今の日本では、不登校生の再出発は難しい
不登校生が増加し、社会問題となってから久しくたちます。この間にもさらに不登校生は増え続け、小学校から学校に行けないという低年齢化までもが進行しました。このように日本で多くの不登校生が現れている背景には、どのような原因が潜んでいるのでしょうか。
戦後の経済成長は、現在の日本の豊かな経済力を築き上げました。しかしその一方では、経済力と経済成長を支えるために、社会において過剰な競争が醸成されたように思います。また、社会全体の価値観が経済成長面に集中し、価値観の画一化が進行しました。その結果、人々の間では「心の豊かさ」が軽視されてきました。これらの社会現象は、もちろん教育現場にも影響をもたらしています。
まず、過激な競争は受験において顕著に現れます。生徒一人ひとりに順位がつけられ、それが元で多感な思春期に自尊心を傷つけられる生徒がいます。学校内での人間関係でも、例えば、学力の高い生徒が学力の低い生徒を、学力が劣っているという一点だけを見て、自分よりも価値が低い人間であるかのように見下してしまう奇妙な序列が生まれることもあります。
スポーツが盛んな学校の部活動においても、競争が過剰になり、レギュラーの生徒が補欠の生徒を自分よりも価値が低い人間であるかのように見下すなど、勉強面と同質の現象が起こることは否めないでしょう。
また、教育の画一化は同質化を生み出し、異質なものを拒む風潮を強めます。個性的な生徒や同質化を嫌う生徒は排除され、留年した生徒や周囲と異なる点を持った生徒も異質なものとして排除されてしまうのです。加えて、画一化は、一部の学校で実施されている厳しい校則や過剰な管理教育が一因であるとも言えます。
経済成長を維持する人材を育成するために行なわれた、短期間で結果を出すことを生徒に求める暗記中心・マークシート式の教育。これが思考力の育成には適さず、好奇心の旺盛な生徒の興味や関心をそぎ、「何のために勉強するのか」といった疑問を感じる生徒が生まれるのは当然のことです。これらの教育姿勢は、高度経済成長が終わった今日も延々と続いています。
現代のように経済の右肩上がりの成長が期待できない時代にあって、大企業の倒産や不安定な雇用といった社会現象が報道されるなかで、無理をしてつまらない勉強をしても将来報われるとは限らないという思考が子どもたちの間に広がりました。その結果、学習の目的の消失と、学習意欲の低下が生徒に現れているのです。
また、長年の経済成長重視の風潮のなかで、人々の間では心の豊かさや、心のつながりが軽視されてきました。さらに、インターネット、携帯電話といった間接的なコミュニケーションツールの普及により、生身の人間関係を構築する能力が十分に育まれず、子どもたちの交友関係も希薄なものとなっているのです。この情が通いにくい表面的な交友関係に、疲れやストレスを感じる生徒も少なくなく、さらに、こうした希薄で貧しい交友関係はいじめの深刻化をもたらしています。
学校に行けなくなる生徒が増える主な原因は、このような子どもたちを取り巻く環境にあると考えます。
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