「働きやすさ」VS「働きがい」~ES調査の求めること~
令和3年6月1日より食品衛生法が改定され、新たに「HACCPに沿った衛生管理」が義務化されます。一般の飲食店に関しては、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理を行わなくてはなりません。HACCPとは、Hazard Analysis and Critical Control Pointのことで、微生物や異物などのトラブルを分析して、最重要な加熱工程などの温度や時間などを管理することを言います。もう少しわかりやすく言うと、一般の衛生管理は「店舗全体」に対して行うものに対し、HACCPは「各商品」ごとに安全性を担保することです。
食中毒菌が好きな「水分」「栄養」「温度」
冒頭の写真は、最近5年間の食中毒事故の原因菌の推移です。よく聞かれるサルモネラ菌やブドウ球菌などの細菌に比べ、圧倒的に「アニサキス」「カンピロバクター」「ノロウイルス」が群を抜いています。この菌を防ぐ対策をすれば、多くの食中毒を無くすことができるのです。
食中毒菌の大好きな要素は「水分」「温度」「栄養」です。細菌は水のあるところを好みます。ですから「乾燥」すれば死滅するのです。これが一番効果的です。しかし、多くの飲食店の厨房は水分が多く、乾燥できていることろは少ないのです。器具や食器などは棚、テーブルなどに物を直置きせず、必ず簀子状のものの上に置いて乾燥させます。熱湯で煮沸すると、その後は乾きやすいのでこの方法も効果的です。たったこれだけのことで防げるのです。
食中毒菌の繁殖しやすい温度は人肌の36℃です。この温度を避けるために、冷凍、冷蔵庫の温度管理や、加熱温度の管理をします。HACCPの考え方では、この温度管理に重点を置きます。特に肉製品は、中心温度を85℃で1分間加熱します。これができているかを確認し、記録しておくことが求められます。
食中毒菌は食べ物に付着して生き延びます。すなわち、厨房に食事の残り物が残っていない状態、綺麗に清掃された棚、冷凍冷蔵庫内であれば繁殖はしません。ポイントとしては、「生ものを触った後は他の物を触らない」「原料、仕込み品同士が触れないよう保管する」ことです。要は「隔離」すればいいのです。
「水分」には乾燥を、「温度」には加熱と冷却、「栄養」には隔離が効果的です。
HACCPは「計画」「実施」「記録」
HACCPの考え方は、「いつ、どのように、問題があったらどうする?」という計画することと、商品ごとの工程をしっかりとチェックする実施項目を明確にし、「いつ、どこで発生したか?」を判明させるために記録を取ります。これを1日の中でどこで誰が実施するのかを決めていくことが、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理になります。
具体的なやり方は研修で伝えていますが、基準に基づき「衛生管理計画」を作成し、従業員に周知徹底を図ります。必要に応じて「手順書」を作成し、衛生管理の実施状況を「記録」し「保存」します。「衛生管理計画」と「手順書」の効果を定期的に振り返り、必要に応じて内容を見直すようにします。この基準書を全員で守っていけばいいわけです。
加熱せず冷蔵品をそのまま提供する料理(刺身等)、加熱して提供する料理(ハンバーグ)、加熱したものを一旦冷却して再加熱して提供する料理(カレー)ごとに料理を分けて、それぞれに対し1日の中で工程管理のチェックをいつやるかを明確にしていきます。
感染症対策は従業員の意識改革
店頭から入口での掲示物やアルコール消毒液の設置など、様々な対策が取られるようになりました。しかし、従業員の意識改革が進んでいないと、入口のアルコール液の前もお客さまは素通り、店内でもマスクせず会話、ソーシャルディスタンスは不十分という光景を良く見ます。
お客さまへの注意喚起のために、お願いだけではなく接客での配慮が不可欠になります。そのために、まず従業員の感染症の意識を高める必要があります。従業員の健康管理はその一つでしょう。健康管理帳に、「検温」などの単語ではなく「今日の検温は何度でしたか?もし37℃以上あれば店長に報告して退社してください」などと書き、読み上げながら自己チェックすることをお勧めします。他にも、意識を高めるやり方が多くあります。
意識改革のために接客でのお客さまへの配慮の言葉も練習すると良いでしょう。例えば「個室の入口ドアは開けるべきか?」という店長からの質問に対し、私はこう答えています。「お客さまに『開けておきますか?』と声をかけ選択肢を持たせると良いでしょう」というような感じです。「換気のため開けてください」というお願いよりも配慮が窺え効果的です。
6月の法改定まで、再度飲食店の衛生管理を見直し、感染症対策への意識を高めていくことが求められます。
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