例えば「単純統合失調症(Simple Schizophrenia)」という病名はICD-10
にあるが、DSM-5にはない。

〇出現率
 1%(100人に1人) 日本での統合失調症の患者数は約80万人(厚労省による)
 男女差や民族による差はない。
 通常若年(18歳~35歳)に発症。45歳以後の発症はほとんどない。

2. 原因
 はっきりした原因はまだ分かっていないが、幾つかの要因が関係していると考えられている。

・遺伝子と環境(出産時の障害など)の相互作用
・脳内の神経伝達物質(ドーパミンなど)の機能不全
・脳自体の構造の異常

3. 「統合失調症」に対する対処方法
〇薬物療法(抗精神病薬)
1950年代半ばに抗精神病薬が誕生
    従来型(「定型」)抗精神病薬の例:ソラジン・ハルドール
    ただし副作用もあり 
    特に口唇などの不随意運動(遅発性ジスキネジア)
    他、身体の硬直・手足の震え・けいれん・多動など
1990年代から第二世代(非定型)の抗精神病薬が登場
    例:リスパドール・ザイプレクサ・セロクエル・ジェオドン・アビリファイ
    従来型に比べて副作用は少なくなったが、大きな体重増加は起きやすい

〇心理社会的処遇
   抗精神病薬によって症状(特に陽性症状)が落ち着いた後に、日常生活を送る上での
援助を目的とする。

  ・心理教育
    病気そのものや病状の管理、コミニュケーションや対人関係、自己管理、仕事・学業など
についての対処法を教える  
  ・心理療法
    認知行動療法の適用についての研究・実践がなされている
  ・リハビリテーション
    職業訓練・社会性訓練[金銭管理]など
  ・リラクセーション・ストレス管理
  ・自助グループ
  ・当事者家族のサポート

〇統合失調症と暴力的犯罪の関係について
  種々の統計では、その関係は特に認められていない。
  ただし、統合失調症と自殺の関係は高い(統合失調症患者の自殺率10%)。
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その後にまず当事者4人から、発症の過程や精神科病院入院生活、また、どのように
幻覚や妄想に対処したか、などの率直な体験発表がありました。

以後は、参加者相互での自由な意見交換及び議論がなされました。
中でも、現状の精神科医療体制への疑問や、社会の受け入れ態勢の不備(精神
障害者に対する企業の雇用態勢の不備など)についての具体的な問題提起があり、
白熱した議論となりました。

私からは以下の提言をしました。
①統合失調症の当事者を取り込んだ社会を構築すべきだし、その際当事者がいることに
よって会社などの組織がプラスとなる方向性を見出すことが必要。
②医療・処遇に関しても、当事者の意見がもっと反映されるべき。
  
村田 晃 心理学博士(PhD University of Denver USA) ・臨床心理士
       うつ心理相談センター所長 

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村田晃
専門家

村田晃(心理カウンセラー)

うつ心理相談センター

法務省心理技官として25年勤務後、米国の2大学院に15年留学、カウンセリング心理学修士号及び博士号取得。 留学中にうつ病になり精神科病院にも入院。その体験からうつへの関心を強め、以後うつを多面的に研究

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