「希望を持つ」ことの心理学的意味について
心理学博士の村田 晃です。
◎前回は、進化論の立場からいうと、うつは自然
が人間に与えた生存のための一方法と考えられ
る、と述べました。というのは、(1)うつは、
その人の目指す目標が非常に危険な場合に、その
行動にブレーキを掛ける役割をする。(2)うつ
は、人が強いストレスの下にある場合に、一時的
に自らを外部の社会から遮断してエネルギーを保
存する働きをする。からです。
ちなみに、進化論の生みの親であるチャールズ・
ダーウイン自身うつになり、だからこそ外部の社
会的事柄に惑わされずにあの有名な「種の起源」
の著作に集中できたと指摘する研究者がいます。
◎以上、私が強調したいのは、うつは人の生存に
つながるプラスの意味があるということです。
ですから、うつになってもそれを単に回避したり
忌み嫌うのではなく、それを直視し、自分の人生
に置ける転機・好機と捉える前向きの姿勢が必要
ではないか、ということです。
これは何も精神力があればうつを克服できると
いっているのではありません。適切な投薬等の
医療的措置や心理カウンセリングの重要性は
もちろんです。
私が言っているのは、「せっかく」うつになった
のだったら、うつを単に否定的に捉えるのではな
く、肯定的に捉えた方が意味があるのではないか
ということです。