少子高齢化と医療提供体制

日本の少子高齢化は医療提供体制に深刻な影響を及ぼしている。出生率の低下により将来の担い手人口が減少する一方、高齢者人口の増加で医療需要は年々拡大している。特に慢性疾患や認知症など長期的な治療・介護を必要とする患者が増え、医療・介護資源の逼迫が顕著である。都市部では病床や専門医に偏在が生じ、地方では医師不足や病院の統廃合によるアクセス低下が問題化している。加えて、医療従事者の働き方改革により長時間勤務の是正が求められ、限られた人員で効率的に医療を提供する仕組みが急務となっている。そのため、在宅医療や遠隔医療の活用、地域包括ケアシステムの推進が重要視される。ICTを用いた診療情報共有やAIによる診断支援も期待されるが、導入には制度設計と人材育成が不可欠である。今後は医療と介護の連携を強化し、限られた資源を有効に配分することで、持続可能な医療提供体制を構築することが求められている。