相続対策の基本(7) 相続発生から相続税申告までのスケジュール

西山広高

西山広高

テーマ:相続

前回、「相続財産としての不動産の評価(2)」として、相続財産の評価についてタワーマンションなどを活用した事例も交えて簡単に説明しました。

今回は相続手続きのスケジュールについてお伝えしたいと思います。

相続手続きの全体スケジュール




相続発生、まず何から始めるのか


相続はそう何度も経験することではありません。多くの方が身内にご不幸があった場合の相続手続きについて未経験あるいは1度だけの経験しかない方が多いと思います。
身内のご不幸が発生した直後は葬儀などを含めやらなければいけないことがたくさんあり、また、精神的にも大きな負担があることと思いますので、なかなか相続に正面から向き合えないのも理解できます。

しかしながら、相続手続きには期限があります。

相続手続きは自分で行うことも可能ですが、多額の資産がある場合や、不動産、非上場会社の株式など「資産評価」が必要な場合には税理士に依頼したほうが良いでしょう。ミスがあった場合に追徴課税されることがあることや、、後日あるかも知れない税務調査への対応などを考えるとにわか知識では対応しきれません。

相続手続きの手順


1.遺言書の有無の確認

遺言書がある場合、この先に行う遺産分割協議が不要になる可能性もあるため、まず行うべきは遺言書の確認です。
公正証書遺言が作成されていれば公証人役場で確認することも可能ですが、自筆証書遺言や秘密証書遺言で作成されていた場合はなかなか見つからないこともあります。
見つかった遺言書が自筆証書遺言、秘密証書遺言の場合、家庭裁判所の検認を受ける必要があります。
ただし、この「検認」は遺言書が定められた形式に基づいて作成されているかどうかを確認するもので、内容についてお墨付きを与えるものではありません。
分割内容について、相続人に異議・不満がある場合には相続人間で分割協議を行う必要があり、遺言書と異なる配分で分割する場合にはやはり遺産分割協議書の作成が必要です。

2.相続人の確定

同時に「相続人の確定」、すなわち、「相続人は誰か」を確認を行う必要があります。
最近は、核家族化の進行と離婚・再婚などの増加、それに伴う前の配偶者との間の子の存在などさまざまなケースがあります。
相続人を確認するためには戸籍を被相続人(=亡くなられた方)が生まれた時のものから調べることになります。
戸籍は本籍地に保管されますので、もし途中で本籍が変わっていたりした場合には以前の本籍があったところの役所で調べなければなりません。
自治体が統廃合され、元の本籍があった頃と名称が変わっていたりすることもあります。

3.資産の把握

次に行うのは資産の把握です。
以前のコラム「資産の把握」でもご紹介した通り、亡くなった人の財産が把握できなければ相続手続きは進められません。
また、相続放棄や限定承認の申述期限は相続発生から3か月後ですが、、財産の状況がわからなければ放棄や限定承認を行うべきか否かについての判断も難しいと思います。
被相続人が財産目録を作成していれば確認作業もスムーズに進むと思いますが、残された人が財産目録を作成するのは手間も時間もかかりかなりの労力を要します。

4.準確定申告

相続発生から4ヶ月以内に「準確定申告」を行います。「確定申告」は毎年2月から3月の間に前年の所得等を申告し、所得税の納付や還付を受けるための手続きですが、「準確定申告」はその年の初めから亡くなられた日までの所得について申告するものです。

5.遺産分割協議

遺言書がない場合には相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
最近は被相続人が高齢で相続人も高齢者になっているケースも珍しくありません。相続人が海外など遠方に住んでいたり、相続人の一人が認知症になっているなど、相続人全員でなかなか話し合う機会が作れないケースもあります。
もし、10カ月以内に遺産分割協議が整わなかった場合には、とりあえず法定相続分通りに相続されたものと仮定し相続税を納付する必要があります。
納付しなかった場合には延滞税も発生してしまいます。
その場合には、全ての財産がいったん共有ということになりますので、その後もすべての相続人の了承を得なければ処分することもできません。
また、配偶者の税額の軽減や小規模宅地の特例など、相続税を減額できる制度も使えないので、多額の相続税を納める必要が生じることがあります。
相続税の納付は現金で行うのが原則ですので、そのための資金手当ても必要になります。

6.相続税の申告・納付
相続税の納付が必要な場合のほか、相続税が結果的にゼロになる場合でも特例の利用などを行う場合には税務署へ申告を行う必要があります。
これらの場合にはミスがあると後に追徴課税されたり、税務調査が入った場合の対応のことなどを考えると、税理士に依頼したほうが良いでしょう。
但し、全ての税理士が相続税をはじめとした資産税に詳しいわけではありません。
相続において、資産評価などは経験の豊富な税理士に依頼することによって評価額を大きく下げることも可能なケースがあります。
申告の期限は相続発生後10か月ですが、相続税が発生する場合の納付の期限も同じです。前述のとおり納付は現金で行うのが原則です。期限までに納付のための資金を準備するところまで行わなければなりません。

まとめ


このように、相続発生後はやらなければいけないことが目白押しです。10カ月あるから、と思っていたらあっという間に過ぎてしまった、というケースもよくあることです。
多くの資産をお持ちの方は、相続対策も検討されていることが多いのですが、「うちには大した資産は無いから」「うちは兄弟の仲が良いのでもめることはない」「相続なんてまだまだ先のことだから」などと考え、何も対策をしていない場合にもめることが良くあります。
相続対策をしておかなかったばかりに、家族がもめてしまうのは亡くなられた方にとっても本意ではないでしょう。
相続のために準備しておくことは結構な作業量になります。ましてや亡くなられた後で遺された人がそれを進めようとすると、亡くなられたご本人以上に苦労し、戸惑うことは間違いありません。
相続について、誰に相談すべきかは、その方の資産や家族構成、意向によっても異なります。
相続が発生した場合に何が問題になりそうか、どうすれば事前に対策できるかを相談できるところはあまりありません。
特に相続において「不動産」の扱いが原因でもめる割合は非常に高くなっています。
私が代表を務める西山ライフデザインでは、どのようなところにもめるリスクがあり、どのような対策を検討すべきか、からご相談をお受けし、円満に次の世代に資産を引き継ぐためのお手伝いをさせていただいています。
問題がありそうな場合にはその分野に詳しい専門家もご紹介します。
少しでも不安をお感じであれば、お気軽にご相談ください。

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