Mybestpro Members

村田晃プロは北日本新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

「希望」の心理学

村田晃

村田晃

テーマ:心理相談・カウンセリング

「希望」の心理学について、エフエムいみず(79.3MHz) の私の番組、「心に元気を!
大人のメンタルヘルス」(1月4日水曜)で話しています。

年の初めに当たり、「希望」ということについて心理学の立場から考えてみたいと思います。

実は、希望については心理学では実証的な研究は意外となされていないのです。

その訳は、希望というのは心理学の研究対象として余りに漠然としていているからでは、
と思います。

ただし、実際のカウンセリングでは、希望というのは重要なことと考えられています。
私が米国デンバー大学大学院博士課程在学中に、カウンセリング実習担当の教授は、
相談者(クライエント)に希望を与えることはカウンセリングの重要な目標だと言いました。
また、私がうつに関する博士論文を執筆中に面接した心理学者の一人も同様な意見でした。

しかし、私自身は必ずしもそうとは思っていません。というのは、私は相談者が置かれた
状況も分からないうちから希望を与えることをカウンセリングの目標にしていいか、と思って
います。
場合によっては、相談者に漠然とした希望(希望的な観測)をもってもらうよりも、厳しい
現実認識をしてもらう方が必要な場合があるのではないか、と考えるのです。

ですから、私は、相談者に希望を持ってもらうことをカウンセリングの目標とするよりは、
「肯定的なものの考え方」をしてもらうことを目標とすることがより具体的で現実的では
ないか、と考えます。

この「肯定的にものを考える」とはどういうことかというと、例えばちょうど半分水が
入ったコップがあったとします。これをあなたは「もう半分まで水が入った」と見るで
しょうか、あるいは「まだ半分しか水がない」と見るでしょうか。言い換えれば、水が
入った部分に着目するか、入っていない空っぽの部分に着目するか、です。

更に言い換えれば、可能性がちょうど半分半分の時に、「まだ半分可能性がある」と見るか、
「もう半分しか可能性がない」と見るか、です。

このように、いわゆる客観的には全く同じ可能性なのに(50%ずつ)、それをどう見るかは
人によって違い得るということです。

このような場合に、「もう半分まで水が入った」、「まだ半分可能性がある」と見るのが、
私のいう肯定的なものの見方です。逆に、「まだ半分しか水がない」、「もう半分しか可能性
がない」と見るのが私のいう否定的なものの見方です。

私は、肯定的なものの見方の方が、否定的なものの見方よりもいいと思います。
その理由は、肯定的にものを見ることによって、更に何か新しいことをやろうとする前向き
の気持ちが出て来やすいと考えるからです。逆に、否定的にものを見ると、続けて努力する
気持ちが失せやすい、と考えるからです。

ただし私は、肯定的なものの受け取り方というのは「楽観的」ということと必ずしも一緒では
ないと考えています。

私にとっては、「楽観的」というのはいわゆるリスク(危険性)を正しく認識せずにただ物事
を良い方にばかりとらえるふうに思えます。

とすれば、これは逆に危険なものの見方といえます。
なぜなら100%確実なことというのはあり得ず、物事には必ずリスクが伴うからです。

ですから、単に物事を楽観的にとらえればいいというのは無責任な考え方であると思いま
す。なぜなら、間違った希望を与える事にもつながるからです。

そうではなくて、常に物事のリスクを計算し、その上で物事に前向きに取り組んでいくと
いうのが正しい姿勢だと思います。

言い換えれば、リスクを冷静に計算し、そのリスクを承知の上で(リスクを自分で受け止め
れる覚悟をした上で)行動するのであれば、例え10%の可能性がないことを選んでも無謀
とは言えず、いわば計算された冒険といえるでしょう。

ちなみに、実存心理学の立場からは、物事を自ら「選択」できる自由を持つのが人間の人間
たるゆえんであり、その選択の自由の背景には必ず結果に責任を取る覚悟がいると考えます。

この選択の自由とその結果の責任というのは一心同体であり、人はそれをどこまで自分で受け
止められるかの覚悟の程度によって行動できる範囲が決まるのではないか、と私は考えます。

この考え方は、行動の責任が全て自分にあるという考え方なので、「しんどい」という感じも
しますが、一方、自分の今後は自分で決めれることになり、自分に自信を与えてくれる考え方
と言えます。

まとめれば、単に「希望を持つ」というよりも、リスクを計算した上で「肯定的なものの見方
をする」というのが、具体的・現実的に前向きの姿勢につながり、問題解決につながるのでは、
と考えます。

皆さんはどうお考えでしょうか。

なお、更に詳しい内容はエフエムいみずのインターネットラジオで聴くことができます。
インターネットで聴くには、次にアクセスしてください(木曜日夜にその週の放送が聴ける
ようになります)。
http://www.voiceblog.jp/fmimizu/ バックナンバー第32回

皆さんからの番組へのEメールをお待ちしています (直接、エフエムいみず へどうぞ)。
http://www.fmimizu.jp/

なお、この番組の最後に流れる曲、「心」(釈 敏幸作詞・作曲・唄)については、以下のYouTube
で全曲が聴けます。釈 敏幸さんは、統合失調症を抱えながら音楽活動を続けていらっしゃいます。
http://www.youtube.com/watch?v=c4PXxh3raLU

うつ心理相談センター所長
心理学博士(PhD University of Denver USA)
村田 晃

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

村田晃
専門家

村田晃(心理カウンセラー)

うつ心理相談センター

法務省心理技官として25年勤務後、米国の2大学院に15年留学、カウンセリング心理学修士号及び博士号取得。 留学中にうつ病になり精神科病院にも入院。その体験からうつへの関心を強め、以後うつを多面的に研究

村田晃プロは北日本新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

心理相談・カウンセリングのプロ

村田晃プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼