樹木の大きさを縮小させるより良い剪定方法
国土交通省の調査では
街路樹を対象にした国土交通省の調査では、樹高が5m以上10m未満の樹木が最も倒木や落枝の被害が多く、樹高が15mを超えると被害本数は少なかったと報告しています。
2019年5月に開催された国際シンポジウム「世界のアーバンフォレスト政策と樹木マネジメント」では、国土交通省の主任研究官である飯塚康雄氏が「この調査したデータから、樹高が高いことが理由で倒木の可能性が高くなるとは言えない」と仰っていました。
なぜ低い樹高の樹木は倒木の被害が多いのか?
一般的に樹木は枝が伸びている量と同程度の根を伸ばしています。したがって、樹高が高い樹木は根の量が多く、健全な根が樹木全体を支えています。
本来の樹高よりも大幅に低くなっている樹木は、強い剪定で高さを抑えられていると考えられます。特に街路樹では剪定の予算を軽減させるために、ぶつ切りのような非常に強い剪定方法がよく行われ、この方法は樹木を支える根や幹などの重要な器官を衰弱させます。このような剪定方法を継続することが、樹木の倒木被害をもたらす原因の一つと考えられます。
樹木は強く剪定されると、根の先端が腐朽・枯死して根の張りを弱め、強い剪定が繰り返されると樹木全体を十分に支えることができなくなります。また、大きな切口へは腐朽菌が入って幹の芯を腐らせ、幹の空洞化を引き起こし、幹が折れる結果を招きます。
樹木の大きさを縮小させる剪定をすることは、風圧の影響が少なくなるため倒木の予防になりますが、場合によっては倒木を引き起こす原因になることもあります。倒木を予防するための最も大切な事は、樹木の根を健全に成長させること、幹の空洞化や入り皮など、樹木に重要な欠陥がないか診断し対処することが大切です。
樹木(庭木)が大きくなり過ぎて困る場合は、将来的な樹高が3m、5m、10m程度などと比較的低い樹種へ植え替えれば、強く剪定する必要性がなくなるため、樹木本来の成長バランスが保たれ、安全性が高まります。
樹木を植え替えることができない場合は、剪定を年に3~4回程度と頻繁に行い、1回の剪定で枝葉を切り取る量を少なくして、根や幹への負担を軽減することが理想です。
庭木におすすめの樹種 美しい樹形を永く楽しめ、剪定管理が簡単な低木や高木
※引用文献 街路樹の倒伏対策の手引 第 2 版(国総研のホームページから閲覧できます)