他人ごとだと思っていませんか?
前回、「相続財産としての不動産の評価(1)」として、相続財産を評価するときの方法を簡単に説明しました。
今回は賃貸不動産の評価についてお伝えしたいと思います。
相続税対策を考える際に重要なのは「相続税評価額を下げる事」です。
そして、相続税評価額を下げるのに不動産を活用する方法は効果的です。
数年前から相続税対策としてタワーマンション投資が注目されています。
これは、実勢価格、すなわち不動産の取得価格と相続財産として評価額との差額に注目した対策方法だからです。
あまりに行き過ぎた相続税対策や、不公平感を緩和するため、平成29年税制改正でタワーマンションにおける固定資産税評価の方法を見直すことになりましたが、見直し後でもその効果は決して小さくないといえます。
不動産の相続税評価
不動産の相続税評価は土地と建物に分けて行います。
土地は毎年7月に公表されるその年度の路線価をベースに評価します。
路線価は概ね実勢価格の8割程度に設定されています。
建物は固定資産税評価額で評価されますが、時価の6~7割程度に評価されることが多いと思われます。
タワーマンションの場合、特に高層階では4割程度に評価されることもあります。
(ちなみに、これまで、タワーマンション(最高高さ60mを超えるもの)の固定資産税評価額について高層階、下層階にかかわらず1㎡当たり単価は同じでした。が、平成29年度の税制改正ではこれを高層階ほど高くし、下層階は低く評価するよう見直されることになりました。)
特にマンションの場合には価格に占める建物代金の割合が大きいため、戸建て住宅以上に評価額が下がります。
賃貸不動産の相続税評価
さらに、不動産を賃貸用とした場合にはさらに評価額が下がります。
土地は「貸家建付け地」として評価をするので、借地権割合を差し引きます。
借地権割合は前回のコラムでもご紹介した「路線価図」で確認することができます。
数字の後に振られているアルファベットでA~Gのいずれかが表記され、それぞれ90~30%と示されています。
都内の住宅地の場合、70~60%程度のところがほとんどです。
相続税評価額は「更地の評価額 ×(1-借地権割合×借家権割合)」を掛けた額となります。
借家権割合は30%、借地権割合が70%のところでは、21%減額されることになります。
建物は賃貸用不動産として固定資産税評価額に対し(1-借家権割合(通常30%)×賃貸割合)で評価されますので、30%減額です。
仮に、下記の様なタワーマンションの評価額を見てみましょう。
事例(某タワーマンション)
取得価格 1億円(土地 2000万円、建物部分8000万円)
土地路線価 実勢価格の80%、借地権割合70%
固定資産税評価 取得価格の50%
土地評価
2000万円×路線価0.8×(1-借地権割合70%×借家権割合30%)=1264万円
建物評価
8000万円×固定資産税評価50%×(1-借家権割合30%×賃貸割合100%)=2800万円
合計
1264万円+2800万円=4064万円
もし現金で1億円を現金で持っていた場合に比べ、1億円-4064万円=5836万円の評価減になります。
小規模宅地の特例
このように賃貸している不動産は「賃貸用宅地」として面積に上限はありますが、小規模宅地の特例の適用が受けられるケースがあります。
適用できた場合には土地代がさらに50%分減額され、評価減は6568万円にもなります。
これに税率を掛けた金額が節税になることになります。
以前にもお伝えした通り、相続税は評価額合計に対し資産が多いほど税率が上がる「累進課税」です。
資産評価額が減ることにより税率も下がり、大きな効果が得られます。
不動産による相続税対策の注意事項
以前からお話ししている通り、相続対策と相続税対策は違います。
相続税が下がることはそれだけ多くに資産を次世代に引き継げることに繋がりますが、タワーマンションやアパートの様な不動産を相続する際、複数の相続人間でもめ事の種にもなりかねません。
・不動産は相続時にもめやすい資産出ることを理解しておく。
自宅や投資用不動産が相続財産に中に含まれている場合、不動産を共有で相続することは後々揉める種になります。また、今日お伝えしたような家賃収入を生む不動産を相続人みんなが欲しがった場合には分割協議でもめそうです。
・これからの需要も見越した立地、物件を選ぶこと
これから日本は人口が減少していくことが確実です。物件によっては賃貸したいが入居者が入らない、というケースもあり得ます。
・高騰したマンション価格に注意
2013年頃からマンションの価格は高騰を続け、この4,5年で1.3倍くらいの価格になりました。特にタワーマンションは値上がりが顕著です。仮にこのマンション価格がバブル価格であったならば、30%くらいの値下がりがあっても不思議ではありません。
不動産を活用した相続対策を行う場合、相続発生後に誰が相続することにするかや、物件の立地、将来にわたっての需要、価格予測なども十分に検討して取得、実行すべきだと思います。