クロワッサンをネタに・・・心に響く「言葉がけ」とは(後編)
ペップトークは、相手の心に響いてポジティブな発想を引き出し、勇気づけるショートスピーチです。その基本的な考え方のひとつに「ネガティブな状況を、ポジティブに発想変換して捉える」というものがあります。
マネジメントで言えば、「ヒト・モノ・カネ」が足りないというネガティブな状況も、
・一人一人の活躍の場面が多い
・設備を使わなくても出来る方法を考えればよい
・スポンサーを探す機会だ(提携の輪が広がる)
このように考えることで、ポジティブな発想は広がり、組織の発展が望めます。これまでに成功している企業なり個人は、必ずと言ってよいほど、このような発想変換をしながら活躍しています。
心に響く言葉には「段階」がある
先日、Facebookに「ホテルの朝食に出たクロワッサンが・・・固い」という不満を書いたところ、私がパン好きであることを知っている知人たちから早速いろいろな書き込みをいただきました。
①それはきっと、フランスパン(バゲット)だったんですよ!
②そういう時は、ミルクに浸して食べたらいいんですよ。
③日頃、美味しいクロワッサンが買えるお店に感謝しましょうね!
皆さんが私の立場だったとしたら、どの言葉が心に響きますか? 私は・・・せっかくコメントを書き込んでいただきながら申し訳ないのですが・・・①②については、何も感じませんでした。
結論を申し上げるなら、③を読んだときに、近所のお店で美味しいパンが買える日頃の有り難い状況をあらためて思い出しながら、けっこう感動してしまいました。すなわち、心に響いたのです。
①“状況”の変換には無理が生じがち
①の「それはフランスパン(バゲット)だったんだ」と言われても、納得できる人は少ないでしょう。なぜなら・・・事実、フランスパン(バゲット)ではないからです。
昔からよく「心頭滅却すれば火もまた涼し」などと言われますが、よほど滝にでも打たれて厳しい修行をした人でもない限り、発想変換で状況そのものを変えて思い込むのは至難の業です。
よくダイエットで「食べたつもり」「飲んだつもり」になる手法が紹介されますが、実際には食べたり飲んだりはしておらず状況は変わらないので、おそらく多くの人は挫折してリバウンドしているのではないでしょうか。
②“行動”の変換は一歩前進
②の「ミルクに浸したらいいですよ」というアドバイスは、なるほど納得できる部分があります。いわゆる“次善の策”というもので、美味しくないものを多少は美味しく食べられるという一定の成果を導きます。
しかし、そもそも期待していた美味なクロワッサンには程遠いため、満足度は高くはありません。
美味しいと評判の「ギョーザ」を食べようと楽しみに店へ行ったら売り切れていたので、代わりに「春巻き」か「シューマイ」を食べて、とりあえず満足した(ような気になった)というレベルでしょう。
③“次元”の変換は効果的
③の「日頃、美味しいクロワッサンが買えるお店に感謝しましょう」という言葉には、正直なところ「えっ、そうきましたか」と思いました。
固いクロワッサンを食べさせられ不満を抱いたことがきっかけで、日頃は柔らかくてサクサクとした食感のクロワッサンが買える店が近所にあるという、感謝すべき状況が浮かび上がった訳ですから、これは素晴らしい発想変換でしょう。
この事例は、イソップ物語の「太陽と北風」に似ていると思いませんか? 旅人のコートを脱がせるのに、北風はビュービューと吹き付け寒い状態は変わらないのに対して、太陽はポカポカと温めて状態(次元)を変えて脱がせることに成功したのです。
不満をもらしている私に対して、無理に現実とは違うものを連想させたり、違う方向へ行動させるのではなく、「感謝」という高い次元を思い出させてくれた知人と、寒さに凍えている旅人に「温かみ」という望ましい次元を与えた太陽とを重ね合わせると、共通点が見えますね。
さて、後編では、こうした発想変換をビジネス・シーンで応用したらどうなるかについて書いていきます。
職場に不満を持っている自分自身にとって、あるいは不満を持っている部下に対して・・・いろいろな場面で参考にしていただけると思います。