その6. うつをどう考えるか (四回目)
「うつとは何か~(その2) うつ病の症状」について、エフエムいみず(79.3MHz) の私の番組、「心に元気を!大人のメンタルヘルス」(11月9日水曜)で話しています。
うつをよく知るために、今回はうつの代表的なものである「うつ病」の症状についてお話しします。
なお、前回も述べましたが、うつについての私の基本的な立場は、①うつは誰でもなりうる、②うつはなると苦しいけれど、人生の前向きの転機にできる、ということです。
したがって、うつになっても特に驚かず、逆に、うつの経験を今後の自分の人生にどう生かすかを考える方が意味がある、ということです。
1.うつ病の診断について、まず言いたいのは、ゆううつなどの気分の面だけでなされるわけではない、
ということです。うつ病の診断は、気分に加えて、意欲面・身体面・行動面・思考(認知)面の症状も
加味して多面的・総合的になされます。
また、症状が続く期間も重要であり、症状が最低2週間続かないとうつ病とは診断されません。
2.具体的な症状としては以下のものがあります。
気分面: 落ち込んだ気分(悲しみや空虚な感じ)が一日の大部分で、ほとんど毎日続く。あるいは
周りから見て、涙ぐむなどの行動が認められる。
意欲面: ものごとに対しての興味・関心や楽しむ気持ちがなくなる。
身体面: 急激な体重の変化 (一月の間に体重の5%以上の増減) がある、あるいは食欲の変化
(減退あるいは増大) がある。
睡眠の障害 (不眠あるいは過眠)がある。
著しい疲労感・エネルギーの喪失感がある。
行動面: 落ち着きがなくなり、じっとしていられなくなる、あるいは逆に動きが鈍くなる。
思考面: 思考力や集中力あるいは決断力が著しく低下する。
自分が無価値との思いや、強い罪悪感を持つ。
死や自殺のことを繰り返し考えたり、自殺の試みや具体的な計画がある。
3.ただし、上記の症状が見られても、アルコールや薬物の影響また身体的な病気によって引き起こされた場合はうつ病とは診断されません。
また、肉親など愛する人を失った場合に同様な症状が見られてもうつ病とは診断されません。
4.なお、以上の個別の症状があっても、これらの症状が結果として社会生活・職業生活やその他の日常生活に著しい障害を及ぼしているかどうか、が次に問題となります。
言い換えれば、いくら個別の症状があっても、その人が何とか普段の生活を過ごせていればうつ病とは
みなさない、ということになります。
5.以上まとめれば、うつ病の診断は、気分のみならず、意欲面・身体面・行動面や思考面など、いろいろな角度から多面的になされますが、最終的には当の本人の主観的な判断によるところが大きい、といえます。
(注:上記診断基準は、米国精神医学会「精神疾患の診断と統計の手引[DSM-IV-TR](2000)による)
更に詳しい内容はエフエムいみずのインターネットラジオで聴くことができます。
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なお、この番組の最後に流れる曲、「心」(釈 敏幸作詞・作曲・唄)については、以下のYouTubeで全曲が聴けます。釈 敏幸さんは、統合失調症を抱えながら音楽活動を続けていらっしゃいます。
http://www.youtube.com/watch?v=c4PXxh3raLU
うつ心理相談センター
心理学博士(PhD University of Denver USA)
村田 晃