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遠隔画像診断によるインバウンド

嗣江建栄

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テーマ:遠隔医療

中国では、経済の発展に伴い国民の健康意識が高まる中、都市部と地方の医療格差が大きく、都市部の病院に患者が集中している。また、近年、高齢化が進み、がん患者と変形性膝関節症などの整形外科疾患の患者数が急増している。中国では年間412万人の新規がん患者が発見されているが、重粒子治療装置は1台(2017年5月現在)しかなく、2016年の治療患者数は300人台にとどまり、国内のがん患者に対応しきれていない状況である。
また、情報化社会の急速な進展により、中国人患者の意識が、漢方医学から西洋医学に転換している傾向にあり、日本を含む海外への医療渡航へのニーズも高まっている。しかしながら、訪日医療を希望する中国人患者の多くは、病気がかなり悪化してしまった患者、まだは中国で診断し外科手術後放射線治療や化学療法を繰り返して治療して病状が改善されていない患者が多く、訪日しても治療の非適応となる。そこで時間と金銭的なロスを少なくし、かつ治療のタイミングを逃さないためにも、患者のスクリーニング等において医療ICTの活用を推進すべきと考え、日本国内の遠隔画像診断支援の経験を生かし今回の事業を始めた。
事業推進コンソーシアム役割
 ViewSend ICT:代表団体として、北京と東莞のセンターの立ち上げ、関係各団体との契約締結、中国での各種イベントの運営や情報収集を行い、患者募集支援などを進める。また事業管理・運営や各種報告書作成を進める。
相澤病院:中国の病院との患者紹介等に関する手順等の検討、各種イベントでのアピールや情報収集、他の海外プロジェクトの経験からの指導などを行う。
米盛病院:中国で急増する整形外科疾患を扱う米盛病院は、コンソーシアムメンバーとして広安門病院との患者紹介等の協力に関する契約締結、各種イベントでのアピールや情報収集、他の海外プロジェクトの経験からの指導などを行う。
 北京標正和美科技有限公司:中国人ICT人材育成、患者情報暗号化など。
事業推進するための協力メンバー役割
本事業では、協力メインバーとして、北京市と東莞市において、遠隔医用画像システム導入及び中国人のICT人材を育成し、日中間の遠隔医療支援拠点となる日中間遠隔医療支援センター(以下、「センター」)を構築することを目的とする。センターを経由して、日本の病院との間で適正患者のスクリーニングができる環境を構築する。
 本事業でセンター立ち上げの方法を確立して、訪日患者の獲得に見通しが立てば、次の事業拡大に進むことができ、その成果を活用すれば、中国各省におけるセンターの横展開・医療ICT人材育成を通じ、中国国内での遠隔医療普及を図ることが可能となる。また、センターを経由したセカンドオピニオンとして日本人医師による画像診断意見を提供するサービスにより、訪日医療者の集患と適性患者のスクリーニング及び帰国後のフォローアップが実施できる体制の構築が可能となる。
結果
●画像診断意見の状況
2017年7月23日に第1号の中国からの遠隔画像診断の依頼(セカンドオピニオン)を受けて、画像診断を開始した。2018年5月末で89件の画像診断を実施した。民間企業(東莞正信社)が運営を行う東莞のセンターの方は、画像診断依頼の件数が多く、順調に伸びている。
●中国側満足度
 東莞正信社で患者ヒアリングを行った結果、本事業による画像診断意見書(セカンドオピニオン)は、患部をわかりやすく指摘し、丁寧に書かており、患者の満足度が高かった。また、前回画像との比較読影なども行うので、センターの運営委託先である東莞正信社にとっても、同社の事業である健康管理、食事療法の成果の可視化が可能になるなどのメリットもあった。
●中国から日本へ患者紹介の状況
本事業期間中には訪日医療に至らなかった。受入評価は2017年度中が1件あったが、訪日の適用とならなかった。2018年5月本稿親筆時点で、前立腺がん患者が一名来日し、陽子線治療前の精密検査を行い、今後日本のどの施設で治療を受けるかこれから患者様が検討する。今後の見通しとして、後述の検討中の案件があり、今後の訪日医療の拡大が期待できる。
一方で現状では、訪日対象者が重度の患者で高度な治療に限られており、訪日医療対象者規模は大きくなりにくい。訪日医療の対象を広げるには、重症患者の治療のみではなく、より早い段階の高度な検査も対象に含めることが望まれる。

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専門家

嗣江建栄(システム開発)

ViewSend ICT株式会社

米国発祥のシステムを国立がん研究センターとの共同開発により独自の遠隔医療支援システムとして製品化。

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