研修だけでは防げない?仕事と介護の両立支援に必要な“制度設計と運用”とは
企業の経営者や人事担当者の方とお話ししていると、
「仕事と介護の両立支援は福利厚生の一つですよね」
と言われることがあります。
そのたびに私は、こうお伝えしています。
「いいえ、仕事と介護の両立支援は福利厚生ではありません。経営戦略です。」
福利厚生は「あったら良いもの」かもしれません。しかし、仕事と介護の両立支援は、これからの採用難・人材不足の時代に会社を維持するための経営課題です。
私は現役介護者として働きながら介護を続ける一方、これまで150社以上の企業で介護離職防止・仕事と介護の両立支援に携わってきました。
その経験から、今回は「なぜ仕事と介護の両立支援は経営戦略なのか」をお伝えしたいと思います。
「うちはまだ大丈夫」が一番危険
私が今、一番危機感を持っているのは中小企業です。
大企業では法改正を契機に制度整備が進み、仕事と介護の両立支援は人事施策として定着しつつあります。
もちろん課題は残っていますが、「何もしない」という会社は減ってきました。
一方、中小企業では、
「介護する社員はいない」
「まだ先の話」
という声をよく耳にします。
しかし、介護はある日突然始まります。
昨日まで元気だった親が倒れ、翌日から病院や介護サービスの手配に追われることは決して珍しくありません。
準備をしていなければ、社員も会社も混乱します。
本当に失うのは「人」ではなく「会社の力」
介護離職で会社が失うものは、単なる一人の社員ではありません。
多くの場合、介護に直面するのは40代・50代の中核人材です。
長年培ってきた知識、社内外の人脈、お客様との信頼関係。
そうした会社の財産が、一人の退職とともに失われていきます。
しかも本人は
「会社に迷惑をかけたくない」
という責任感から相談せずに辞めてしまうケースが少なくありません。
だからこそ、介護離職防止は福利厚生ではなく、人材戦略そのものなのです。
制度だけでは介護離職は防げない
ここで一つ誤解があります。
「制度を作れば介護離職は防げる」
そう考えている企業は少なくありません。
しかし私は、制度が整っている企業からも数多くの相談を受けています。
制度はある。
研修も実施した。
それでも社員は相談せず、辞めてしまう。
なぜでしょうか。
それは、制度が機能する環境が整っていないからです。
社員が
「相談しても大丈夫」と思える職場づくり。
管理職の理解。
業務の属人化を防ぐ仕組み。
こうした土台があって初めて制度は活きてきます。
今日から始められる介護離職防止
「何から始めればいいでしょうか」
そう聞かれたら、私はまず次の四つをおすすめしています。
介護が始まったときの基本的な知識を共有する
「困ったら相談してほしい」と会社が伝える
「介護を理由に辞めないでほしい」と明確に伝える
一人で抱え込まず、仕事の進め方を一緒に考える
特別な制度よりも先に必要なのは、このような職場のメッセージです。
まとめ
仕事と介護の両立支援は、介護を支援することではありません。
社員が人生の転機を迎えても、働き続けられる会社をつくることです。
そして、その結果として会社は大切な人材を守ることができます。
私はこれまで150社以上の企業で、介護離職防止と仕事と介護の両立支援に携わってきました。
会社の規模や業種によって、必要な取り組みは異なります。
「うちは何から始めればいいのだろう」
そう感じたら、お気軽にご相談ください。


