CS向上のカギは‟ベネフィット・カスタマー”「顧客の利益創出」
ある食品スーパーが新規オープンに向けて、新しく採用したパート・アルバイトに対して接客指導をしていました。100名ほどになるでしょうか、全員が集まり笑顔の作り方、挨拶の仕方、お辞儀の角度などを一生懸命に練習しています。店長のビジョンである「明るく元気でお客様の健康のお手伝い」をもとに、溢れるほどの笑顔で挨拶の大合唱です。新しくお店ができる時には、よく見る光景ですね。
「マニュアル」を叩きこむ弊害
さてオープンの日がやってきました。朝礼が始まります。皆さんの表情が笑顔から緊張に変化していきます。店長の訓示から始まり、連絡事項を伝え、全員で挨拶の再確認です。しかし、どうも研修でやった笑顔からはほど遠い、険しい表情になっています。オープン準備作業が気になるのでしょうか、少し焦っているようにも見えます。店が開きお客様が続々と入店してきます。通路にはものすごい人の波、従業員はお客様に圧倒され、挨拶どころか商品の品出しと整理整頓作業でいっぱいになっています。よく見ると、どの従業員も声だけは聞こえるのですが、研修でやっていた笑顔溢れる挨拶ができず、お辞儀も伴っていません。
この光景、経験がある皆さんでしたら想像できますよね。実はマニュアルを叩きこんで教えていた弊害なのです。
まず前提として、「私たちの役割り」とは何かという教育が欠けていたと考えられます。次に、笑顔の出し方については、表情の作り方は練習するものの、笑顔そのものの必要性が理解できずに教わっていたのです。また、挨拶については「どこで、誰に、何のために」という考え方が理解できずに、形だけ教わった結果です。開店当日には全員で挨拶練習をしていました。これもいわゆる形だけになり、ある意味自己満足で「気合を入れよう」的な形式だけになっていました。要は、身にならない研修が行われていたのです。これが、マニュアルを叩きこむことの弊害です。もちろん、マニュアルは基準(ルール)という意味で大切ですが、目的や考え方の指導が欠落してしまうと、残念ながら無駄なことをしているのと同じことになっているのです。
「モラル」教育の大切さ
モラルとは、道徳のことです。相手を人として尊重しどう振る舞うか、素行の良い振る舞いとでも言いましょうか、正しく然るべき行動を取ることが求められます。簡単に言いますと、マニュアル通りに挨拶をしても、お年寄りへの挨拶の仕方や、子供相手の挨拶の仕方を使い分けたり、その時の場面によって挨拶の深さや、親密さが変わってくるものです。私は、その指導をする場面がとても少ないと感じています。
おもてなし経営研究所の接客指導では、人と接することの大切さや、自分達の働く意義をまずしっかりと確認していきます。ほとんどがディスカッション形式です。次に笑顔の必要性と挨拶の目的です。これもOK/NGを使い分けながら実践形式で進めていきます。最後に当日の朝礼では、全体での合唱ではなく、少人数で「今日はどう動くことがビジョンを達成できるか」について時間をかけて話し合いさせます。これがモラル教育だと思っています。接客経験のある方もアルバイトが初めての方も、お互いが融合しなるほど感を持ちあえることが、全体を統率できることになるのです。
「モラル」教育が必要なワケ
マニュアルのメリットは、「統一性、分かりやすさ、ブレない」などの効果があります。逆にデメリットは、「応用が利かない、形だけになる、心がこもらない」となるでしょう。「モラル」のメリットは「応用が利く、心がこもっている」と、マニュアルのデメリット部分に効果がでます。
さて、指導が難しいのはどちらでしょうか?
お分かりだと思います。モラル指導の方が応用を必要とするので難しいのです。ほとんどの指導の場面で、この難しい部分を避けて、簡単なマニュアル指導で終わらせてしまっているのです。新人がしばらくして応用が利かない動作をしていると、「ここはそうじゃないでしょ!」と叱っている場面を見受けます。まさに、モラルを欠如して指導した結果が出てしまったので叱ってはいけないのです。
この難しいモラル指導を強化することこそ、人の成長であり、お客様に伝わる接客につながっていくのです。おもてなし経営研究所では、その大切さについて指導する側へのコンサルティングや研修に取り組んでいます。新人研修のこれからのあり方を見直してみませんか?
お問い合わせはこちらからどうぞ→組織活性化プログラム