社員が定着しない理由はなに?成功企業が人材定着のためにやっていること
厚生労働省の調査によると、平成11年には204.1万人だった精神疾患の患者数が平成26年には392.4万人とほぼ倍に増えています。
特にうつ病患者数の伸びは大きく、平成11年に1万1千人から平成26年度には6万8,800人と約6.2倍となっています。
さらに最近では今までのうつ病とは異なるイメージの「新型うつ」が増えていることをご存知でしょうか?今回はこの新型うつ病に注目をして、これまでのうつ病との違いや新型うつ病への会社としての対応策についてご紹介します。
「新型うつ」とは
新型うつの説明をする前にそもそも「うつ病」とはどういった病気なのかを簡単に説明いたします。
うつ病を一言で定義することは非常に困難ですが、一般的には社会環境や自分の身の周りの環境変化に上手く対応できないことで、不安や焦燥にかられ自責的になってしまい、不眠、食欲不振、精神活動の減退といった症状を引き起こす病気です。
通常、こうした状態になった場合、規則正しい生活をすることで、時間の経過とともに改善していきます。しかし時間が経過しても症状に改善が見られない、もしくはさらに悪化して日常的な生活に支障をきたすといった状態を「うつ病」と呼んでいます。
これに対し新型うつですが、実は「新型うつ」という病名は実際にはありません。最近、こうした傾向の人が増えていることを、ひとくくりにしてメディアがつくった造語です。
これを前提としたうえで「新型うつ」の特徴は、仕事やプライベートにおいて自分にとって都合の悪いことに対面すると急に気分が沈み込んでしまうといった状態が続くという点です。また症状がひどく休職した際でも、旅行に行ったり、自分の好きなことをしたりする時には元気になるというのも、大きな特徴といえます。そしてもうひとつの大きな特徴は、年齢です。
これまでうつ病に罹患する患者の多くは35歳から64歳のいわゆる中高年が中心でした。
冒頭で触れた厚生労働省の調査でも、躁うつ病を含む精神障害で入院する患者は15歳から34歳の1,600人に対し、35歳から64歳は1万400人。外来患者は1万3,400人に対し4万6,900人と明らかに中高年のほうが多いという結果が出ています。
しかし新型うつは20歳から30歳前半の若年層に多い傾向があります。
「新型うつ」発症による一人当たりの損失額は?
仮に新型うつと判断され、休職することになれば会社としてどの程度の損失を被ることになるのでしょう。
通常、休職中の社員には、平均日額の約3分の2が1年6ヶ月間支払われます。例えば年収300万円の社員が1年6ヶ月休職すれば、その社員には300万円を支払うことになります。しかし実際の損失はこれだけではありません。
慢性的な人手不足の日本社会において、休職者が出たからといって簡単にその代わりを入れることはできません。仮に入れることができたとしても、その代わりの社員を入れるためのコスト、教育するためのコストがかかります。そして代わりの社員を入れられない場合は、それ以外の社員がカバーすることになり、その残業代がかかります。
一般的にこれらのコストを合計すると、休職中に社員に支払う給与の3倍、この場合で言えば900万円がかかることになります。これは特に中小企業において非常に大きな損失です。
「新型うつ社員」がでた場合の対応
新型うつ社員が出て、休職をしてしまったとなった場合、真っ先にやらなければならないことは、同じ部署に残った社員に対するケアです。
新型うつは、その症状からも本人以外の周りからはなかなか理解されにくい病気です。
場合によっては単なるわがまま、自分勝手なだけと思われてしまい、そのしわ寄せが自分たちに回ってくることが不満となり、モチベーションが下がってしまうといったことも考えられます。
もしそうなれば、連鎖反応によって新たに新型うつになる社員が出てしまう恐れもあり、さらに会社の損失は大きくなります。
そうした事態を防ぐには、休職した社員の穴埋めをした社員を高く評価する制度を設ける、新型うつを正しく理解するための情報共有を行う、外部カウンセラーを活用し、残った社員のケアをするなどが効果的です。
「新型うつ」を発生させないための防止策
最後に新型うつを発生させないための防止策についてご説明します。
1.ストレスチェックを定期的に行い、社員のメンタルヘルスに不調をきたさないようにする、またその予兆を見逃さないようにする。
2.叱咤激励は逆効果になる場合があるため、基本的に「認める」ことを前提に小さな成功体験を積み重ねることでやる気を出させるといった方向で教育をする。
3.遅刻や無断欠勤といったことに対するルール、処分を予め明確にする。
4.腫物に触るように接する、常にそばにいて監視するといった特別扱いをするのではなく、一定の距離を取りつつ、いざという時に手を差し伸べられる状態を保っておく。
5.外部カウンセラーを活用し、専門家の立場からアドバイスをする。