不動産投資のこれから
2023/6/27の日経新聞朝刊に「マンション節税防止へ 相続税、高層階の負担増~国税庁、算定に実勢価格を反映~」という記事が掲載されました。
相続税評価額は原則「時価」ではあるものの、不動産に関しては財産評価基本通達で「土地は相続税路線価、建物は固定資産税評価額で評価する」とされています。
時価ではないけれど、この通達に基づいて評価していれば基本的にはOKとされるものです。(例外もあります)
通達は、法律ではありません。税務署が財産評価をする際に「こう扱うべき」という指針を示したもので、国税庁のHP上にも掲載されています。
マンションを相続する場合の相続税額の算出の際には、土地部分(敷地権など)と建物部分とを分けて考えます。
建物については、固定資産評価証明書を取得するとそこに評価額が記載されています。
土地については、そのマンションの敷地全体に対し相続税路線価を算出し、個々の区分所有権の割合を掛け、相続の対象となる部分の評価額を算出します。
今回の見直しでは、土地建物の「相続税評価額」と「実勢価格」との乖離が大きい場合に補正する、という内容です。
では、実勢価格はどう算出するのか?
実勢価格というのは、「実際に市場で売却する場合の価格」ということになります。
不動産の価格はお店で売っている商品と違い、同じものは一つとしてありません。立地や築年数によって異なるのはもちろん、同じマンション、同じ面積、同じ間取りで隣同士であったとしても価格も同じとは限りません。
マンションの価格を形成する要素には様々なものがあります。
例えば、築30年以上のマンションでも、管理が行き届き、リフォームなどを施されていれば、ほかの住戸より高く売れる可能性があります。
売買が成立するまでの間には価格交渉もあるかもしれません。最終的には買い手がついて初めて価格が決定することになります。
これまで税務署は、個々のマンション、個々の住戸の個別の事情を加味して評価額を決定するのは、非常に煩雑であったことから、財産評価基本通達を用い評価方法を一元化してきたといえます。
確かに、マンションの評価額と実勢価格との乖離の大きさは是正されるべきでしょう。
同じ価格で購入した一戸建てとマンションであるにもかかわらず、戸建ての方が評価額が高くなるのは不公平と言えると思います。
しかし、今回の見直しでは、
① 築年数や回数などに基づいて評価額と実勢価格の乖離の割合を計算
② 乖離幅が1.67倍以上の場合、従来の評価額に乖離率×0.6を掛ける
この手順で評価額を引き上げるとのこと。
戸建の乖離率が1.66倍であることからこれにそろえるように考えられたようです。
この方法で評価を算出するためには「実勢価格はいくらなのか」を算出する必要があります。
納税者の立場から言えば、なるべく実勢価格は安い方が有利、課税側はなるべく高い方が税額が上がります。
2023年中に財産評価基本通達を改正し、2024年1月1日以降の相続からの適用を目指す、とのことですが、どのような根拠、手法で「実勢価格を算出すべきか」についてその指針を示していただかないことには、相続人は相続税表価格が算出できません。
国税庁有識者会議の資料では、
「現行の相続税評価額を前提とし、市場価格との乖離要因(説明変数)から乖離率を予測、その乖離率を現行の相続税評価額に乗じて評価する。この方法であれば、乖離要因を説明変数とすることから、相続税評価額と市場価格の乖離を補正する方法として直截的であり、乖離要因に基づき補正すれば足りるため執行可能性も高い。」
としていますが、個別の価格変動要因を含めてどのように乖離率を予測するのかがわかりません。
さて、どうなることやら。。。
今後の動向に注目です。