「希望を持つ」ことの心理学的意味について
前回から始まった、心の健康についての最新のニュースを、英語で発信されているインターネット
の情報を駆使してお届けする連載の第二弾です。
今回は、「体重と心の健康との意外な関係」についてです。
なお、この研究結果は私も会員であるアメリカ心理学会の今月(11月)の会報誌から取りました。
体重の増減、特に増えることに敏感な方は多いと思います。肥満が高血圧や糖尿病などのもと
になりやすいといわれていることから、このことは当然といえます。
ただ、女性の場合は、その他にスタイルといった美容の観点から体重が増えることを気にされる
ことが多いのではないかと思います。
そのような体重の増減に一喜一憂されている女性の方、特に若い女性の方々に、意外とも
思われる海外での研究結果をお知らせします。
それはドイツの環境衛生研究所で行われたものです(International Journal of Public Health, September 2013 からの抄録)。
研究では、「体重と健康」に関連しての生活の質(Quality of Life[QOL])についてのデータを
3,000人以上から7年間にわたり集めました。
その結果分かったことは次のとおりです。
体重の増加は、女性と肥満の男性にとって身体的健康に悪影響を及ぼしたものの、女性は体重
増加に伴って精神的な生活の質(QOL)の増加を経験した。
この傾向は、調査時に既に肥満である女性の間でも認められた。
この結果は言い換えれば、女性は体重が増えることによって、身体的な健康は損なわれても
心理的にはより幸せと感じるということになります。
「女性が、体重が増えて幸せと感じる」という結果は、意外と思われる人が多いと思います。
では、どうしてこのような結果が出てきたのでしょうか。
私自身は次のように考えます。
それは、研究の行われたドイツと日本との文化・価値観の違いの影響が大きいのではないか
ということです。
つまり、ドイツの女性は日本の女性のようには太ることに罪悪感を感じていないのではないか
ということです。逆に、体重が増えることに女性としての充実感や存在感・解放感を感じている
のではないかということです。
このことは、テレビのドイツ紀行番組などでよく太ったドイツ女性を見かけ、また彼女達は太って
いることを特に気にかける風でもなく明るく見えることを反映しているともいえます。
一方日本の女性、特に若い女性は、必要以上に体重が増えることに敏感なように思えます。
このことは私が米国の大学院に滞在していた時、日本からの女子留学生と米国の女子学生の
差を見て痛感させられたことです。
ふくよかな米国の女子学生を見た目には、日本からの女子学生はいかにも貧弱で魅力に乏しく
映りました。それは米国の女子学生に比べて余りにもやせていることが大きく影響していました。
このやせる事への願望は、女性はやせている方が美しいという特定の美的価値観に基づき、
それがマスメディアによるダイエット食品の広告の氾濫で、特に若い女性にますます強く浸透した
のではないかと思います。
ただし、行き過ぎたやせる事への願望は、いわゆる拒食症などの摂食障害につながる危険性
が十分あります。
ですから、過度の肥満になるのはいわゆる生活習慣病の要因となるので避けるべきでしょうが、
かといって体重が増えることに過度に敏感になり気にするのは、精神的な健康面からいって
もっと良くないと思います。
特に日本の若い女性の多くは既にやせ過ぎなのにもかかわらず、なおかつ体重が増えることを
気にしているとしか思えません。
そのような日本の若い女性には、私は他人が恣意的に決めた美の基準にとらわれず、精神的に
自分を解き放して自分なりの美しさを求めてほしい、と願わずにはいられません。
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なおこの内容は、エフエムいみず(79.3MHz) の私の番組、「心に元気を!大人のメンタルヘルス」
(毎週水曜朝8時30分・木曜午後4時30分(再放送)でも今週話しています。
うつ心理相談センター
村田 晃(心理学博士)