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安達昌人プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

●POP広告を筆(毛筆)で描く

安達昌人

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テーマ:誰でも手軽に筆POP

◆筆は日本人になじみの文房具

筆(毛筆)は、日本人にとって、昔から文字や絵を書く文房具です。筆は「墨」「顔料」をつける「穂」の部分と、手に持つ「軸」部から出来ています。毛筆にはうさぎ、たぬき、きつね、鹿、馬、犬、羊などの動物の毛が用いられ、軸は竹が多く使われています。かな・漢字混じりの日本字では、書道の振興によって、また絵画の発展とともに、多様な筆が生み出されてきました。
穂の長さによって「長鋒」「中鋒」「短鋒」に分かれ、穂の大きさにより「大筆(太筆)」「小筆」の分類もあります。その他の筆として日本画用の細い線を描く「面相筆」、ぼかしを入れる場合や特太文字を書く「隈取り筆」、彩色に用いる穂先が平らに揃っている「平筆(塗り筆)」などとさまざまです。
 日本ではマーカー(フェルトペン)が普及する以前は、長い年月にわたって、手描きPOP広告に筆が使われ、墨汁やポスターカラー(ニッカのネオカラーなど)による作製が店頭を活気づけました。
しかし、今やまた毛筆が見直され、和風の店頭ばかりでなく各所に使われて、マーカー作成とは違う魅力と訴求力をもつ筆POPが活躍している状況です。穂先を洗って顔料を落とせば、繰り返し使えることも重宝です。
ここでは、そうした筆POPの例を紹介しましょう。


◆筆ペンを使ってPOPを作成

もっとも気軽に使えるのが「筆ペン」です。筆ペンは1973年に発売され(セーラー万年筆)、手軽に使えることと、特に年賀状の宛名書きで普及し、各社も相次いで開発して品質も向上しました。細いナイロン繊維による人造筆で、動物の毛の筆に比べて、コシの強さと弾力性があり、運筆の滑りが良いのが特長です。
しかし、年賀状の宛名書きがパソコン入力となり、筆ペンを使う人は減少。ただし、最近はソフトでおしゃれな感覚で、和風感覚のPOP広告などに活用され、カラー筆ペンなど豊富で、カリグラフィやイラストに使われて、欧米でも高い人気です。
ここでは、筆ペンを使ったPOP講習会です。


◆筆ペンのフリー書体の運筆いろいろ

書道の書体には、本来の基本書体(楷書、行書、草書など)と、フリー書体(基本以外の書体や創作書道など)があるようです。基本書体は近年の「美文字」ブームで人気を博しております。POP広告はどちらでもよいですが、フリー書体であれば、書道の基礎を習っていない人、不得手な人でも簡単に取り組めるでしょう。
楷書のように運筆に強弱や筆勢をつけず、滑らかに筆を運びます。また、筆の先端や根元まで押しつけた筆圧で、一本の筆ペンで細い線・太い線が描けます。横線や縦線、波型やコイル線、はねや渦巻きなど、自由に線を引いて筆の触感に親しみましょう。


◆筆ペンによるフリー書体の例

フリー書体には、特に決まった法則はありません。楷書などの規則(起筆、送筆、収筆など)から離れ、自分の持ち味で表現して良いでしょう。ただし、情報伝達の媒体であるPOP広告は、読みやすさが大切。あまり癖の強い字体は、読みにくいものです。
本来、楷書や行書、草書などの筆文字は、縦に書かれる書体ですが、横書きが多いPOP広告では、文字間を詰め、文字のサイズをほぼ同じほどに揃えると読みやすくなります。また、ぐらぐらと揺れないように、文字列の下線を整えると見やすくなるでしょう。


◆筆ペンによるPOPカードの事例

ここでは、サービス業の理容店のPOPカードの例(A4判)です。見やすさ・読みやすさを意識して、中心になる文字は大きく、その他のコピーは小さくなど、コントラストを付けて表現しています。墨一色では単調なので、ワンポイントイラストやカラーペーパーのコラージュ(貼り付け)などでカードのデザイン化を図っています。


◆筆ペンによるカリグラフィと手描きチラシ

カリグラフィ(calligraphy)は、いわば欧風の書道です。基本的には専用のペンで書きますが、筆ペンでも自由に表現できます。技法としては、筆ペンを右斜め下の方向に傾けた一定の持ち方で書けば、同じタイプの字体が綴れます。POP広告や手描きチラシ(ハンドビラ)に、カリグラフィを活かしておしゃれなイメージづくりが図れます。


◆筆(毛筆)を使って商店街の有志でPOP講習

絵皿にポスターカラーを水で溶き、丸筆、平筆、また筆ペンなども使ってPOP広告講習会を実施。各店が自店の商品・フェアなどの訴求をプランニングして、作品づくりに取り組みます。


◆出来上がった作品をボードに展示

マーカーで描いたPOPとは一味違った雰囲気の作品の出来上がり。毛筆の方が力を入れずにスムーズに運筆でき、短時間で完成。ボードに掲示して、皆で批評会。

◆平筆の使い方、描き方のポイント

ここでは平筆をマスターしましょう。日本画用の平筆(塗り筆とも)は、同じ太さの線が引け、穂幅の大小によって、太字、中字、細字が描けます。筆を根元まで抑えずに、進む方向に傾斜させて、同じ筆圧で腕全体をスライドして運筆します。筆軸を軽く持って、指先でクルクルと回転させれば、横線、縦線、円などが描けます。


◆平筆を使って商店街でPOP広告講習会

学校教材用のポスターカラーを絵皿に水で溶いて、まず、平筆のレタリング練習。用紙を折って升目を作り、升目いっぱいに文字を入れれば、ゴシック風の書体が描けます。また、穂先を水平にして横線を細く縦線を太く書き、横線の終わりの「ウロコ(三角形のセリフ《飾り》」や、角の「角ウロコ」、「ハネ」を書き足せば、明朝体も描けます。

◆歳末・クリスマス期に向けての筆POP講習会

平筆(2号~4号の太さ)とポスターカラー、筆ペンなどを使って、歳末・クリスマスのPOP広告に挑戦です。

◆クリスマスのPOP広告を作成

クリスマスのPOPカードの出来上がり。タイトルの文字は平筆と青色のポスターカラーでラフに書き、細い線入り影文字で立体感を。その他の文字は筆ペンを使用。色紙をカッティングしたサンタクロースやヒイラギをコラージュして、クリスマスムードを装飾演出。


◆筆文字によるPOP広告のいろいろ

太さの異なる毛筆で使って、いろいろなタイプのPOP広告が作成できます。中心になる字体は大きく、その他は小さく書くなど、コントラストでメリハリをつけることは、どのPOPにおいても同じです。ここでは、写真や千代紙を貼ってアクセントとしています。左下の書店の場合は、茅葺屋根の雪を綿(わた)で作っています。


◆筆文字によるポスターの事例

店頭に掲示する大きめのポスターは、中心となる品名やタイトルを太い毛筆で書くと注目度を高めます。和紙を切って貼ったり、イラストを加えて、商品の特徴や雰囲気を醸し出しています。


◆筆文字によるチラシのタイトル例

チラシのメインタイトルを筆文字で表現すれば、訴える意図を効果高くメッセージすることが出来ます。和紙に毛筆で書き込めば、にじみやかすれが生じて、個性的な表現となるでしょう。スキャンしてチラシに取り込みます。


◆筆文字によるイベントのチラシのタイトル例

東京・麹町のK米店では、毎年、佐渡市・佐渡JAと提携して恒例の「佐渡の新米と特産品フェア」を実施していて、地元客の好評を博しています。ここでは、北海道JAと提携して実施した「北海道のお米と物産フェア」の際のチラシ。筆文字のタイトルとキャラクターのイラストで注視性高く訴求しています。


◆商店街の恒例の売り出しタイトルを筆文字で

毎週土曜日に「土曜売り出し」を実施している下町の商店街。その際の筆文字のタイトルです。ここでは、紙面の上部を統一し、下部に自店のおすすめ品を書き込む共通POPの事例です。


◆筆文字による地域特産品の品名とラベル

各地の地域特産品(お土産)のパッケージでは、筆文字による品名が多いようです。独自の筆文字は、地元の手作り品であること、郷土色、そして数多く並んだ土産品コーナーの中で存在感をアピール出来るからでしょう。印刷活字とは違う注目性です。赤イカ入り塩辛は、伊豆諸島の土産品の中でもっとも売れ行きの高い商品です。


◆筆文字による品名、店名、キャラクターなど

お茶の品名、餃子店の店名、酒店の店名など、筆文字によるもの。日本字ばかりでなく、アルファベットの表記にも筆文字が良く使われます。既成活字とは異なる自由さ、個性、暖かみ、存在感に意義があります。



◆筆文字でブラックボード作成

かつては日本の旅館や料亭で、黒塗りの縦型の看板に「○○様歓迎」と白文字で書いて、玄関に掲示していました。描いて消して何度でも再生できます。白地に墨色ばかりでなく、ブラックボード(ここでは紙製)に市販の白墨液で書いて、POP広告が作成出来ます。顔料を少し混ぜれば、色付けも自由です。

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安達昌人
専門家

安達昌人(商品企画)

東京販促実践研究所

POP広告・チラシ・DM作成からディスプレイなど、基礎から応用まで実習指導。セミナーや実地指導により店舗の販売員、メーカー・問屋の営業マンの販促スキルと企画力を高めて、売れる商品・売れる店作りを図る。

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