その6. うつをどう考えるか (四回目)
「カウンセリングの実際~私自身の体験」について、エフエムいみず(79.3MHz) の私の番組、「心に元気を!大人のメンタルヘルス」(10月26日水曜)で、「カウンセリングとは何か」の第6回目として話しています。
カウンセリングの実際について、私自身が受けたカウンセリングの中から一つを選んで述べています。
それは、私が大学を出て東京の新聞社に就職した時のことです。恐らく、初めての大都会での一人暮らし、また長時間の残業のストレスなどが原因したのだと思いますが、私は自分に自信を無くし、また人付き合いがうまくいかないことに悩んでいました。
その時にある人の紹介で一人のカウンセラーと出会い、その人のカウンセリングを受けるようになったのです。結果的にそのカウンセリングの中で私自身の物の見方が大きく変化しました。私は今も、その出会いが私の人生にとって一つの大きな転機であったと考えています。
そのカウンセラーは小和田元彦氏といい、東大の心理学科を出て法務省に入り、少年院長・少年鑑別所長や矯正研修所教官等を歴任し、後に財団法人日本カウンセリング・センターの理事長にもなり、当時の日本のカウンセリング界では第一人者の一人だった方です。(ちなみに、財団法人日本カウンセリング・センターは、日本での最も歴史のあるカウンセリング団体です。)
ただし、私自身は、その当時、その物静かな初老の男性カウンセラーがそんな立派な人とは少しも知りませんでした。とにかく、週一回小和田氏のもとに通い始め、一時間くらいカウンセングを受けました。ところがカウンセングを受けるといっても、カウンセラーである小和田氏自身は殆ど話さないのです。カウンセラーのすることといえば、私の話を黙って聞き、時折私の言ったことを確認したりするだけです。言い換えれば何も助言・アドバイスもくれないし、指示もしてくれない。
しかしながら、不思議なことに、その中で私は自然と、自分自身の物の見方を自分で再点検することになったのです。今振り返れば、人から批評されたり評価されたりすることを気にしなくていい、自由で受容的な雰囲気の中でこそ、おのずと深い自己点検が可能になったのだと思います。
結局のところ、私は、自分が作り出した自己像(自己概念)-「自分の容姿や性格に魅力がなく、人に好かれない内気な性格」-に囚われていたということに気が付いたのです。するとおかしなことに、前はそれほど気になっていた自分のことが気にならなくなったのです。そして結果的には知らない人とも自由に話せるようになり、人からはあなたは社交的ですねとまでいわれたりもしました。(自分ではおかしかったですが。)
後で知ったのですが、小和田元彦氏のカウンセリングのやり方は、米国の心理学者カール・ロジャースの
人間中心的アプローチ(古くはクライエント[来談者]中心療法といわれたもの)に基づいていたのです。
つまり、人は元々成長への可能性・方向性を持っており、したがってカウンセラーの役割は、その本来の可能性を、クライエント自身が自分で再確認・再発見できるような、自由で受容的な場・雰囲気を作り上げることである、という考え方です。
この考え方は、人間の持つ可能性に強い信頼を置く人間観として、私に強い影響を与え、私は現在もなお
基本的にはその立場に立ってカウンセリングを実施しています。
更に詳しい内容はエフエムいみずのインターネットラジオで聴くことができます。
インターネットで聴くには、次にアクセスしてください。
http://www.voiceblog.jp/fmimizu/ バックナンバー第22回
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http://www.fmimizu.jp/
なお、この番組の最後に流れる曲、「心」(釈 敏幸作詞・作曲・唄)については、以下のYouTubeで全曲が
聴けます。釈 敏幸さんは、統合失調症を抱えながら音楽活動を続けていらっしゃいます。
http://www.youtube.com/watch?v=c4PXxh3raLU
うつ心理相談センター
心理学博士 村田 晃